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東京セブンズ2013の感想/残念な結果に終わったが

2013-04-01 00:30:34 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
今年も天候に恵まれなかった東京セブンズだったが、世界のトップ15が一堂に会する大会はやはり見応えがあった。1日目は秩父宮で観戦し、2日目はTV録画でチェックだったのだが、来年度もどうか東京に来てくれますようにという願いを込めてその感想を。

◆着実に進化し続ける世界のセブンズ

秩父宮に着くと、寒いだけでなく観客席もまばらという状態でどうなってしまうのかと正直思った。しかしながら、選手達が出てきていざキックオフとなると、雰囲気ががらりと変わるところはさすがで、世界のトップチームを集めただけのことはある。眼前で繰り広げられる熱い戦いを前に、最前線ではどんなことが起こっているのかということに思いを馳せていたら、いつの間にか寒さが気にならなくなっていた。

さて、オープニングゲームのキックオフ直後に印象的な場面があった。ペナルティを受けたチームの選手が相手チームの速やかなプレー再開を妨げたとしてシンビンを適用された。国内試合では普通に見られるような場面で一瞬厳しいなぁと思った。が、これがセブンズなのだなと実感した。ただでさえ7分ハーフという短い時間で行われるのだから、たとえ僅かでも時間をロスさせる行為は許さないという姿勢が明確に示されたわけだ。

これを見てしまったら、残りの全チームの選手達も敏感にならざるを得ないだろう。セブンズで一番やってはいけないことは、シンビンによって2分間数的不利を強いられることになってしまうことだから。オープニングで毅然とした態度で判定を下したレフリーに拍手を送りたい。観客席はお祭りムードでも、ピッチの上は戦場なのだと観る方にも緊張感を与えたことは間違いない。

それと、昨年度はあまり気にならなかったのだが、キックオフでの激しいボール争奪戦も見応えがあった。今までのセブンズのイメージだと、キックオフする側は相手にボールを渡してまずは防御という感じだったのだが、そんなチームはひとつもなかった。現在のトレンドは浅く高くボールを蹴って攻撃権確保を狙うということになっているようだ。ただ、南アフリカのように深めに蹴り、プレッシャーをかけて自陣には入らせないという方針が徹底されているチームもある。方法はいろいろあってもプレーの一つ一つに神経を使うというくらいの厳しさが求められているのが世界での戦いのようだ。

あと、もうひとつ感じたのは、セブンズではボールを動かし続けることが重要ということ。タックルで倒されてダウンボールかなという場面でも、何故かボールが繋がっている。ダウンボールしてしまったら相手にボールを取られるリスクが大きくなり、ラックを作っても人数をかけられないからターンオーバーを許してしまう。ならば、15人制では軽いプレーと見なされるようなパスをしてでもボールを繋ぎ続けることが大切なのだ。この点、フィジーの選手達は本当に上手い。「セブンズの常識は15人制の非常識」のようなプレーがオンパレードなわけだが、それが何故か心地よかったりする。

さらに、もうひとつ。フィジーのようなマジシャンを揃えなくても、とびきりのスピードランナーが一人でもいれば勝負できること。北半球のチームはパススキルやアイデアの面で南半球のチームに劣る部分があるためか、ボールを持たせたら絶対という選手をメンバーに加えることを重視しているような印象を受けた。南半球でもサモアのようにバランスのとれた堅実なスタイル(私的には好印象を得た)を志向しているようなチームがあることも興味深い。いろいろな考え方が反映しやすいのがセブンズの特徴。だとすると「ジャパン・オリジナル」は何になるのだろうか?

◆セブンズの進化により15人制も活性化

ずっと試合を観ていて感じたことは、15人制のラグビーを観ている時に感じるようなストレスが殆どなかったこと。世界のトップの選手達が集まっているから当然かも知れないが、これは本当に不思議だった。組織的な連携が大切とは言っても、セブンズの醍醐味は「1対1勝負」だから、選手達もそんな局面になったらどうやって抜くかを第一に考える。この思い切りの良さがあるから、観ている方をわくわくさせる部分があるのかも知れない。

そんな理由もあってか、不思議とラグビーを観ているという感覚が薄かったのも新たな発見というか体験。そこで、ふと思った。今観ているスポーツは、楕円形のボールを使ったタックルありのパスゲームではないかということ。15人制のわかりにくい部分を極力なくした新たな球技と考えると、世界への普及のハードルも低くなるはずだ。欧州や中南米などボールゲームが盛んな国ならどこでも取り組めるし、伝統国とは違ったスタイルのセブンズが生まれるかも知れない。

また、セブンズの普及は15人制のラグビーも世界的な拡がりにも繋がるかも知れない。今は、五輪種目としてセブンズに注目が集まっているが、15人制の方にも興味が向くようになっていくことも考えられる。例えば、サッカー大国のブラジルのような国。サッカーをやるには身体が大きすぎるといった理由でバスケットボールやバレーボールに向かっていたアスリート達の目がラグビーに向き始めたら(日本にとっては)恐ろしいことになりそうだ。

◆残念だったジャパン

先にストレスを殆ど感じなかったと書いたが、日本代表の試合ぶりにはストレスというかフラストレーションを感じた部分が多い。世界に届きそうで届かない、というか結果以上に世界との差が拡大しているように感じられた。まず、ジェイミーやトゥキリが居なかったらどうなっていたのだろうかという部分と、もっと強いチームが作れるはずなのにという部分。スタメンで奮闘した羽野が香港セブンズ後に吐露した「セブンズの感覚が戻ってきた。」という発言が、準備不足(経験不足)だったことを物語っている。

2日目のカナダ戦では、タックルどころか指一本触れることができずに再三突破を許していた場面も気になった。あと、スタメンが殆ど固定状態で、メンバー交代も少なめだったことが気になった。1日目の3試合目で選手達の足が止まっているように見えたが、疲労の影響もあったのだろうか。コアチームは2日間6試合を戦い抜くことを前提にコンディショニングを行っているはずだが、日本の戦いぶりは「いっぱいいっぱい」だったような気がしてならない。

選手達は頑張っていたし、何とかしたいという気持ちを持っていたと思う。だから、昨年度と同じことをまた感じたことに歯がゆさを感じる。コアチームの戦いぶりを見ても、すでにセブンズは15人制とは違った形に進化し続けていることは明らか。セブンズのことだけを考えて、戦術戦略を練り、トレーニングを積んでいるようなプロチームでないと世界のトップグループでは戦えない。普段は15人制を主として選手達に一時期だけセブンズに集中しろという方が酷だと思う。

でも、一番残念に思うのは、セブンズの五輪採用や2019年W杯開催といったフォローの風をうまく利用できていないように感じられること。大学ラグビーの伝統校の試合に来る人たちを当てにしても必ずしもトップリーグも東京セブンズの観客が増えるわけではない。ラグビーのことを知らない人たちにファンになってもらう方法を考えることが重要で、上記2つ(五輪とW杯)をそのネタに使わない手はない。

そういった意味で、W杯に理解と関心があり、ボールゲームの面白さを知っているサッカーファンは格好のターゲットになるように思われる。例えば、Jリーグの試合のハーフタイムにセブンズのデモを行うという方法がある。Hゴールや22mラインがなくても、セブンズの面白さは十分にアピールできると思うし、「ラグビーの方のW杯もよろしく!」という形でならそんなに不自然でもないと思うのだがどうだろうか。

(初日のオープニングセレモニーを観て、「Xリーグのチアガールを観に行きたい」と思った不届き者がここに一人居る。)

今回の東京セブンズでは、日本の状況は予想したほどには絶望的ではなかったと感じた。まだ、何とか世界にキャッチアップしていくチャンスは残されているはずだ。

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2 コメント

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ヘンリージェイミー君 (うめぼし殿下)
2013-04-21 15:00:41
この大会で活躍した立正大学ラグビー部のヘンリージェイミー君の進路先を知っていますか?
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はじめまして、初コメントです! (めぐみ)
2013-04-02 12:41:30
はじめまして!めぐみっていいます、他人のブログにいきなりコメントするの始めてで緊張していまっす(= ̄∇ ̄=) ニィ。ちょくちょく見にきてるのでまたコメントしにきますね(*゜ー゜*)ポッ
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