1996年に発表された論文によると、与えられた課題が高難易度かつ悪戯に重要度を上げられたものだった場合、人間は周囲の回答を全肯定してしまうぐらいに弱気になるという。
与えられた課題が高難易度だった場合、対象は能力不足などの(思うより純粋な)理由で決断の信頼性が得られず周囲の判断を鵜呑みにしてしまう。「格子QCDにおけるクォーク・グルーオン・プラズマの動的構造の研究(初田哲男 2006)」なんて話題を吹っ掛けられても大抵の人は理解できず、それについての周囲の言及の真偽を計ることもできないので、周囲の言及をそのまま覚えてしまうようなイメージだ。もしこの話題にぎりぎり追いつけていたとしても、今度は自分の判断の信頼性に不安を抱き、周囲の言及に頼ってしまうことだろう。
与えられた課題が悪戯に重要度を上げられたものだった場合、対象に過剰なまでの信頼性向上の動機が発生し大多数の判断に乗っかってしまう。「この四択クイズをクリアしたら100万円ゲットできます!」とあおられたとき、たとえ与えられた問題が対象にとって簡単なものだったとしても、失敗した時の姿を予測したことで起こる不安に煽られ、大衆の選択の分散度合いという情報に耳を傾けてしまうようなイメージだ。
もちろん、ここに出てきた事例には他人の回答の真偽に一切の言及はない。たとえ周囲が頓珍漢なことを述べていても、たとえ周囲が同じような不安を抱いていたとしても、上記の現象は発生する。
ゆえに、与えられた課題が高難易度かつ悪戯に重要度を上げられたものだった場合、周囲の回答の真偽に関係なく、対象は周囲の回答を全肯定してしまうのだ。
ーーー「『一万時間の法則に従えばどんな夢だって叶う』っていう、
ナントカ教授が書いた本を見つけたんだ。
なんたらの法則もこの偉そうな人も知らないけど、
この本の言うとおりにすれば大儲けできるってことだろ?」
……なんだかわからない法則に従うって、キミ中々怖いこと言ってないかい?
せめて一万時間の法則の概要ぐらい知ってから読もうぜ、私も一緒に調べるからさ。
参考文献
Baron, R. S., Vandello, J. A., & Brunsman, B. (1996). The forgotten variable in conformity research: Impact of task importance on social influence.