今回のミッションは前回に比べて熾烈を極めた。
それは派遣先の内紛が激化したこともあったが,あの時は難民支援が主な目的だったから,僕たちW.W.はまだ生きている人たちのために働くことが多かったんだ。
驚いたことと言ったら自分達に支給される食料が3日に1回ということと溜まった泥水ですら貴重な飲み水として水筒に納めなければならなかったことぐらいで,そんなのには10日も過ぎると慣れてしまった・・・。
第一,食料といったってドッグフードみたいな缶詰がたった1個支給されるだけで,僕はそれをベルトにぶら下げたバッグに突っ込んでちょっとした時間にスプーンで2,3回口に運ぶくらいだったから落ち着いて食べてる時間なんてなかった。
初めてそれが支給されたときは,まさかそれが3日分だなんて思ってもみやしなかったし意外に美味しかったから,円形に蓋を切り取ってしまって一気に腹の中へ掻き込んでしまった。
そのお陰で僕は2日間も水だけで過ごすことになった。これに懲りて次の支給からは先輩たちを真似て上蓋を完全に抜き切らないで開閉できる様に細工することも覚えた。
あの3週間は戦闘に巻き込まれることも少なかったし比較的緩やかな感じで過ごした。ヨーロッパの夏は日陰に避難すれば気持ちがいいほどカラリとしていたから日本の猛暑なんか比較にならないくらい過ごしやすかった。
でも11月の頭から参加した今回は全く違っていた。秋風は寒すぎるくらいだったし,景色も無惨なくらいに荒んでいた。
想像を絶したのは,派遣先でいきなり一方的な狙撃にあったことだ。
現地に到着して2日目の朝だった。目的地までまだ数キロあったが,今回は前回より情勢が悪化していたし,焼け出された人たちの実態を調査することが主な任務になっていたので,日が暮れてから現地入りするのは少し危険だろうという判断で,予め国連から指示された場所で一晩キャンプすることになったんだ。
翌朝8時には出発と聞いていたので,韓国人のジェイと僕は夜が明けるとすぐ起きて基地から持ってきたきれいな水でインスタントコーヒーを作ろうとしていた。生まれたての秋空は真っ青で雲ひとつなく爽やかに晴れ渡っていた。
それは派遣先の内紛が激化したこともあったが,あの時は難民支援が主な目的だったから,僕たちW.W.はまだ生きている人たちのために働くことが多かったんだ。
驚いたことと言ったら自分達に支給される食料が3日に1回ということと溜まった泥水ですら貴重な飲み水として水筒に納めなければならなかったことぐらいで,そんなのには10日も過ぎると慣れてしまった・・・。
第一,食料といったってドッグフードみたいな缶詰がたった1個支給されるだけで,僕はそれをベルトにぶら下げたバッグに突っ込んでちょっとした時間にスプーンで2,3回口に運ぶくらいだったから落ち着いて食べてる時間なんてなかった。
初めてそれが支給されたときは,まさかそれが3日分だなんて思ってもみやしなかったし意外に美味しかったから,円形に蓋を切り取ってしまって一気に腹の中へ掻き込んでしまった。
そのお陰で僕は2日間も水だけで過ごすことになった。これに懲りて次の支給からは先輩たちを真似て上蓋を完全に抜き切らないで開閉できる様に細工することも覚えた。
あの3週間は戦闘に巻き込まれることも少なかったし比較的緩やかな感じで過ごした。ヨーロッパの夏は日陰に避難すれば気持ちがいいほどカラリとしていたから日本の猛暑なんか比較にならないくらい過ごしやすかった。
でも11月の頭から参加した今回は全く違っていた。秋風は寒すぎるくらいだったし,景色も無惨なくらいに荒んでいた。
想像を絶したのは,派遣先でいきなり一方的な狙撃にあったことだ。
現地に到着して2日目の朝だった。目的地までまだ数キロあったが,今回は前回より情勢が悪化していたし,焼け出された人たちの実態を調査することが主な任務になっていたので,日が暮れてから現地入りするのは少し危険だろうという判断で,予め国連から指示された場所で一晩キャンプすることになったんだ。
翌朝8時には出発と聞いていたので,韓国人のジェイと僕は夜が明けるとすぐ起きて基地から持ってきたきれいな水でインスタントコーヒーを作ろうとしていた。生まれたての秋空は真っ青で雲ひとつなく爽やかに晴れ渡っていた。
ジェイと僕で大きめの折り畳みクッカーに水筒から半分ずつ出し合ってから湯を沸かそうとバーナーに火をつけていたら誰かが大きな声で叫んだ。
「Get down!」
ここではこのフレーズが聞こえたら誰もが反射的に身を屈める癖がついている。
元々破壊された石造りの建物の瓦礫に囲まれていたから,しゃがめば遮蔽物に身を隠せるんだ。
昔見た戦争映画とは違って実際には豪快な銃声は全くなく地面や建物の壁にパチパチと雨が当たる様な着弾音が聞こえるだけだ。
傍らでポコポコと湯が沸いている音がしていたが気にせず息を殺して僕は隠れていた。
僕達より相手側に近い瓦礫のこちら側でガードマン2人が高価な電子双眼鏡で射撃手を探していた。時々壁や地面に何発か彈着してあちこち小さな土煙が上がった。
僕はこんなときとにかく動かずにじっとしていた。後方の壁に隠れたり防弾チョッキの鉛板を2枚ずつに増やしたりしている僕のことをガードマンたちが「ウィンプ」と呼ぶ様になったのは前のミッションでのことだった。
ガスがなくなったのかクッカーをのせていたバーナーの火が消えて不気味な静けさが漂った。
オレゴン出身だという大柄なガードマンが脚付きの大型の機関銃の担当をしていたのだが,1発も応戦せずに突然大きな叫び声を上げながら助けを求めてきた。
声を裏返させながら「I've got shot!」を連発してたから僕は助けようとして無意識に飛び出してしまった。
言わんこっちゃない。やっぱりこういうときはじっと隠れてるのが1番なんだ。
遮蔽物から出た瞬間,左肘に強烈な衝撃が走って僕は揉んどり売ってそのまま頭から倒れた。
全身の力が抜けてしまい余りの激痛に息が止まって声も出なかった。
「Get down!」
ここではこのフレーズが聞こえたら誰もが反射的に身を屈める癖がついている。
元々破壊された石造りの建物の瓦礫に囲まれていたから,しゃがめば遮蔽物に身を隠せるんだ。
昔見た戦争映画とは違って実際には豪快な銃声は全くなく地面や建物の壁にパチパチと雨が当たる様な着弾音が聞こえるだけだ。
傍らでポコポコと湯が沸いている音がしていたが気にせず息を殺して僕は隠れていた。
僕達より相手側に近い瓦礫のこちら側でガードマン2人が高価な電子双眼鏡で射撃手を探していた。時々壁や地面に何発か彈着してあちこち小さな土煙が上がった。
僕はこんなときとにかく動かずにじっとしていた。後方の壁に隠れたり防弾チョッキの鉛板を2枚ずつに増やしたりしている僕のことをガードマンたちが「ウィンプ」と呼ぶ様になったのは前のミッションでのことだった。
ガスがなくなったのかクッカーをのせていたバーナーの火が消えて不気味な静けさが漂った。
オレゴン出身だという大柄なガードマンが脚付きの大型の機関銃の担当をしていたのだが,1発も応戦せずに突然大きな叫び声を上げながら助けを求めてきた。
声を裏返させながら「I've got shot!」を連発してたから僕は助けようとして無意識に飛び出してしまった。
言わんこっちゃない。やっぱりこういうときはじっと隠れてるのが1番なんだ。
遮蔽物から出た瞬間,左肘に強烈な衝撃が走って僕は揉んどり売ってそのまま頭から倒れた。
全身の力が抜けてしまい余りの激痛に息が止まって声も出なかった。