最近、友人にこんなことを聞かれた。
「発達段階別の充実感の内容の違いについて調べてほしい」
「例えば、幼少期はひたすら欲求充足されるのが充実だとか、児童期はちょっとした困難に立ち向かうことが充実だとか、青年期は長期目標を据えて行動するのが充実につながるだとか」
「上記はただの例えでしかないから、実際はどの発達段階でも充実感の構造は同なのか」
「あるいは、年齢によって充実感を感じる事象に差があるのかが知りたい」
今回はこの疑問に答えていく。
前提として、人間は生まれつき『自律性』『能力』『関連性』といった心理的欲求の充足を求めている。
欲求はそれぞれ、自律性は自身に対する意思決定権の強さを、能力は主に自己効力感をどれだけ感じているかを、関連性は自身の行動などにどれだけの人が関わり反応を返してくれるか、を指す。
これらの欲求は性別・社会的地位・文化と民族・体格・認知能力・精神衛生そして年齢などを問わず在るものであり、立ち位置としては空腹を満たすことと同義となる。
そして、心理的欲求の充足は対象に充実感をもたらす。
なので、ひたすらに欲求充足されることも、ちょっと困難に立ち向かうことも、長期目標を据えて行動することも、それ自体は年齢を問わず充実感をもたらすものとなる。困難に立ち向かうことは特に能力を、長期目標を据えることは特に自律性の充足となる。
が、対象が具体的になにをもってして欲求充足とするかは、対象ごとに違ってくる。
空腹を満たすときに、なにを食べるかが対象によって異なるように。
では、この欲求充足のためになにを求めるか、その傾向は年齢によって修飾されるのかだが……。
筆者は見当がつかない。
欲求充足の具体的な形式とは、主に対象の興味関心により定まる。
興味関心は、対象自身の能力・性格や対象が身を置く環境が相互作用しながら形成され、また変化していくもの。性別・社会的地位・文化と民族・体格・認知能力・精神衛生そして年齢(正確に言えばその年齢層を取り巻く動向)なども、この形成に携わる。
また、興味関心から形成された欲求の具体的な形式がどれだけ充足されているかも、同じような要素が絡み合い、算出される。
これだけ形成に携わる要素が多いと、1つの要素を軸にして計ることが不可能になる。不確定性原理だ。少なくとも思春期においては、欲求充足の度合いの推移は一律ではなく、自律性・能力・関連性ともに4つのパターンがあるとしている。
欲求充足の具体的な形式は、筆者の知る限り、年齢で明確に区別できるものではない。
疑問への返答は以下に記載する。
・心理的欲求は生まれつきのものであり、欲求充足は年齢を問わず充実感をもたらす。
・欲求の具体的な形式は興味関心により定まり、興味関心は年齢でくくれるほど単純ではない。
→私の知る限り、年齢は欲求を特別操作するものではない。
閲覧ありがとうございます。
よろしければコメント・いいねをお願いします。
参考文献
Catherine F.Ratelle and Stéphane Duchesne. (2014) Trajectories of psychological need satisfaction from early to late adolescence as a predictor of adjustment in school.
Jacquelynne S. Eccles. (2004) Schools, Academic Motivation, and Stage-Environment Fit.
Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます