2007年に発表された論文などが取り上げている心理学の話題の1つに『ダブルバインド』というものがある。
ダブルバインドとは複数の相反する命令を同時に受けたと認知すること、もしくは命令そのものを指す。「やる気がないなら帰れ!」と言われて帰るそぶりを見せると「本当に帰るな!」と引き戻される一連のやり取りなどが該当する。
このような主張は、主張する本人の中では整合性が取れているものかもしれないが、主張だけを聞いた人にとっては矛盾したものであり、混乱と誤解を引き起こすものとなる。
「やる気がないなら帰れ」と「帰るな」という言葉だけを聞いた人はそれぞれを独立した命令として解釈するが、「やる気がないなら帰れ」と「帰るな」という命令を両立させることは現実的に不可能であり、何とかやりくりしようと考えても解決せず、ある種の思考停止状態に陥り、対応に失敗してしまうのだ。
失敗した時の被害やストレスは命令に左右されるが、今回の場合は主張した人をさらに怒らせるという形になるだろう。誤解の解消がされないまま叱責が続くことは何の改善にもつながらず、さらに引き起こされた思考停止状態が尾を引く可能性もあるのだ。
対策は順序だてて説明することと、真に達成してほしい欲求をきちんと言語化して伝えること。
「やる気がないなら帰れ!」と「本当に帰るな!」と叫んだ後に「俺の思っていることを察しろ!」なんていわないこと。
ダブルバインドとは説明を拗らせたことで生じる誤解とも言い換えられる。
主張する側が「やる気がないなら帰れ!」と「本当に帰るな!」と主張するだけの欲求をきちんと言語化できていれば、それを順序だてて説明できていれば、まず誤解が生じることはない。
ーーーしかも、この手の主張をしてくる人はたいてい
「なんだお前、言いたいことははっきり言えよ!」と攻め、
「そんなことを俺に言うんじゃねぇ!」とも攻め、
「俺の言いたいことは察しやがれ、頭悪いなぁ!」とも言うのだ。
頭が悪いのは、どっちだよ。
参考文献
Sarah J. Tracy. (2007) Dialectic, contradiction, or double bind? Analyzing and theorizing employee reactions to organizational tension.
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