みなさんこんにちは!
剛鍼灸院 豊田です
今回は
うつ病に対する鍼灸治療
のQ&Aになります
鍼灸師向けの文章なので
少しわかりにくいかもしれませんが
後日 患者さん向けも公開します
Q1:鍼灸治療はうつの治療として有効ですか?
うつ病に対して鍼治療を行った論文の結果では、93%の論文でハミルトンうつ病評価(HAM-D)尺度の改善が認められています。そのため、鍼灸治療はうつに対して有効であると言うことができます。
Q2:うつの程度により鍼灸治療の効果に差がありますか?
HAM-Dの評価で軽症だったものは鍼治療前後で効果は認められませんでしたが、中等度以上を対象とした論文ではすべて鍼灸治療により有意な改善が認められた。
ただし、軽症のうつ病患者に対して検討した報告は1例しかないため、その有効性は今のところ明確ではありません。
Q3;性別により治療効果に差がありますか?
性別を区別して行われた研究が少ないため、性差の違いについては明らかではありません。
Q4:年齢により効果に差がありますか?
全ての年代でHAM-Dの改善が認められており、各年代においても効果の差に違いはありません。ただし、30代以上を対象とした論文しかないため、30歳以下のうつに対しての効果は不明です。
Q5:うつ単独と疾患に関連したうつで効果に差はありますか?
うつ病単独を対象とした研究が11本、妊娠中のうつ病を対象とした研究が3本、産後のうつ、PTSD、脳卒中後のうつを対象とした研究がそれぞれ1本でした。軽症例以外のうつでは、鍼治療を行うことで有意に改善が認められており、うつ単独と疾患に関連したうつでは差はありませんでした。
Q6:鍼灸治療単独と薬物併用で効果に差がありますか?
鍼治療単独と薬物治療の効果を比較した研究では、薬物単独(フルオキセチン)群と比較して鍼通電群および直鍼群でHAM-Dの値が有意に減少しています。また、鍼治療と薬物を併用した研究では、薬物単独の治療に比べて、薬物治療+鍼治療でHAM-Dに改善が認められています。以上のことから、薬物単独より鍼治療併用した方が、うつの改善がよいと考えられますが、薬物治療を既に行っている患者さんでは、薬物治療との併用を推奨します。
Q7:羅病年数で効果に差はありますか?
研究で対象としている罹病期間は0.4年~7.9年と差がありますが、罹病年齢により効果に大きな差が認められることはありません。
Q8うつにはどのような鍼灸が効果的ですか?
①治療部位について
論文でよく使われている経穴は、百会、四神聴、頭臨泣、印堂、内関、神門、三陰交、足三里、太衝などです。使用されている経穴数は概ね6~12ヶ所、極端に少ないものでは2ヶ所であり、百会―印堂の鍼通電でした。(Song YQ 2007、Andreescu C2011:).1回の治療時間は、20~45分程度です。
②治療手技について。
鍼治療の手技に関しては、鍼治療と鍼通電治療の間に効果の差はありませんでした。また、薬物単独よりは、鍼治療を行うか、薬物治療に鍼治療を行った方が効果的でした。なお、灸治療に関する報告は殆どなく、その効果は不明です。
Q9:治療回数で効果に差がありますか?
研究で行われていた治療回数は8回~42回、治療期間は3週間~16週間、治療頻度は毎日~1週間に1回程度でした。しかしながら、治療回数、期間、頻度による効果に大きな差は認められませんでした。また、いずれの研究も治療終了後4週程度効果は持続していました。
Q10:鍼で有害事象はありますか?
鍼治療における有害事象で多かったのは、不眠、疲労感、吐気、頻脈、過眠などで、全体の20%で認められています。また、鍼の物理的有害事象は血腫が2%、鍼後の違和感が15%でした。身体症状としては、痛みと運動障害が19%、知覚異常が8%でした。自律神経症状としては、前述した症状に加えて、めまい、多汗、嘔吐、ふらつき、眠気、口渇、便秘などがありました。また、重篤な有害事象として、自殺が1%で、うつ悪化が12%であった。なお、鍼灸治療で有害事象が多いように感じますが、うつを対象としているため、他の治療法と比べて鍼灸治療が特に有害事象が多いと言うわけではありません。
Q11:うつに対する鍼治療はどのように進めれば良いですか?
鍼治療は中等度以上のうつ病、またはうつ症状に対して効果的であり、その効果は年代や性別、疾患の種類などによる大きな違いはありません。そのため、自殺傾向がある注意すべきうつ患者をスクリーニングしながら、うつに対する知識をしっかりと持った上で治療に臨んでください。
なお、治療方法に関しては、治療回数8回以上、治療期間は3週間以上、治療頻度は1週間に1回以下が1つの目安であり、使用している経穴は、百会、四神聴、頭臨泣、印堂、内関、神門、三陰交、足三里、太衝など概ね6~12ヶ所で、治療時間は、20~45分でした。
Q12:うつ病に対する鍼灸治療の推奨度はどの程度ですか?
論文の結果などから分析して、鍼灸治療のエビデンスレベルは1、推奨度はB(行うように勧められる)と考えられます。ただし、治療費などの経済的な負担も大きいことから、患者さんの状況を判断して勧めるようにしてください。
まとめ
うつは「心の風邪」と言われるように誰にでもおきうる病気(状態)です。うつに対しては薬物治療や精神療法が中心にありますが、それらの治療に抵抗がある方は、鍼灸治療を利用することもお勧めできます。鍼灸治療はうつに対して効果的であることが確認されており、副作用も少なく、安心して行うことが出来る治療です。ただし、うつは他の疾患と異なり、効果があるからと言って気軽に治療を行えるものではありません。自殺企図など、複雑な背景を持っています。そのため、治療に際しては、必ずうつに関する基本知識を学習した上で診療に臨んでください。また、必要に応じて医師と連携を取るようにしてください。
なお、一般的に鍼灸治療は、中等度以上のうつ病、またはうつ症状に対して効果的であり、その効果は年代や性別、疾患の種類などにより大きな違いはありません。また、治療の目安としては、まずは1週間に1回程度の治療を10回程度(3週間以上)行うことをお勧めします。治療方法は症状の種類によって異なりますが、うつのみであれば、手足や顔、頭のツボなど10箇所程度、治療時間は30~60分です。患者さんの経済状況や環境を考えた上で、適切な治療プランを立てましょう。
文章参照:鍼灸師に必要なうつ病患者を治療するための基礎知識
報告者:明治国際医療大学 鍼灸学部臨床学講座 伊藤和憲
NPO全国鍼灸マッサージ協会 受託研究
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うつ病・自律神経失調症専門
剛鍼灸院 豊田 豊田市大林町15-6-5
Tel:0565-27-4689
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剛鍼灸院 豊田です
今回は
うつ病に対する鍼灸治療
のQ&Aになります
鍼灸師向けの文章なので
少しわかりにくいかもしれませんが
後日 患者さん向けも公開します
Q1:鍼灸治療はうつの治療として有効ですか?
うつ病に対して鍼治療を行った論文の結果では、93%の論文でハミルトンうつ病評価(HAM-D)尺度の改善が認められています。そのため、鍼灸治療はうつに対して有効であると言うことができます。
Q2:うつの程度により鍼灸治療の効果に差がありますか?
HAM-Dの評価で軽症だったものは鍼治療前後で効果は認められませんでしたが、中等度以上を対象とした論文ではすべて鍼灸治療により有意な改善が認められた。
ただし、軽症のうつ病患者に対して検討した報告は1例しかないため、その有効性は今のところ明確ではありません。
Q3;性別により治療効果に差がありますか?
性別を区別して行われた研究が少ないため、性差の違いについては明らかではありません。
Q4:年齢により効果に差がありますか?
全ての年代でHAM-Dの改善が認められており、各年代においても効果の差に違いはありません。ただし、30代以上を対象とした論文しかないため、30歳以下のうつに対しての効果は不明です。
Q5:うつ単独と疾患に関連したうつで効果に差はありますか?
うつ病単独を対象とした研究が11本、妊娠中のうつ病を対象とした研究が3本、産後のうつ、PTSD、脳卒中後のうつを対象とした研究がそれぞれ1本でした。軽症例以外のうつでは、鍼治療を行うことで有意に改善が認められており、うつ単独と疾患に関連したうつでは差はありませんでした。
Q6:鍼灸治療単独と薬物併用で効果に差がありますか?
鍼治療単独と薬物治療の効果を比較した研究では、薬物単独(フルオキセチン)群と比較して鍼通電群および直鍼群でHAM-Dの値が有意に減少しています。また、鍼治療と薬物を併用した研究では、薬物単独の治療に比べて、薬物治療+鍼治療でHAM-Dに改善が認められています。以上のことから、薬物単独より鍼治療併用した方が、うつの改善がよいと考えられますが、薬物治療を既に行っている患者さんでは、薬物治療との併用を推奨します。
Q7:羅病年数で効果に差はありますか?
研究で対象としている罹病期間は0.4年~7.9年と差がありますが、罹病年齢により効果に大きな差が認められることはありません。
Q8うつにはどのような鍼灸が効果的ですか?
①治療部位について
論文でよく使われている経穴は、百会、四神聴、頭臨泣、印堂、内関、神門、三陰交、足三里、太衝などです。使用されている経穴数は概ね6~12ヶ所、極端に少ないものでは2ヶ所であり、百会―印堂の鍼通電でした。(Song YQ 2007、Andreescu C2011:).1回の治療時間は、20~45分程度です。
②治療手技について。
鍼治療の手技に関しては、鍼治療と鍼通電治療の間に効果の差はありませんでした。また、薬物単独よりは、鍼治療を行うか、薬物治療に鍼治療を行った方が効果的でした。なお、灸治療に関する報告は殆どなく、その効果は不明です。
Q9:治療回数で効果に差がありますか?
研究で行われていた治療回数は8回~42回、治療期間は3週間~16週間、治療頻度は毎日~1週間に1回程度でした。しかしながら、治療回数、期間、頻度による効果に大きな差は認められませんでした。また、いずれの研究も治療終了後4週程度効果は持続していました。
Q10:鍼で有害事象はありますか?
鍼治療における有害事象で多かったのは、不眠、疲労感、吐気、頻脈、過眠などで、全体の20%で認められています。また、鍼の物理的有害事象は血腫が2%、鍼後の違和感が15%でした。身体症状としては、痛みと運動障害が19%、知覚異常が8%でした。自律神経症状としては、前述した症状に加えて、めまい、多汗、嘔吐、ふらつき、眠気、口渇、便秘などがありました。また、重篤な有害事象として、自殺が1%で、うつ悪化が12%であった。なお、鍼灸治療で有害事象が多いように感じますが、うつを対象としているため、他の治療法と比べて鍼灸治療が特に有害事象が多いと言うわけではありません。
Q11:うつに対する鍼治療はどのように進めれば良いですか?
鍼治療は中等度以上のうつ病、またはうつ症状に対して効果的であり、その効果は年代や性別、疾患の種類などによる大きな違いはありません。そのため、自殺傾向がある注意すべきうつ患者をスクリーニングしながら、うつに対する知識をしっかりと持った上で治療に臨んでください。
なお、治療方法に関しては、治療回数8回以上、治療期間は3週間以上、治療頻度は1週間に1回以下が1つの目安であり、使用している経穴は、百会、四神聴、頭臨泣、印堂、内関、神門、三陰交、足三里、太衝など概ね6~12ヶ所で、治療時間は、20~45分でした。
Q12:うつ病に対する鍼灸治療の推奨度はどの程度ですか?
論文の結果などから分析して、鍼灸治療のエビデンスレベルは1、推奨度はB(行うように勧められる)と考えられます。ただし、治療費などの経済的な負担も大きいことから、患者さんの状況を判断して勧めるようにしてください。
まとめ
うつは「心の風邪」と言われるように誰にでもおきうる病気(状態)です。うつに対しては薬物治療や精神療法が中心にありますが、それらの治療に抵抗がある方は、鍼灸治療を利用することもお勧めできます。鍼灸治療はうつに対して効果的であることが確認されており、副作用も少なく、安心して行うことが出来る治療です。ただし、うつは他の疾患と異なり、効果があるからと言って気軽に治療を行えるものではありません。自殺企図など、複雑な背景を持っています。そのため、治療に際しては、必ずうつに関する基本知識を学習した上で診療に臨んでください。また、必要に応じて医師と連携を取るようにしてください。
なお、一般的に鍼灸治療は、中等度以上のうつ病、またはうつ症状に対して効果的であり、その効果は年代や性別、疾患の種類などにより大きな違いはありません。また、治療の目安としては、まずは1週間に1回程度の治療を10回程度(3週間以上)行うことをお勧めします。治療方法は症状の種類によって異なりますが、うつのみであれば、手足や顔、頭のツボなど10箇所程度、治療時間は30~60分です。患者さんの経済状況や環境を考えた上で、適切な治療プランを立てましょう。
文章参照:鍼灸師に必要なうつ病患者を治療するための基礎知識
報告者:明治国際医療大学 鍼灸学部臨床学講座 伊藤和憲
NPO全国鍼灸マッサージ協会 受託研究
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うつ病・自律神経失調症専門
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Tel:0565-27-4689
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