「伝言板 届かぬ想い 書き記す
31字詩の トレインタッチを」
しとしととよく降る雨だった
ホームにすべり込んだ電車を降りると
僕は しばらく近くのベンチに腰掛けて
降りた乗客が階段を上って改札口へ
通り過ぎるのを待っていた
人影が少なくなったところで
やっとのこと僕は階段を上り
改札口を出て
左側の伝言板のところへ行くのだった
いつものようにそこには
拾得物の連絡や待ち合わせの合図のような
時間を連想させる暗号数字や
省略化された場所の頭文字が
昭和を醸し出すように描かれていた
伝言板
ほとんどと言っても良いスマホの時代に
それが置いてある駅は珍しく
かえってそれが創造の意欲を掻き立てるのだった
伝言板が過去のものとしてでは無く
立派にその役目を果たしている
大概は落とし物の連絡やチョットしたイタズラ書き
誰かが描いた微妙な絵が載せられていた
いつもスペースが埋まってしまう事は無く
空いた二行分は僕には十分だった
恥ずかしさが先に立ち
ささっと描いてすぐに立ち去った最初の頃より
今は後ろを通り過ぎる人をやり過ごす程に
気持ちは座って来た
こんな事をしてどうなる訳でも無いのは解っている
好きなら好きと直接言えばいいものを
わざわざ小道具らしきものを使って
そして何よりも
彼女がこの詩を見やる事が有るのかどうか
朝の忙しい時には素通りされ
帰りにはもう黒板には消されて無くなってしまい
元の木阿弥に
それでもこんな事を続けるのは
いつか叶うと信じた
自分自身の夢物語の為だけなのかも知れない
12時を過ぎると伝言板は消されていたが
次の日もその次の日も
消されないで残されていた
どういう風の吹き回しか
優しい駅員さんの粋な計らいなのか
感謝しながら
僕は帰りの電車に乗り込んだ
31字詩の トレインタッチを」
しとしととよく降る雨だった
ホームにすべり込んだ電車を降りると
僕は しばらく近くのベンチに腰掛けて
降りた乗客が階段を上って改札口へ
通り過ぎるのを待っていた
人影が少なくなったところで
やっとのこと僕は階段を上り
改札口を出て
左側の伝言板のところへ行くのだった
いつものようにそこには
拾得物の連絡や待ち合わせの合図のような
時間を連想させる暗号数字や
省略化された場所の頭文字が
昭和を醸し出すように描かれていた
伝言板
ほとんどと言っても良いスマホの時代に
それが置いてある駅は珍しく
かえってそれが創造の意欲を掻き立てるのだった
伝言板が過去のものとしてでは無く
立派にその役目を果たしている
大概は落とし物の連絡やチョットしたイタズラ書き
誰かが描いた微妙な絵が載せられていた
いつもスペースが埋まってしまう事は無く
空いた二行分は僕には十分だった
恥ずかしさが先に立ち
ささっと描いてすぐに立ち去った最初の頃より
今は後ろを通り過ぎる人をやり過ごす程に
気持ちは座って来た
こんな事をしてどうなる訳でも無いのは解っている
好きなら好きと直接言えばいいものを
わざわざ小道具らしきものを使って
そして何よりも
彼女がこの詩を見やる事が有るのかどうか
朝の忙しい時には素通りされ
帰りにはもう黒板には消されて無くなってしまい
元の木阿弥に
それでもこんな事を続けるのは
いつか叶うと信じた
自分自身の夢物語の為だけなのかも知れない
12時を過ぎると伝言板は消されていたが
次の日もその次の日も
消されないで残されていた
どういう風の吹き回しか
優しい駅員さんの粋な計らいなのか
感謝しながら
僕は帰りの電車に乗り込んだ
初恋亭夢中