犯人の市橋達也は当時28歳。大学卒業後、働かず、親の仕送りで生活していた。
一度も働いたことがないニートが2年7ヶ月の逃走生活を送ることになった。
この本は、その逃走生活を本人が記したもの。印税は被害者遺族に贈るとある。
マンションを訪れた警察官を振り切って逃走した犯人の所持金は4、5万円だった。
逃走してまず買ったのが下着類、アイプチ、百円のメガネ(変装用?)、充電できる単4電池。
電池はイヤホンでUSBデータに入っている『TOEFL英単語』などの英語を歩きながら聴くためだったということに驚いた。
なぜ殺人を犯して逃走中に英単語の勉強?と思ったが、あえて日常と同じことをして気持ちを落ち着かせたかったのだろうか。
野宿しながら線路沿いを歩いたり、途中電車に乗ったりして、青森に着いた。その後、大阪を経て四国へ渡る。
四国ではリンゼイさんが生き返ることを祈りながらお遍路をしたと書いてある。
フェリーで沖縄へ行き、空き缶集めをした。生まれて初めて働いて手にしたのは二百数十円。
これではダメだと思い、那覇の工事現場で働き始めたが、疑われていると感じて逃走。
沖縄の離島でサバイバル生活をしようと考え、島へ持っていくために、昔から好きだったという『ライ麦畑でつかまえて』の原著のペーパーバックと英語の辞書、フランス語の辞書まで買っている。
語学の勉強が好きだったようだ。
島に渡る前に黒い子ネコを拾い、ネコを肩に乗せて潮が引いた海を渡るシーンはアニメの1シーンにできそうと思った。
(実際この本は映画化されているが、観ていないからこのシーンがあるかどうかはわからない)
島では魚を釣り、カニや蛇まで捕まえて、ネコに分け与えて一緒に食べていた。
毒のある植物や生物などは島に渡る前に図書館でサバイバル術の本を読んで頭に叩き込んであった。
所持金がつきる前に大阪の西成で働こうと考え、ネコを置いて大阪へ。いくつかの建築現場で合わせて2年以上働き続けた。
理不尽な罵倒にも耐え、真面目に働いた。
働いて貯めたお金で、顔を変えるために美容整形したが、美容クリニックから通報され、沖縄の離島へ行こうと考えフェリー乗り場で捕まった。
逮捕時、市橋容疑者には一千万円の懸賞金がかけられていた。
この本には本人の生い立ちや強姦殺人に至ったいきさつなどは何も書いてない。
もし犯罪を犯すことがなかったら、市橋被告は今頃どうしていただろうか。
父親は勤務医で母親は歯科開業医という、裕福な家庭に生まれた彼。
生活するのに充分な仕送りをもらっていたら、一生働かなかったかも知れない。
逆に、仕送りを止められ世の中に放り出されていたら、彼なら何をしてでも生きていけただろう。
体力も知力も優れているのに、良い形で世の中に還元されなかったのが非常に残念だ。
ご両親は息子はどこかで死んでいるかも知れないと思っていただろう。捕まってホッとしたに違いない。
ここまでとはいかなくても、ニイト君も切羽詰まればなんとか暮らしていけるのだろうか…
放り出したほうがいいんだろうか
とはいえ…
色々考えてしまう![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_shock1.gif)
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