猫の世界の掟としては、顔が大きいほど強い。
そのへんは、残念ながら鮫と同じです。

しかし、猫に必要なのは顎の力だけではありません。
ヒトに必要なのが膂力だけではないのと同じ。

前回、「鏡の使い途を工夫しよう」と飼主が言ったので、工夫した。
正対を、横並びに出来た。

ツーフェイスな自分も悪くないとちょっと思っていますか?

想像の中だけでも、大顔でいたい。
いけませんか?
ちょっと言い過ぎたかな。謝ります。
実は、君は近所の女の子達のうわさであり、人気者なのです。

モテない虚弱猫的なことを言ってましたよね?
君を外に出すわけにはいかないからです。どんなことがあっても
飼主は君が外に興味を持つように仕向けられないからです。
理由は言いましたよ。方針は変わりません。
理解できるならば、この後本当の話をします。
聞きますか?

ショックを受けながら、真実に対する心理的反応の第一段階。
放心する。

第二段階
疑う、または真実と戦う。
猫の匂いは、外猫が自由に探索できます。クルシャ君の匂いも
外に漏れているのです。昔サオシュ様と暮らしていたときには、
毎晩そのへんの強い猫が門前までやってきて、おわおわ鳴いて
ました。サオシュ様は気にしてませんでした。大体、雄猫のところ
へは雄猫が寄ってくるのですが。

飼主がゴミ出しに出る深夜過ぎ、ドア前に、匂いを嗅いでいる女の子(猫)がいました。
飼主が近寄ると、すっと離れてから立ち止まり、猫の直立姿勢で長い尻尾の先を
揃えた前脚に回して、こちらを見返してくる。
逃げない訳は「ここにイケてる兄さんが居るのね。知ってるの」ってことらしい。
また別の深夜、別の女の子が君を探しに来ていたこともあるのです。

第三段階
真実に溺れる。
不思議な実力を知って、有頂天になるが、その姿は君の中で
出来たニセモノだ。鏡像に等しい。あまり溺れないように。

クルシャ君も、ドアの外にいる猫の気配は分かるようで、夜中に
玄関あたりにいることが多くなりました。