岐阜多治見テニス練習会 Ⅱ

菱形と楕円との混在を探して 17

浮世を離れて、誰がしかし、白雲ばかりを追っていられるだろう。金銭がすべてとも言い切れない次元もある。精神性と身体性との均衡の中で、あるいは、それらの果てしない鬩ぎ合いの中で、僕らは独自の光を放つしかないのではないか。それゆえに、多くの俗人は日々苦労して稼ぎながらも、労働時間の合間にはささやかな意匠を追求することも忘れない。追求すると言っても、僕らは多くの時間を消費者として行動しているから、どうしても〈買う〉という形を取るしかない。平成21年9月だったか、僕は多治見の某スーパーの中で、目を見張った。ある若い女性のストッキングの黒い模様は、紛れもなく「菱形と楕円との混在」だった。それは、しかし、僕の定義によれば、「模様」ではなく「型」だった。そこで僕が感じたものは、9月4日と同じ「味気なさ」と「失望感」だった。その混在の「型」には、しかし、黒一色のストッキングにはないものがあった。若い女性の心の中のつかみどころのない空無を埋めるためには役立ちそうな量的な充実感があった。

きょう10月9日、僕が地下鉄の中で見たものは「模様」と「型」との中間だった。若い女性のワンピースで、紺地に白い不揃いの楕円形が散りばめられていた。散りばめられた楕円形は、多くの場合、見る者に間延びした感じ、平凡さ、締りのない印象を与えるのだが、今回は酔わせるような「キリッとした香り」を漂わせていた。「微妙に不揃いであるということ」が、「型」が帯びやすい単調さ、味気なさを消し去っていたのかもしれない。最近通勤の行き帰りに、菱形パターンの製品がじわじわと押し寄せてきているなと感じていた僕にとって、きょうの不揃いの楕円形との出会いは一つの小さな救いだった。色も形も色々あるほうが世の中は楽しい。

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