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大内麻紗子の【好きなことを好きなだけ】ブログ

春画・艶本=エロ本?

先日、私をよく知ってくださっている方から、こんな面白い講義があるよと教えていただいて、立命館アカデミーのオンライン講義を受講しました。

講師は、京都芸術大学芸術学部通信教育部の石上 阿希准教授。

大学の卒業論文からずっと春画・艶本(えほん)をテーマに研究されてきた方です。


〝性〟というものは生き物である以上、切っても切り離せないものです。

アートの分野でも〝性〟をテーマにした作品はいくつもあります。私も以前から〝性〟に関して強く興味がありました。

しかし歴史的な面を学ぶまでには至っておらず、春画・艶本もその存在は知っているけれど、どこか特別なものというような感覚でした。


このブログでは、今回のこちらの講義『【LOVE&ARTS】春画・艶本と出版 ー表現・技術・造本を考える』を受講し終わり、私の中の春画・艶本に対するイメージがどのように変わったのか、を書きたいと思います。


詳しい講義内容に関してはぜひ動画をご覧いただくことをおすすめします。

こちらの講義は2024年1月31日(水)23時59分まで申し込み受け付け中です。

また、お試し視聴(第1回・登録不要)はこちらから(https://www.ritsumei.ac.jp/open-univ/course/detail/?id=202)ご覧いただけますので、気になった方はまずはこちらを覗いてみてください。


さて本題に入りますが、みなさんは春画・艶本と聞いてどのような印象を受けるでしょうか。

・昔のエロ本

・堂々と見てはいけないもの

・恥ずかしいものetc.

こんなイメージを抱いたことはないでしょうか。


石上准教授もおっしゃっていましたが、准教授が学生だった頃は、春画・艶本を研究するというと驚かれるくらい、研究対象となり得ないものだったそうです。

タブーとまではいかなくてもなんとなく触れることを良しとしない傾向にあったのだと思います。

家族で見ている映画で例えば性交のシーンがあった時に気まずくなるという経験は誰もがあるのではないでしょうか。

確かに〝性〟に関することというのはなぜか隠したがるところがあり、嫌悪の対象とされているように感じます。

それが良いか悪いかではなく、ただそういう見方をすることで見落としてしまう事実があるということを、私はこの講義によって気づくことができました。


江戸時代、板木を彫って版をつくる製版本化が進んだことで、本は庶民へと広がりました。

京都には本屋が誕生し、艶本もかなり早い段階でつくられていたようです。

しかし1722年には好色本(艶本)の出版が禁止されます。

このことによって、公には販売ができなくなりましたが、その後も公然の秘密として様々な絵師たちは春画を手掛けていました。

つまりそれだけ需要があったということです。

講義で説明のあった春画の中にも、とても手が込んでいて、制作にお金のかかったであろう作品が数多くありました。

中でも驚いたのは〝艶摺(つやずり)〟という技術で、着物の模様を色を摺って表現するのではなく、版を裏から押し当て強く擦ることで摩擦を生み、紙に光沢を与えることで描く技法です。

今の感覚でいうただのエロ本ならばこんな手間のかかったつくりはしないでしょう。

他にも仕掛け絵といった表現がされているものもあり、読者を楽しませるための高度な仕掛けが施されています。

そこには絵師・彫師・摺師それぞれの高い技術がこれでもかと盛り込まれ、芸術的にも価値のある作品として春画がつくられていたことがわかります。

どんどんと目が肥えていく読者を楽しませるために内容もつくりも複雑になり、それと共に錦絵の技術も磨かれていったのです。


さらに艶本は既知を楽しむものでもありました。

艶本を見ると、浄瑠璃や歌舞伎で人気の演目や、家庭の医学書、教訓書といった、当時の常識的内容をパロディ化することで笑いを誘っているものが数多くあります。

逆にいえばそういった知識をもっていないと楽しみが半減する本なのです。

つくる側のセンスと読み解く側の教養が合わさってはじめて楽しめる、艶本はそういった本だったのです。


当時の常識も今では変容しています。

春画・艶本を現代で楽しむには、まずは当時の常識を知ることが必要です。

見方を変えると春画・艶本を読み解けば、当時の生活の在り方を知ることができるということです。


私はこの事実を知って、ますます春画・艶本に興味が湧きました。

伝統工芸の世界に身を置く上で日本の歴史や文化を知ることは、とても大切なことだと思います。

そして春画・艶本からしか見えてこない日本の姿というのもきっとあるはずです。

日本を知るひとつの資料としてとても重要なものであると知り、春画・艶本に対する見方が「恥ずかしく公然と語るべきことではないもの」から「読み解くべき大事な資料」へと大きく変わりました。

それに当時の〝性〟に対する考え方にも興味があります。

多様性の時代になって、ここ数年で様々な〝性〟の在り方が受け入れられ始めています。

しかしなんとなくですが、今の日本より当時の方が許容されていた部分があるのではないか、そんな風に感じたりもするのです。

春画・艶本を読み解くことでこの答えもわかるのではないか…そんな期待もしています。

今回の講義をきっかけに、まずは春画・艶本に関する本を読んでいきたいと思います。

まだまだ講義を語る上で書き足りない部分もありますが、あとはぜひ実際に石上 阿希准教授の講義を聞いていただき、春画・艶本の面白さを感じていただければと思います。


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