美術史の勉強をしたいと手に取った「日本美術鑑賞」は、前回に引き続き秋元雄史さんの本になります。
「アート思考」に書かれていた西洋美術史の流れなどがとてもわかりやすかったので興味を持ちました。
読み終わった感想はやはりわかりやすい!
歴史と聞くとつい苦手意識を持ってしまう私でも最後まで興味深く読むことができました。
帯にも書かれているように、あくまで「時代の節目で知っておくべき基礎知識」なので、日本美術の入門編です。
すでに大まかにでもご存知の方には少し物足りないかもしれませんが、無の状態だった私には十分勉強になる内容でした。
美術史というと現代アートに至るまでの西洋の流れを書いたものが多く、私の中では日本の美術は知っているようで知らない、ちょっとわかりづらいものという位置付けでした。
・日本画の定義も知らないし、見方もわからない。
・伊藤若冲はなんだかすごいし好きだけど、何が凄いのか説明できない。
・琳派って何!?狩野派って何!?違いがわからない。
という私のような人にはオススメの一冊です。
まず日本美術の特徴として「写実を追わない」「風景画の位置付け」「画材の違い」などが書かれています。
西洋や中国の美術と比較しながら書かれているのもありがたいです。
例えば西洋では「一枚の絵」として独立した状態で鑑賞するのが基本ですが、日本では襖絵や屏風など、常に生活とともにあった「飾り」であったということ。
また西洋ではキリスト教の教えによって歴史画(宗教画)、肖像画、風俗画の下の4番目に風景画が位置していたのに対して、日本では自然すべてに神が宿っているという考えから優しく身近な存在であったなど。
土台からして別物であったことがわかります。
歴史の流れを見ても、日本ならではの装飾の原点ともいえる縄文土器に始まり、弥生土器では外来の影響を受け、飛鳥時代〜は仏教が入ってきたことで仏教美術に染まるものの、遣唐使の廃止により和様に移行、大和絵が描かれるようになります。
その後も禅の影響を受けたり、武将の権威を誇示するために豪華になったり、ヨーロッパの影響を受けたと思ったら一方で侘び寂びの精神が生まれたり。
江戸時代には庶民にも絵画が広まり、鎖国により独自のスタイルに変化しつつも中国やオランダ美術が流入してきたことでさらに変化を遂げたり。
明治には政府による西洋化により一時日本の伝統美術は追いやられたものの、フェノロサの評価を得て今度は西洋美術排斥運動が起こったり。
この時に洋画と対比させるために生まれたのが「日本画」で、それまでは日本画というジャンルはありませんでした。
ざっと流れを見ただけでも周りからの影響を柔軟に取り入れて進化させてきたのが窺えて、日本の気質というのはこうして脈々と受け継がれてきたのだなぁと面白く感じました。
他にも時代ごとの代表作を取り上げ、そのバックグラウンドなどがいろんな角度から書かれており、とても興味深かったです。
こういった歴史的背景などを知っているのと知らないのでは、やはり見方が変わるなと思いました。
もちろん感覚的に楽しむのも美術の醍醐味だと思います。
ただ知っていても損はないのかなと感じました。
美術の秋を深める一冊にいかがでしょうか?