インターネット関連の技術発展により、TwitterやYouTubeなど誰もがあらゆる形で意見や話題を発信できるようになった。
旅中で撮影した観光名所やゲーム・アニメの口コミ、船の煙突をピックアップした画像集や明らかな偏向が加わった政治的主張までもが、個人で行えるだけのものになったのだ。
読者が今閲覧しているブログも、個人が気軽に運営しているものとなっている。
で、いま私たちの身の回りにはボタン1つで動画投稿もできちゃうような環境があるわけだが、実際のところどれぐらいの人がインターネットで意見や話題を発信しているのだろう。
「手軽に発信できるのだから、周りのみんなも好き勝手発言してるでしょ?」
文献を参考にする限り、そういう訳ではないらしい。
2014年に発表された論文によると、医療系のSNSにおいて70%以上の投稿が上位1%の人口層によって行われていたという。
文献を参考にする限り、残り9%の人口層は上位層には劣るが発言や主張を散発しており、大多数の90%はほぼ沈黙を保っていたらしいのだ。
このお話はいわゆる『炎上』と呼ばれるネット上の流行にも通じるところがあり、『炎上』に加担するような投稿をしたことがあると答えた人は全体の1%程度に収まったという調査結果もあるのだ。
そして、米国で一時期話題になった『#FilmYourHospital』と呼ばれるCOVID-19関連の陰謀論の一種は、15万人のフォロワーを抱える元共和党の下院議員候補の投稿によって一気に広がったという知見もある。
日本でもときどき名前が挙がっていた『Qアノン』と呼ばれる陰謀論も、2017年の掲示板に投稿された一件の主張が発端らしいのだ。
このことから、ネットで頻繁に意見を述べる人達は非常に少数派であり、またTwitterのトレンドに上がるようなSNS上の話題はごく少数によって形成されることが推測できる。
これは、YouTubeのコメント欄を参考にするとわかりやすいのかもしれない。
MVなどの特例ではない限り、100万回再生された動画であってもコメントの数はいいところ1000~2000件程度だろう。
複数回の視聴も考えて50万人がその動画を視聴していたとしても、コメントを付ける人の割合は単純計算でも1%未満だ。
複数の動画にコメントを残す人であればもう少し絞られるだろうし、複数のクリエイターの動画にコメントを残す人はより希少な存在になるだろう。
……もっと言えば、YouTubeに動画を投稿した人は利用者全体の1%どころじゃない人口層の仲間入りを果たしていることだろう。
SNSで話題を作る人の割合は、全体の1%程度である。
参考文献
Trevor van Mierlo(2014) The 1% Rule in Four Digital Health Social Networks An Observational Study.
Anatoliy Gruzd,Philip Mai (2020) Going viral: How a single tweet spawned a COVID-19 conspiracy theory on Twitter.
AMARNATH AMARASINGAM, MARC-ANDRÉ ARGENTINO (2020) The QAnon Conspiracy Theory: A Security Threat in the Making?
山口真一 (2017) 統計分析が明らかにする炎上の実態対策とネットメディア活用方法
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