ばりん3g

「文脈によっては意味が異なることがある」内発的動機付けをもっと知りたい人に向けた小話。

ひとえに内発的動機付けといっても、参考文献や文脈によりその意味が異なることがある

代表的なものをいくつが挙げる。

 

 

まず認知的な情報プロセスに焦点をあてたもの。好奇心や探求心といったような"古い動機付け理論"では説明できない活動を説明するための概念としての内発的動機付けがある。

この概念では、新規的で、複雑で、驚きと、曖昧さを持つものを理解したいという欲求が内発的動機付けの根源とされた。

今はこういったものは知的好奇心といったほうが伝わるかもしれない。いま世間で広がっている内発的動機付けとはかなり雰囲気が違うけど、もともと「内発的動機付け」はこういった概念を指すものだったんだ。

この概念は動因低減説に対する痛烈な批判という形でどんどん派生していって…という話は長くなるので割愛。

 

 

次に目的的行動と手段的行動で区別したもの。行動そのものを目的とする内発的動機付けと、ある目的を達成するための分離した行動である外発的動機付け、というわかりやすい二項対立で説明するやつ。

「外発的動機付けと比較している」文脈の内発的動機付けは大体これであることが多い。

それでだいたい、内発的動機付けは長期的にはメリットがたくさんあるけど、これを作るのはとても大変で、短期的には外発的動機付けのほうがいい、みたいな扱い方をされる。まぁ間違いではないけど。

すごい余談だけど、職場において意図的に内発的動機付けを起こすのはほぼ不可能だと思ってもらっていいよ。理由は屁理屈めいたもので、給与という目的がある以上、その行動は絶対に内発的動機付けにはならないんだよね。

 

 

3つ目は因果律の所在を軸としたもの。その行為が自分に帰属しているか、ほかのものに帰属しているかで区別している。

2つ目の考え方と結構近い、というかよく混ぜられて使われてる。厳密にいうなら2つ目はCET寄りで、3つ目はOIT寄りのものだけどね。

自習のような目的も評価もぜんぶ自分で決められるものをやるときは完全に因果が内側にあって、テストのような目的も評価もぜんぶ他人が決めているものをやるときは因果が外側にある、みたいなイメージ。

ここで扱われている内発的動機付けと外発的動機付けは完全な二項対立じゃなくて、いくつかの段階に分けられている。よく使われるたとえが「宿題をイヤイヤやる子もいれば、素直に実直にやる子もいる」というもの。宿題という外に因果があるものに対し、前者は受け入れられずやる気をなくし、後者は価値や目的を見出して因果を自分側に寄せている、という違いがある。

また余談。職場においての内発的動機付けの件だけど、こっちの概念を採用すれば内発的動機づけとまではいかずとも『統合的調整』というところまで追い上げることができる。これは外に因果があるものを完全に自分のものにしている状態で、一見最強に見える動機づけだ。

 

 

4つ目は主観的感覚や知覚に主眼をおいたもの。フロー状態とかがこれにあたる。

研究もかなりミクロな視点に立っているため万人に当てはまるかと言われればわからない。が、この視点のものは内発的動機付けというものをよりリアルに描きだそうとしている。

だから、内発的動機付けに従っているときはこんな感覚だよー、みたいな説明の時に使えるのかもしれない。

 

 

以上、内発的動機付けをもっと知りたい人に向けた小話でした。

 

 

補足情報として、内発的動機付けとググったときに出てくる記事は、少なくとも上位4件ぐらいはちゃんとしたこと書いてます

この記事書くときに気になって実際にググったんだけど、思ったよりちゃんとしたこと書いてあってびっくりした。

そしてDeci氏が社会心理学者であることをそこではじめて知ったというね。あなた教育心理学者じゃなかったんだ。

 

 

参考文献

鹿毛 雅治, 内発的動機づけ研究の展望, 教育心理学研究, 1994, 42 巻, 3 号, p. 345-359, 公開日 2013/02/19, Online ISSN 2186-3075, Print ISSN 0021-5015, https://doi.org/10.5926/jjep1953.42.3_345, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/42/3/42_345/_article/-char/ja,


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