視力の弱い飼主にとって、無理に起きた朝辺りに朦朧としている視界
でもって、挨拶にやってきたクルシャ君を見分けていくのは結構な
難事だったりしています。
和室の椅子に座ろうとして、何か白いタオルをまとめたようなものが
転がっているのだけれども、昨夜和室でタオルなんか使ったかな、などと
思いながらそのタオルらしきものを拾い上げようとすると、実はクルシャ君
だったりします。
やあ。それ、クルですよ。
すみませんでした。
どうもまだぼんやりする。
明るい光の下で、クルシャ君の白黒がはっきり見えていると、どうもまだクルシャ君
がそこにいるなと分かるのですが、まだ目が覚めきらないうちに下を向いて作業など
しておりますと、ダスターのようなものが顔を優しくなで回すので、昨日あたり掃除
してダスターを机に放置しておいたままだったろうかと、朦朧としているのにさらに
記憶を辿ろうとしていると、それがダスターではなくてクルシャ君だったりします。
やあ。それ、クルのしっぽですよ。
すみませんでした。
随分と見当識が失われてきているのでは無いかと、飼主も自身の知覚機能を疑うに至り、
こうしてクルシャ君の背中にお別れを言った後で簡単に作業を済ませて昼寝です。昼寝
をしていると、午前中にクルシャ君だかタオルだか間違ったことについての解釈と自責と
それから後悔みたいなものがないまぜになって、夢に現れる。
夢の中で、飼主は病院に出かけて医者に自分の症状を訴えるのです。
「先生、目が悪いんだか頭がおかしいんだかで、最近は猫とタオルを見間違ったりダスターと
間違えたりするのです。おや、返事有りませんね。医者としての意見を伺いに来たのですよ。
ちゃんと返答してくださいよ、どうなんですか」
やあ。また間違えましたね。それ、クルですよ。
すみませんでした。
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