巡りやすいから、という理由でやってきました北野天満宮。
太宰府と並ぶ由緒正しい天満宮であります。
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いつでも来られる至便なところに大きな神社があって、有難い
ことですが、今回特に見に来たのは、種類も数も多い狛犬たちであります。
劈頭から写真を見れば分かりますよね。
特に、その尻尾を見に来ましたよ。
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特別造形的にすぐれたこちらの狛犬は、台座にある碑文を読みますと
何年も掛けて北野を崇敬する人たちの集まりが資金を貯めて、奉納した
ものだということです。北野にはこうした奉納物が多くあります。
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赤松の手前にある、赤松色の肌をした狛犬も唐獅子そのもので、クルシャ君
のようにしか見えなくなって参りました。
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こちらも見事な火焔型の尻尾で、ふわふわです。
ふわふわなのか、一種霊気のわき上がる気迫のようなものなのか、おそらく後者
だと思いますが、ふわふわだといいなと思いがちなのです。奥に見える見事な松
は影向の松でございます。存在感が違います。狛犬の尻尾に負けていません。
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こちらにはまた、別の奉納された狛犬がいらっしゃいます。
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光が強すぎるので逆光だと影にしか成らないのが残念です。
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それでも、尻尾は撮影して参りました。
こちらもまた特別な意匠。狛犬の尻尾だけで、こんなに違うとは、比較するまで
飼主も存じませんでした。水流のような螺旋。必ずしも毛の表現が火焔風だとは
限らないのです。
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石工の意気込みが狛犬の台座に彫ってあります。こういうのも、奉納品に自らの
表現と技巧とを尽くして遺そうとする職人の気持ちが今でもリアルに伝わってきます。
ただ、この石工様は「獅子を彫った」と書いてあります。やっぱり狛犬という感覚
じゃないんですね。
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境内の寺にある、官公の母君の墓石なんだそうです。
驚くほど巨きい。
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これね、何だと思いますか。
飼主は自分の目を疑いながら何度も見直しました。
北野の参道の灯籠の側面に彫られている意匠なのですが、これはおそらく
遊んでいる唐獅子を上から見たところですよ。
よく見ると牡丹の花が脇にある。
どうしても上から見たところを彫りたかったんでしょうな。
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本物の民衆の支持が連綿と続いていたことが、こうした奉納物の細部を見ることで
伝わってきます。さすが天満宮、さすが北野。
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たかが狛犬の細部を見に来ただけだというのに、相当な勉強になっています。
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何度参っても、先人の崇敬の様子が新たに浮き彫りになって、新しい発見を
することでしょう。
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この切り株から生えた木の様子など、初めて見るようでもあり、以前見たようでも
あります。見ていても写真にしていない、あるいは見たのに意識していない、という
のはよくあることです。意識を、それこそ意識的に用いることによって、崇敬の細部
が立ち現れてくるのです。
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北野の北側の門を守っている狛犬が特別なものでした。
どうですこの格好。
今まで見てきたような、行儀良く座っている姿勢ではありませんよね。
威嚇のポーズです。
ちなみに、クルシャ君の威嚇のポーズはこちら
威嚇猫/assume a threat posture
この威嚇姿勢を知っていた石工が、狛犬を威嚇姿勢にしたのです。
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こうなると、尻尾も上に巻き上げざるを得ないというわけです。
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あーよく笑った、いやいや、尊いものを拝見できて良かった。
暑いので、清々しい香りのするご神木の影を借りてしばらく立ち止まってから
次の目的地へと参ります。
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