貧困、虐待、ハラスメント、ブラック企業、ブラック奨学金
逆境に耐えながら必死で生きる二人の青年の姿が描かれている。
ずっしりと重い読後感。
装丁のイラストは西加奈子さん自身が描いた。歯を食いしばる若者。
この本を読んだら、東京の高級レストランで親子で食事したことに罪悪感を覚えてしまった。
ニイト君が読めばいいのに。
いかに自分が恵まれているか分かるだろうに。
しかし、読めと言っても読むはずがないので、言わないでおく。
作中にチラッとだけ『引きこもり』が出てきた。
主人公『俺』が恩人である弁護士に焼き鳥屋に呑みに連れて行ってもらう場面。
弁護士の息子が引きこもりであると聞く。
弁護士が言う。
「社会に負けちゃダメだ。引きこもりなんて、社会の敗北者がすることだ」
『俺』は引きこもっているその息子の姿を想像し、「生きながら死んでいる』と思う。
「おれは負けません」
店を出た時、『俺』は誇らしい気分になっていた。
貧しくても奨学金を借りて、必死でアルバイトをしながら大学に行き、矜持を持って生きる主人公は
立派な弁護士を親に持ち、経済的にも恵まれているのに引きこもっている息子のことを哀れに思うと同時に蔑んだのだろう。
しかし、『俺』がその後にたどる道は、大変険しい茨の道で、いつしかリストカットを繰り返すようになる。
酷いパワハラを受けているのに、本人は感覚が麻痺してそれがパワハラだと気付かない。
終盤は読むのが苦しかった。
今の日本で若者が生きるって、大変なことだ。
やっぱり、こんな本を読んだらニイト君は恐れ慄いて、ますます社会に出られなくなってしまうかも…