横浜銀行が「はまぎん365」で収益増、当初ストア評価1点台だった酷評からの巻き返し岡部 一詩様記事抜粋<
「成果を上げられるようになってきた。顧客の情報をしっかりと踏まえた上での提案は機能する」――。横浜銀行の小糠純デジタル戦略部副部長兼決済ビジネス戦略室長は感慨深げに語る。
横浜銀行のスマートフォンアプリ「はまぎん365」が、顧客チャネルとしての存在感を増している。リリースから1年強がたった2024年7月末時点でのユーザー数は125万人。月間アクティブユーザー(MAU)の割合は81%、アプリの平均起動回数は月6.5回に及ぶ。2023年4月まで提供していた「はまぎんアプリ」のユーザー数は約110万人、MAUの割合は約75%(推定値)。着実に利用を増やしている。
さらに注目されるのは収益面での貢献だ。アプリの利用者と非利用者における収益差は、はまぎんアプリ時代に比べて1顧客当たり1日平均で3.3円増えた(2024年6月実績)。アプリで接点を持った顧客が銀行商品を購入することによる増収効果は、2023年度で計11億円に上るという。
横浜銀行が、はまぎん365の構想を練り始めたのは2021年3月のこと。実ははまぎんアプリにリニューアルしてから数カ月しかたっていなかったが、新しくアプリをスクラッチ開発することを決めた。それには理由がある。旧アプリは共同利用型サービスを活用しており、自分たちが実現したい機能をスピーディーに追加するのが難しかったからだ。「(共同利用型よりも)何十倍のコストがかかるし、大きな決断だった」と、小糠副部長は振り返る。
手を組んだのがアクセンチュアだ。店頭タブレットの開発で協業の実績があったのがきっかけだ。「システム開発だけでなく、ビジネス、デザイン、マーケティングを一気通貫で担える体制を提案した」と、アクセンチュアの粟倉万統マネジング・ディレクター ビジネスコンサルティング本部ストラテジーグループ銀行プラクティス日本統括は説明する。
1300カ所で行動データを取得
横浜銀行が特に実現したかったのは、収益力向上の原動力になるマーケティング機能の強化だ。小糠副部長は「顧客のライフイベントやニーズを踏まえて自然な提案をしたかった」と語る。金融商品を唐突に薦めるのではなく、コミュニケーションの過程で見極めた顧客ニーズに沿った商品を提示するやり方だ。
そこで新アプリでは、様々なデータを収集できるように工夫を凝らした。例えば、アプリ内には1300カ所の計測ポイントを設定。画面遷移やボタンタップといった行動データを顧客ごとに集められるようにしている。
データの種類も豊富だ。金融商品の記事閲覧などからはニーズに関する情報を、コンテンツ配信サービス「For YOU」などからは興味・関心にまつわる情報を集める。ライフプランに関するシミュレーション機能からは、年収などのデータも収集可能だ。チャット機能やモーダルウィンドウを能動的に表示して情報収集に役立てる仕掛けもある。
ニーズに関するデータは1日2400人分を収集できている。シミュレーション機能などから得た資産情報なども約2万人分に上る。