外は快晴。
カーテンから漏れる光。
眩しくて、光を掌で遮った。
「あー、眠い」
前の授業は、水泳。みんな疲れて厚い辞書を枕にして机に伏している。
高校卒業まで、あと少し。
教室内は、気怠さと睡眠欲に溺れていた。
中高一貫校の我が女子校は進学校で、大学受験勉強で今の時期みんな疲れている。
そんな様子をまだ中学1年生の女子たちが、廊下を列をなして通り過ぎる時、
不思議そうに見つめている。
体育の授業終わりには、下着姿になり着替える様子は、女子ながら見惚れることもある。
あの時は、わからなかった。今では感じる青年期への憧憬というか、、
私は、あの高校3年の夏を思い出として記録している。
同じ時間を共にし、別の時間を各々の家庭で過ごし、放課後は塾へ行き
自分たちは「同じ」共同体として過ごしたあの日。
同じ制服、同じ靴下、流行りの髪型。
一方、それぞれの家庭で何があったかは知らない。
朝から機嫌が悪そうだなとか、携帯を壁に投げて壊して親に怒られたとか。
同じが悪いわけじゃないけれど、夏の太陽の色を決して赤とは言いたくない。現実主義。
みんなもきっと誰かの色に染まりたい、愛した人の色に染められたいと思うこともあるはず、かな?
夏の太陽の色を「オレンジ」と教室で言い放った私のあの瞬間、
私は私色になった。
外は曇り空。
セミの声も聞こえなくなった。
少しくすんだメガネをかけて、銀杏並木の街路樹を抜けいつものクリニックへ。
歳を取った今、このあいだ眼科で目の検査をした。
網膜の一部が少し薄くなっている。緑内障の危険も考えられるから一年に一度検査をしてくださいと、医師から告げられた。
「治る可能性はありますか?」と質問すると、
「まだ大した状態じゃないですから大丈夫です」と返答された。
今では、色もまともに判断できず困っている。
夏の色、カーテンの日焼けの色、石鹸の色、虫の音色。。
医師の言うことは確かなのかもしれないが、少しずつ見えなくなるかもしれないと、思った。
待合室で椅子に座り会計を待つ間、静かにため息をついた。
親に連れられてきた赤ん坊が笑ってこちらをみる。
微笑み返したあと、気もそぞろに会計へ向かい帰路についた。
一歩、一歩歩いてきた人生。
いろんな人や色をみてきた。
赤、黒、白、透明、鼠色、黄色、、、
この人生に後悔はない。
歴史に残すものもない。
ただ、あの頃みていた景色をまたふたたび、と思う。
過ぎし過去は、美しく見える。
いつかの夢を見て、夏に死にたいと思ふ。
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