
春のセブンズの締めは今年も関東大学ラグビーフットボール連盟主催の 「セブンズ・ア・サイド」(通称リーグ戦Gセブンズ)。来週からはいよいよ春季大会が始まるため、殆どの大学チームは15人のチームのことで頭がいっぱいになっているはず。かつてはYC&ACセブンズのあとに行われることが多く、東日本大学セブンズの前哨戦のような位置づけにあったのが今年で31回を数えるこの大会だった。しかし、関東地区では春季大会が始まったこともあり、年を重ねる毎に盛り上がりに欠けるような状態になってきていることは否めない。
本来なら、この大会は1部リーグ校から6部リーグ校までの全チームが(試合会場は分かれても)同じ日に集う関東大学ラグビーフットボール連盟の年に一度のお祭りのはず。とくに2部リーグ所属校が1部リーグ校にチャレンジする形になるAブロックの戦いは「下克上」も頻繁に起こり大いに盛り上がる。華やかさや選手個々の能力の面では東日本大学セブンズに譲るところがあるとしても、セブンズの戦術的な面白さが味わえる点ではこちらの方が上ではないかと思ったことも一度や二度ではない。
しかし、春季大会が始まったことで関東大学ラグビーのとくにリーグ戦Gの春の様相が変わってしまったように思われる。もともと招待試合が多い対抗戦G校に比べると、リーグ戦G校は日程的にゆったりしていたのも今は昔。かつての日大のように、春は練習試合を殆ど組まずに身体作りに励む大学があったことなど、ここに書いても信じてもらえないような状況になっている。通年指向で始動が早いチームと出遅れ気味のチームがあるにしても、1部リーグに所属するチームは早い段階から春季大会に備えて15人制のチームを作らなければならない。効用は別にして、セブンズどころではないというのも十分に頷ける。
ここで問われるのは1部リーグ校がこの大会に臨むスタンスだと思う。今回レギュラー主体のチームを派遣したのは東海大、関東学院、拓殖大に法政を加えたおそらく4校。流経大は前日に社会人チームとの強化試合を行っているので主力は不在。大東大も留学生はゼロでレギュラークラスは例年通り15人制の方に切り替わっている模様。そして、日大はオール1年生という驚愕のメンバー構成。中央大は学生の麻疹対応で活動自粛のためYC&ACセブンズからの棄権が続く。この大会のためにしっかり準備してきた2部リーグ校から苦情がひとつふたつ出ても文句は言えない状況になっている。
前置きが長くなってしまったが、試合会場に着いてもがっかりを書かなければならないのが残念。江戸川区陸上競技場は陸上トラック付きながら観やすいので問題なし。しかし、会場に着いても観客を誘導する案内表示や係の人が見当たらない。私が愛するバックスタンドが閉鎖だということもスタジアムに入ってから知った。せっかくいい会場で開催するのに、観客への配慮はいったいどうなっているのだろうかというような状況。大学グランドでの開催ならまだ分かる。でも、ここは秋には公式戦が行われる立派な競技場なのだ。
極めつけは肝心のメンバー表がどこにも見当たらないこと。入場無料でも過去の大会なら係の人が手渡してくれた。スタンドで廻りを見てもそれらしき印刷物を持っている人はいないので、配布はなかったのか??? 東海大のメンバーが陣取る前の通路に置かれたボードにメンバー表が貼られていなかったら、殆ど出場メンバーを知らずに観戦するところだった。メモを取る時間はないのでスマホで撮影しておき、試合の合間に確認することにした。実はこのボード、東海大の選手達がミーティングに使っているものだったことを後で知る。公式戦ではレギュラーで戦うことをポリシーとしているチームは準備や心構えも違う。実は、このメンバー表自体も当てにならないものだったのだが、東海大チームへの好感度は確実にアップした。
■1回戦の結果と各試合の感想
1回戦は1部リーグ所属校と2部リーグ所属校の激突になるのは例年と同じ。中央大が棄権したため、朝鮮大学校が不戦勝で自動的にチャンピオンシップへ。そして、予定通り熱き9時20分に戦いの火蓋が切って落とされた。
○東海大学 26-22 ●専修大学(前半12-12)
緒戦からいきなり屈指の好カードで、この試合があるから遅刻はできないと観戦する側も気合が入る。そして、期待に違わぬ熱戦が繰り広げられた。東海大が幸先良く先制するも専修が2本連取して12-5と逆転。しかし東海大が前半終了間際に1T1Gを返して12-12のタイスコアでの折り返しとなる。東海大ではCTB池田がYC&ACからの好調をキープしていよいよ本物になった感がある。専修の2本はいずれも東海大のミスパスを拾っての切り返しから取り切ったものだが、ほぼガチのレギュラー陣を相手に専修の組織された動きとここ一発の切れ味鋭いアタックが光る。
後半もトライ数では2本対2本の5分。明暗を分けたのはゴールキックで、4本中3本を決めた東海大が1本しか決められなかった専修に4点差を付けて勝利。このカードはできればチャンピオンシップトーナメントのベスト4以上で観たかった。なお、東海大では後半から2年生のモリキ・リードが登場して存在感を示した。

○立正大学 61-0 ●日本大学(前半40-0)
ピッチに登場した両チームの選手達を見比べたら一目瞭然で、留学生以外の選手もガッチリ系の選手が揃うのが立正大。対する日大はまだ身体が出来上がっていないと覚しき選手が多い。戦わずして勝負アリの感があったが、キックオフ後に予想通り立正大がトライの山を築く一方的な展開となる。日大の選手達は個々がどう動いていいか判らないといった感じで拡がりがないしタックルにも行けない状況。スマホでメンバーをチェックしたらオール1年生だったのでそれも納得。歯応えのなさに逆に立正大の選手達が気の毒な感じも。前後半を通じてアタックらしいアタックを見せることもなく日大は撃沈した。とはいっても立正大が強力だったことも確か。おそらく現状でも1部リーグで十分に戦えるだろう。

○拓殖大学 40-5 ●白鴎大学(前半14-5)
シオネ・ラベマイとアセリ・マシヴォウの強力なコンビを擁する拓大が白鴎大を圧倒。前半こそ14-5の競った展開になったが、後半は拓大が4連続トライを奪って圧勝した。白鴎大と言えば、セブンズ日本代表のロテ・トゥキリや昨シーズンにサンウルブズで活躍した米国代表(7sと15人制)のデュルタロの出身校。そんなことがあるためかどうかは判らないが、セブンズの戦いは得意のようだ。点差はついたが随所に光るプレーを見せた。マイケル・ピータースは要注目選手だと思う。

○大東文化大学 29-14 ●山梨学院大学(前半12-7)
大東大は留学生を含まず下級生主体のメンバー構成。片や山梨学院はパウロらの留学生2人を擁する強力メンバー。キックオフからパワフルに攻める山梨学院優位かと思われたが、レギュラークラスが不在(おそらく)の大東大が確実にトライを重ねてダブルスコアでの勝利。山梨学院は個々のパワーに頼りすぎの感があったのが残念。しかし、1年生の時から注目されていたパウロがようやくレギュラーで出てくるようになったのも驚きではある。

○関東学院大学 33-24 ●東洋大学(前半14-10)
東海vs専修と並ぶ1回戦屈指の好カード。東洋大の下克上も十分にあると見ていたが、佐々木や今井といった決定力があり判断力が光る選手を揃える関東学院が持ち味の組織力を活かして勝利。トライ数は前半が2-2で後半は3-2だったが、関東学院はゴールキックを5本中4本決めたことで9点差となった。ただ、東洋大は昨シーズンに比べるとややパワーダウンしているようにも感じられた。(せっかくの好ゲームだったのに写真がなくて申し訳ありません。)
○法政大学 24-19 ●國學院大学(前半5-12)
レギュラークラスを揃えてこの大会に臨んだ法政。しかし前半は2トライを先行される苦しい展開となる。何とか1トライを返した法政は後半に望みを託す。ここで圧倒的な存在感を見せたのがリーグ戦G屈指のエースへと進化を遂げている中井健人だった。ボールを持ったら止められない対戦相手にとっては厄介な選手。中井が2トライを連取して17-12と法政が逆転に成功。しかし、セブンズの内容では上回る國學院が1T1Gを決めて19-17と再逆転し、法政ファンは肝を冷やす展開に。だが、残り時間2分を切ったところでウォーカーが起死回生の逆転トライを決めて24-19で法政が辛くも逃げ切りに成功した。

○流通経済大学 31-17 ●国士舘大学(前半24-5)
前日に社会人チームと強化試合を行ったため主力を欠いたメンバー構成の流経大。だが、選手層も選手個々の胸板も厚く、また、セブンズへの理解度も高い。前半はトライ数4本対1本(24-5)で国士舘を圧倒。しかし、国士舘もセブンズには自信を持っている好チーム。後半に2つ連続でトライを返して17-24と流経大に迫る。勝利のためにあと1本が欲しい国士舘だったが、終了間際に流経大に1トライを奪われて涙を呑んだ。

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