その窓ガラスに、
ひょっとしたら、30年以上張られていたポスター。
最近、なぜかそのポスターが欲しくなり、
今日、とうとう店に行き、
「このポスター売ってもらえませんか?」と頼んだ。
店主らしき女性が、
「売って欲しいと言われても、困りますけど・・・」と言いながら、
僕の顔を見る。
やはり駄目かと心の中で思っていると、
「はがして持ってってもらってもいいですよ」と予想外の返事が耳に響いた。
「本当ですか?」
「綺麗な人でしょ?」
「と言うか、何年も前から貼ってあるでしょ?
(その時間をこの手に奪い取りたいんです)」と僕。
店主らしき女性は、店に入り、輪ゴムさえ持ってきてくれた。
僕はポスターを丸めて輪ゴムをはめた。
2000円までなら買うつもりだった。
明日からあの喫茶店の窓ガラスにはあのポスターがない。
そのことを誰かが気付くだろうか。
僕は過ぎ去った30年の月日と
今後張られ続けたであろう際限のない年月とを頭に描き続けながら、
自分がその過去から未来に続く長年月を奪い取ったのだと自分に言い聞かせた。
それにしても、あの店主らしき女性は、
なぜ僕にポスターを譲ってくれたのだろう。
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