ふと振り替えると,さっき僕に抱きついた兵士がヘルメットを脱がされて担架に寝ているのが見えた。大分落ち着いている様子だったのでほっとした。
真っ白な顔で眠る躯にもう1度目をやった。衛生兵が2人がかりで遺体袋を準備していた。その傍らにライフルを構えたままぼーっと立っているリアノと目が合った。
真っ白な顔で眠る躯にもう1度目をやった。衛生兵が2人がかりで遺体袋を準備していた。その傍らにライフルを構えたままぼーっと立っているリアノと目が合った。
「よぉ,ウィンプ・・・」
リアノの声にはいつもの勢いがなかった。
「大変だったな」
「ああ・・・」
こんな混乱ぶりは別に初めてのことではなかったから細かいことは聞かなかった。
ここでは作戦とか計画とかは余り意味をなさないし,ほぼ100%確実に「想定外」ということが発生する。
大きく背伸びをしながら欠伸をしてグルリと見渡すと,そこいら中手当てを受けている兵士ばかりなことに気づいて一瞬たじろいだ。
慌てて腕時計を確認すると既に10時間くらい経っていて,そんなにも長い間寝ていたんだとはっとする。そういえば辺りはどっぷりと日が暮れていた。
リアノの声にはいつもの勢いがなかった。
「大変だったな」
「ああ・・・」
こんな混乱ぶりは別に初めてのことではなかったから細かいことは聞かなかった。
ここでは作戦とか計画とかは余り意味をなさないし,ほぼ100%確実に「想定外」ということが発生する。
大きく背伸びをしながら欠伸をしてグルリと見渡すと,そこいら中手当てを受けている兵士ばかりなことに気づいて一瞬たじろいだ。
慌てて腕時計を確認すると既に10時間くらい経っていて,そんなにも長い間寝ていたんだとはっとする。そういえば辺りはどっぷりと日が暮れていた。
「ビクターは?」
いつもリアノと一緒にいあるはずのビクターの姿がないことに気づいた僕が聴くとリアノは一瞬目を伏せた。
「一緒だったんだろう?」
悲しそうな表情で大きなため息をついてからリアノがボソボソと話し始めた。
「市場の真ん中で始まってさ。そりゃもう・・・」
リアノはもう一度深いため息をついてから,撤去されていく遺体袋を目で追いながら続けた。
「一緒だったんだろう?」
悲しそうな表情で大きなため息をついてからリアノがボソボソと話し始めた。
「市場の真ん中で始まってさ。そりゃもう・・・」
リアノはもう一度深いため息をついてから,撤去されていく遺体袋を目で追いながら続けた。
「前のトラックの荷台で撃たれたのが3,4人そのまま落っこちてな」
どもりながら早口で話すいつもの元気な様子は嘘みたいに消えていた。
「オレたちは2台目に乗ってたんだが,すぐさま降りて・・・」
リアノは周囲をキョロキョロと確認していた。
どもりながら早口で話すいつもの元気な様子は嘘みたいに消えていた。
「オレたちは2台目に乗ってたんだが,すぐさま降りて・・・」
リアノは周囲をキョロキョロと確認していた。
今思えばビクターを探していたのだろう。
「ビクターの援護でオレは1台目に向かったんだけど,すぐさま2台目が的になって・・・」
いつもなら憎まれ口をたたくリアノだったが今回ばかりは怖じ気づいている。
「もう,どう仕様もなくて・・・」
僕も周りの怪我人たちの顔を覗きながら歩き始めた。
あの陽気なビクターが?
「ビクターの援護でオレは1台目に向かったんだけど,すぐさま2台目が的になって・・・」
いつもなら憎まれ口をたたくリアノだったが今回ばかりは怖じ気づいている。
「もう,どう仕様もなくて・・・」
僕も周りの怪我人たちの顔を覗きながら歩き始めた。
あの陽気なビクターが?
まさか・・・。
いやいなくなっちまうはずはない。
「おいビクター,どこだ?」
僕の声がものすごく響き渡った。
手当てを受けている兵士たちが絶望に満ちた力のない瞳でこちらをじっと見つめる。
空しく響いた僕の呼び掛けへの応答はなく,傷の痛みで時々上がる兵士たちの苦しげな呻き声だけが小さく聞こえた。
沸き上がる嫌な胸騒ぎと共にビクターのあの独特な笑い声と愛嬌のある笑顔が脳裏をよぎった。
ビクターの所在は不明のまま翌朝を迎えた。
「おいビクター,どこだ?」
僕の声がものすごく響き渡った。
手当てを受けている兵士たちが絶望に満ちた力のない瞳でこちらをじっと見つめる。
空しく響いた僕の呼び掛けへの応答はなく,傷の痛みで時々上がる兵士たちの苦しげな呻き声だけが小さく聞こえた。
沸き上がる嫌な胸騒ぎと共にビクターのあの独特な笑い声と愛嬌のある笑顔が脳裏をよぎった。
ビクターの所在は不明のまま翌朝を迎えた。
僕は予定通り帰路につくことなった。
残って引き続きビクターのことを探すことになったリアノに僕はイギリスのアパートの住所と電話番号をメモで渡した。
「じゃあなウィンプ。ビクターは大丈夫。タフなヤツだからな」
リアノは力一杯僕のことを抱き締めた。
残って引き続きビクターのことを探すことになったリアノに僕はイギリスのアパートの住所と電話番号をメモで渡した。
「じゃあなウィンプ。ビクターは大丈夫。タフなヤツだからな」
リアノは力一杯僕のことを抱き締めた。
ほんの1月余り一緒にいただけなのに家族の様な温もりを感じた。
「ああ。わかってるよ。どっかの基地で紅茶でも飲んでんだろ」
するとリアノの声にいつもの調子が戻ってきた。
「そうか。お前の予感はいつも当たるからな,ジャップ」
僕らは握手をしてから笑顔で手を振った。
トラックの荷台には僕以外には同じミッショングループの3人だけしか乗ってなかったけど重たそうな唸り音を立てながらゆっくりと走り出した。
リアノはすぐに基地の方へ向き直ってそのまま振り返らずに歩いていった。
「ああ。わかってるよ。どっかの基地で紅茶でも飲んでんだろ」
するとリアノの声にいつもの調子が戻ってきた。
「そうか。お前の予感はいつも当たるからな,ジャップ」
僕らは握手をしてから笑顔で手を振った。
トラックの荷台には僕以外には同じミッショングループの3人だけしか乗ってなかったけど重たそうな唸り音を立てながらゆっくりと走り出した。
リアノはすぐに基地の方へ向き直ってそのまま振り返らずに歩いていった。