ありがたいことです。
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新型コロナ感染や後遺症に有効なアミノ酸「5-ALA」とは。論文発表の長崎大・北教授に聞く
新型コロナウイルスが猛威を振るい、1年以上が経過した。ワクチンの普及が急がれる中、基本的な感染対策のほかに確立した予防策がないのが実情だ。そうした中、今年2月、国際学術誌に掲載された論文が注目を集めている。ヒトが体内に持っている天然のアミノ酸「5-アミノレブリン酸(以下、5-ALA)」が、新型コロナウイルスに対し、強い感染抑制効果があることを示したものだ。あまり聞き馴染みのない5-ALAだが、一体どのようなものか。また感染を抑制するというメカニズムは。研究チームの1人で「アジアの科学者100人」にも選出された、長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科、熱帯医学研究所の北潔教授に聞いた。
マラリア研究から見つけた産物
―そもそも「5-ALA」とはどのようなものなのでしょうか。 北潔教授(以下、北):5-ALA は、天然に存在するアミノ酸で、ヒトや動物、植物の細胞内で作られています。肉や魚、ワインなどの食品中にも含まれており、日々の生活の中で摂取しているアミノ酸のひとつです。高い安全性と機能性を備えていることから、すでに 10 年以上前から健康食品や肥料、化粧品などに活用されてきました。私は長年、生化学の分野で寄生虫の研究を専門としていて、5-ALAに着目したのも、もともと熱帯感染症の中で、マラリアに効くものとして5-ALAを用いた治療薬の開発を進めてきたことからです。 そうした中で、昨年1月以降、新型コロナウイルスの感染が広がり出しました。新型コロナウイルスの遺伝子配列を調べると、核酸成分の一つであるグアニンが4つ集まった「G4」と呼ばれる構造が複数あり、これはマラリア原虫も同様に持っていたものでした。我々はマラリアの研究者でありますが、ウイルスの研究者ではないため、同じ長崎大学のウイルス専門グループの先生方にお願いし、昨年2月から「5-ALAの新型コロナウイルスの感染抑制効果」について研究を進めてきました。
感染抑制のメカニズム
―もともとマラリア研究から見出したものだったのですね。では具体的に、感染を抑制するメカニズムはどのようなものでしょうか。 北:5-ALAが新型コロナウイルスを抑制すると考えられる理由は、4つあります。ひとつは、感染のきっかけとなる「スパイクタンパク質」への作用です。ウイルスには、表面にキノコのような突起「スパイクタンパク質」が付いているのですが、ここに5-ALAから生成される「ヘム」や「プロトポルフィリン」が結合するという予測や論文が、海外の大学から発表されていました。このヘムやプロトポルフィリンがスパイクタンパク質の表面をふさぐことで、ウイルスが侵入するきっかけとなる、ヒトの「受容体」への結合を防ぐということです。 さらに、ウイルスが受容体を通過してヒトの身体に侵入したとしても、先ほどお話した「G4構造」にヘムやプロトポルフィリンが結合して、G4構造の生理的な機能を阻害して、ウイルスの増殖を抑えるということが挙げられます。これら2つのメカニズムは、5-ALAから産生されたものが直接ウイルスに作用するものです。 3つ目として、5-ALAには抗炎症作用があることも分かっています。5-ALAから生成されるヘムが増えてくると、それを分解する「系」が誘導されます。これには抗炎症作用があることから、たとえば、重症患者に起こる、免疫の暴走「サイトカインストーム」を抑えることが期待されています。 4つ目として、後遺症にも効果があるのではとの見方もあります。たとえば、肺機能に炎症が残り、治った後も呼吸するのが苦しいという方が一定程度いらっしゃいます。先ほどもお伝えした通り、5-ALAには抗炎症作用がありますので、炎症の進行を抑えることができますし、炎症そのものを抑えることも期待されます。また、5-ALAは細胞のエネルギー源となる「ミトコンドリア」を活性化する作用がありますので、体力の向上やメンタル面の改善にもつながるかと思います。以上のように、直接作用が2つ、ホストへの作用、後遺症への作用の4つがメカニズムとして挙げられます。 ―5-ALAはアミノの一種とのことですが、その他のアミノ酸ではダメなのでしょうか。 北:そうですね。5-ALAから生成されるヘムやプロトポルフィリンは、その他のアミノ酸からは生成されません。メカニズムでも説明したように、5-ALAそのものというより、そこから生成されるヘムやプロトポルフィリンにウイルスの増殖を抑制する効果があるため、その2つなしには抑制効果は得られません。 興味深いことに、ヘムやプロトポルフィリン自体は、細胞の中に入りにくいのですね。ですから、これらをいくら外から摂取しても、細胞の奥には届かないのです。5-ALAは我々がもともと持っているアミノ酸であり、細胞の中まで届きやすい点がメリットです。つまり、5-ALAが我々の細胞に浸透して、その力を使って生み出されるヘムやプロトポルフィリンが大事ということになります。摂取しすぎてもすぐに尿で排泄されるので、体内に残ることで副作用が起こる心配が少ないのも5-ALAの特徴かと思います。
変異株への効果
―変異株に対する研究も進んでいるのでしょうか。 北:はい。試験管の中では、すでに実験が進んでおり、いくつかの有望な結果が出ています。変異株はつまり、「スパイクタンパク質の変異」なのですね。原理的には、メカニズムで申し上げた通り、どの変異株でもG4構造は変わらないため、たとえスパイクタンパク質の変異があったとしても、G4構造への作用は阻害することができると考えています。ただ、変異株が感染力が強いと言われるのは、受容体への相互作用が強いため、という側面があります。そうした感染力に打ち勝つだけの、G4構造への阻害ができるかというのが鍵になります。 ―5-ALAの摂取をする人が気をつけることはありますか。 北:難病に指定されている「ポルフィリン症」という、ヘムの産生に関わる酵素が欠けていることによって生じる疾患があります。ポルフィリン症は、遺伝性であることが多く、ポルフィリン体あるいはその関連物質が、皮膚、血液、肝臓その他の臓器に蓄積して生じる複数の病気の総称です。これらのうち、皮膚の症状を主に生じるものを、「皮膚型ポルフィリン症」、腹痛、運動麻痺など急性の症状を合併するものを「急性型ポルフィリン症」と呼びます。日本では2011年時点で63例と少ない症例数で、今までサプリメントなどを飲んで副作用を起こしたという例はありませんが、こうした方々は症状悪化の恐れがあるため、念のため注意が必要です。市販のサプリメントなどでも禁忌が記されているかと思います。
今後の見通し
―現在、新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「特定臨床研究」が進められているとのことですが、今後の見通しはいかがでしょうか。 はい。試験管での実験が昨年5月、実際にヒトを対象に特定臨床研究が始まったのは、今年2月のことです。通常、試験管の中で起こったことは、動物実験で安全性を見極めてから、ヒトへと移行します。5-ALAの良いところは、もともとヒトが持っているアミノ酸であり、10年以上に渡り安全性が確認されているというところで、スムーズに進行しました。緊急性が求められる中で、5-ALAの優位性を活かした形になったと思います。 現在、行われている特定臨床研究は、長崎、横浜、神戸の6つの病院で、軽症や中等症の患者さんにご協力いただきながら行われています。軽症や中等症の患者さんに期待できるメリットは、重症化しないということでしょうか。スパイクタンパク質やG4構造への結合を阻害して、ウイルスがこれ以上増殖するのを抑えることが期待されます。今後は、どれくらい摂取すれば改善が見られるのかなど、実現性の高い研究が進んでいくことが期待されます。医療機関の皆様にご協力いただきながら、7月には何らかの研究結果を示せればと思っています。 <北潔教授プロフィール> 北潔 昭和49年東京大学薬学部卒業後、同薬学系研究科博士課程を修了。東京大学理学部助手、順天堂大学医学部助手、講師を経て、平成3年より東京大学医科学研究所助教授。平成10年より東京大学大学院医学系研究科・教授。平成15~18年、日本寄生虫学会理事長、平成21~23年、日本生化学会会長。平成24~27年、東京大学大学院医学系研究科副研究科長。平成27年~、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科長(平成27年は東京大学と長崎大学のクロスアポイントメント) <参考> 『5-アミノレブリン酸(5-ALA)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)原因ウイルスの感染抑制が判明 ~今後の治療薬候補として期待~』(長崎大学 2021年2月9日)https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science225.html 『熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北潔教授が、Asian Scientist Magazineの2021年版「アジアの科学者100人」に選出されました』(長崎大学 2021年4月28日)https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news3316.html
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