語り得ぬ世界

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珍江戸大返しにて候_26【第2日11】

2024-10-09 07:23:51 | 珍旅道中記

横山大観の大作のお次は…

並河靖之『七宝四季花鳥図花瓶』です[明治32(1899)年]。1900年パリ万博にも出品された並河靖之の最高傑作と評される七宝焼き。四季折々の草花の間を鳥が飛んでいます。この面の繊細に描かれた桜は見事ですな。

こちらは青紅葉ですね。漆黒の釉薬が涼やかな青色を引き立てています。

七宝ならではの微細で色目も鮮やかに描かれた鳥もまた美しい。素晴らしい。

こちらは刺繍でできた屏風です。高島屋呉服店制作『閑庭鳴鶴・九重ノ庭之図刺繍屏風(かんていめいかく・ここのえのにわのずししゅうびょうぶ)』は京都市が昭和3(1928)年昭和天皇御大礼(京都御所で執り行われた即位礼と大嘗祭)に際し、京都市が高島屋呉服店に発注し献上したものです。このときは京都市の財政も悪くはなかったんですねぇ。刺繍によるエンボスのような盛り上がりが微妙な立体感と陰影を見せている素晴らしい逸品。

職人技の極みの美術工芸品ですよね。刺繍なら花も精緻に再現できるのに、あえて丸く、それも幾重にも描く様は非常に独創的です。

誰もがついつい見入ってしまいます。

これまた見事な硯箱。徳島藩御用蒔絵師の初代飯塚桃葉が制作した『宇治川蛍蒔絵料紙箱・硯箱』[安永4(1775)年]を旧徳島藩主蜂須賀茂韶(はちすかもちあき)が明治初期皇室に献上したものです。こちらは硯箱。蓋には金銀で三日月と宇治橋が描かれており、加えて全体で352匹の蛍が描かれていまして、それも1匹ずつ盛り上げ、頭は朱漆、羽は銀蒔絵、発光器は螺鈿で表現されています。究極の蒔絵ですね。

こちらは飯塚桃葉『宇治川蛍蒔絵料紙箱・硯箱』の料紙箱かな。紙とともに硯箱も入るぐらいのサイズ感です。

人みたいに見えるのは枯木だと思いますが(節があります)なかなかシュールです。でもってこの横面にも蛍が飛んでいます。

手間と時間がかかっているのは間違いないですけど、相当値が張る工芸品だと思います。当時徳島藩がどのようにお代を払っていたのかわかりませんけど(御用蒔絵師ならそれなりに高価買取でしょう)これが現在の古美術品市場に出たら1千万円を軽く超えそうです。

こちらも硯箱。青海勘七(せいがいかんしち)作と伝わる『青海波塗硯箱(せいがいはぬりすずりばこ)』です(17世紀-江戸時代)。一見地味に見えますが、金地の蓋をよく見ると葵紋。水戸黄門で知られる徳川光圀愛用の硯箱だそうです。ちなみに蓋裏には光圀による漢詩が書かれているそうです。

手前にその蓋裏の漢詩も紹介されています。青海勘七が考案した青海波塗りは、粘り気のある漆を櫛のような道具で掻くようにして波を描く技法でして、蓋には荒々しい波の様が表現されています。飛び散る波涛の飛沫は金銀の鋲で表されています。保存状態も極めてよろしいな。

硯には使い込んだ痕跡がありますね。徳川光圀が日常的に使っていたと思うと歴史の深さを感じます。

何だかまた凄いのが出てきました。平安時代の能書家の一人(NHK「光る君へ」にも登場している)藤原行成(ふじわらのゆきなり)が記したと伝わる『粘葉本和漢朗詠集(でっちょうぼんわかんろうえいしゅう)』です(11世紀-平安時代)。平安時代屈指の名筆とされています。達筆な書もさることながら、当時の超贅沢品でもある、亀甲を摺り出した唐紙がまた素晴らしい。書・歌・書の三位一体ですね。こちらは明治11(1878)年近衛忠煕(このえただひろ)が皇室に献上した逸品。
ちなみに、藤原行成は紫式部『源氏物語』を製本した(写した)一人ではないかと言われていまして、いまだ世に出たことはありませんけど、もしかしたらどこかに藤原行成写本があるかもしれません。発見されたら確実に国宝ですわな。旧摂関家とか冷泉家とか、いやいやもしかしたら皇室所蔵品の中にあるかも…。

これも伝藤原行成『粘葉本和漢朗詠集』です。珍が見ても素晴らしい達筆だとわかる書。流れるようなかなですが、男性らしい太さ、濃さを感じます。

さらに何だか凄い屏風、和洋折衷みたいな屏風があります。さっそく行ってみましょう。

(つづく)

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