まったくの予習もせずに観に行った自身への自戒も込めて。
先の投稿(■もう観て来たよ! 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』)で書いたように、本作は各国などの勢力図、パワーバランス、それぞれの名称、立ち位置、役割をよく事前理解しておかないと、ただのロボットモノの「ズキューン」「バキューン」で終わってしまいます。
記事構成を大きく三編に分け、ここではまず基本的なことだけ書くようになるべくします。本人の無自覚で極小のネタバレがあるかもしれませんが、そこはどうかご容赦をいただきたいです。
もし興味を持ったりお時間あれば、お付き合いをいただけますと幸いです。基本的には、「自分のため」でありますので。
まずは、公開前で開示されている情報で整理をしたいと思います。基本的には公式HPにある情報とキーワード(KEYWORDS)から引っ張ってきています。これは本当に最低限の情報と考えてよいです。はっきり言って、かなり意図的に隠された部分が多いのが実態です。
一番基本的な情報として、
C.E.(コズミック・イラ)――
遺伝子を調整し、生まれながらにして優れた身体能力や頭脳を持つ人類(コーディネイター)と自然のままに生まれた人類(ナチュラル)が存在する時代。
「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」は、このC.E.を舞台にコーディネイターとナチュラルの間の戦いを描いた作品である。
C.E.71~を描いた『機動戦士ガンダムSEED』(2002~2003年)、
C.E.73~を描いた『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(2004~2005年)がTVアニメーションとして放送され、その後も様々なメディアで展開された。
そしてC.E.75を完全新作ストーリーで描く『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が、2024年、ファン待望の劇場公開!
となり、本作の公開は20年越しですが、劇中は地上波放送終了時点から2年後の世界を描いています。また、ここは重要なのですが、SEEDの世界は『コズミック・イラ歴』とでも言いましょうか、偉大な初代ガンダムが西暦の延長線である『宇宙暦(宇宙世紀=U.C./Universal Century)』に対して、異なる世界線で存在しています。
地球と宇宙の状態や関係は、その作品時々の情勢なども考慮、加味されているでしょうが、日本がありアメリカがあり欧州がある。その辺りは、ほぼ共通です。ただ、C.E.歴では実質、日本という国家は存在しなく、また本州と北海道は勢力が分断されています。具体的に描写されることもありません。当然ですが、高度な判断に依るものです。
そして、
C.E.75、戦いはまだ続いていた。
独立運動、ブルーコスモスによる侵攻……
事態を沈静化するべく、ラクスを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスが創設され、キラたちはその一員として各地の戦闘に介入する。
そんな折、新興国・ファウンデーション王国から、ブルーコスモス本拠地への合同作戦を提案される。
となっています。
また、
C.E.(コズミック・イラ)――
遺伝子を調整し、生まれながらにして優れた身体能力や頭脳を持つ人類(コーディネイター)と自然のままに生まれた人類(ナチュラル)が存在する時代。
コーディネイターとナチュラルの間では己の存在をかけた思想が衝突し、武力を用いた戦争へと発展していた。
その最中、個々へ役割を強制的に与え、競争のない世界を創成するシステム「デスティニープラン」が提唱されるが、人類の自由な未来と希望を守るため「デスティニープラン」は戦いの中、拒絶されることとなった。
そして、多くの犠牲を払い戦争は終結を迎えたが、二つの人類の対立と憎しみは今もなお、各地にくすぶり続けている――。
という状況でもあります。
とここまで整理して、いまさら疑問に感じました。
「宇宙世紀ではないのだからミノフスキー粒子はないよね? これだけ高度な技術が普及しているのに、相変わらずの有視界戦闘の意味は?」となりました。
ミノフスキー粒子の詳細は省きますが、簡単に言うとロボットにひとが乗って戦闘する必然性を作り出すための仮想理論(作り話)で、通信遮断、電波遮断のようなものを行います。よって、現代戦闘で一気にその有用性が立証されてしまったドローンのような戦法が使えません。極めて至近距離、または接触回線というものは可能ですが、個々が離れれば離れるほど、また粒子の密度が濃いほど撹乱が酷くなります。
でも、コズミック・イラの世界線では存在しないよね? と、さすが2002年のはなし、相当忘れています。この世界ではそれに代わるモノとして、ニュートロンジャマーという装置が存在します。元は違う目的の装置なのですが、これの副産物としてミノフスキー粒子のような効果が発生し、結果、この世界でも有視界戦闘の必然性を生み出しています。
よって、高度な技術が確立されても、相も変わらず遠隔操作のようなものは不可能になっています。そういえば、本作、一貫してほとんど携帯サイズの通信端末のような物が登場しませんものね。ケータイはありましたが、これも一定の仕組みで使用が可能だったようで、また技術が高度故、デジタルデータは改竄が容易でアナログな手渡しの仕組みもあったようです。
ということで、有人兵器の問題は解決しました。ヒトガタである理由は、後付で提唱されたAMBAC(アンバック/Active Mass Balance Auto Control = 能動的質量移動による自動姿勢制御)という理論で補完。ただ、これは宇宙空間においてのみに限定されるので、本作では『バクゥ』のような地上戦、砂地などに適正なカタチの兵器も多く登場します。
▲バクゥ
※このあたりは、またさらにややこしい理由もあるので、考察編に譲ります。
で、差し当たってのツッコミどころ障害が解消したので、本題に。
<勢力図>
この各勢力の関係性やパワーバランス、立ち位置がとても重要になってきます。まず、公式HPのキーワードをそのままに。
- オーブ
正式名は「オーブ連合首長国」。太平洋に位置するいくつかの島々からなる中立国。小規模にもかかわらず強国の支配を免れてきたのは、高い技術を有するため。政治はアスハ家を中心に五大氏族が執り行う。 - コーディネイター
遺伝子調整により誕生した新人類で、先天的に強靱な肉体と優秀な頭脳を獲得している。 - コロニー
宇宙での居住や研究などのために建設された人工宇宙島が、スペースコロニーである。プラントにおいては天秤型コロニーが採用された。 - コンパス
カガリ・ユラ・アスハの主導で、オーブ、プラント、大西洋連邦が組織した世界平和監視機構。三国から供出された独自の戦力を持ち、本部はプラント・アプリリウス内に置く。 - ザフト
コーディネイターの国家「プラント」が保有する軍事組織。正式名称は「Zodiac Alliance of Freedom Treaty(自由条約黄道同盟)」で、略称が「Z.A.F.T.(ザフト)」となる。 - SEED
正式名は「Superior Evolutionary Element Destined-factor」で「種の進化的要素を決定づける因子」の意。SEEDの発現はナチュラル、コーディネイターの双方に現れ、発現すれば「人類の一つ先のステージに進む」可能性があるとされている。SEEDが発現したキラは、神経伝達系の処理速度が飛躍的に向上し驚異的な戦闘力を発揮していた。 - ターミナル
国家間の情報伝達などを担う隠密組織。 - 地球連合
コーディネイターによるコロニー国家「プラント」に対抗するため、国連に代わる国際組織として設立された。この組織が保有する戦力が地球連合軍である。 - デスティニープラン
プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルによって提唱された人類救済計画。人々の遺伝子を解析し、その結果を基に適切な職業に就かせることで個々の差別意識をなくすというもの。しかし遺伝子に特化した選別は人々から自由意思を奪い、結果的に人間の可能性を摘み取るものであった。 - ナチュラル
遺伝子調整により誕生したコーディネイターに対して、遺伝子調整を受けていない人類をナチュラルと呼ぶ。 - ファウンデーション王国
ザフトからの支援で、ユーラシア連邦から独立した国家。王政で、現在の君主はアウラ・マハ・ハイバル。 - ブラックナイトスコード
オルフェ・ラム・タオ以下、7名で構成されるアウラ女王の親衛隊。この下に通常の軍隊が存在する。 - プラント
「P.L.A.N.T.」は、コーディネイターが暮らす新世代型コロニー群(Productive Location Ally on Nexus Technology)や、コーディネイターが建国した国家の名称(Peoples Liberation Acting Nation of Technology)を指す。プラント内の各市より選出された議員からなるプラント最高評議会が、最高意思決定権を持つ。 - ブルーコスモス
元は自然環境保護を訴える団体で、コーディネイター技術に対して反意を表明。「青き清浄なる世界のために」を活動スローガンとして、反コーディネイター、反プラント運動を行っている。
まあ、まるで足りません。現段階で詳らかにしてしまうと当然、まるで面白くもないのでこうなりますが。
上記を引用しながら、予習&復習を兼ねて補強していきます。
まず、SEEDの世界に於いて決定的なのが、この2者の存在です。
ナチュラル
遺伝子調整により誕生したコーディネイターに対して、遺伝子調整を受けていない人類をナチュラルと呼ぶ。
━━現在、リアルに存在するニンゲンとまるで変わりありません。自身と思っていただいてOKです。素のニンゲンです。
コーディネイター
遺伝子調整により誕生した新人類で、先天的に強靱な肉体と優秀な頭脳を獲得している。
━━現実世界では、動植物に対してはおこなわれていますが、倫理観などからニンゲンへの適用はまだです。C.E.世界ではおこなわれています。ただし、『強靱な肉体と優秀な頭脳を獲得している』だけで、そこに感情は含まれていません。相変わらず、心の有り様、その存在、位置、などは解明できてないようです。ここは非常に大事な点になってきます。
この2者間があることで、いつまでたっても対立、軋轢、抑圧、差別、劣等感のようなモノがなくならず、プロローグ(PROLOGUE)ページでは「コーディネイターとナチュラルの間では己の存在をかけた思想が衝突し、武力を用いた戦争へと発展していた」と書かれています。この一文でも注目したいのが、“ 思想が衝突し ” の箇所ですね。先に書いたように、要はやはり『こころ』、というモノ自体にまでは踏み込めていない、解明&解析&コントロールできていない時代、技術ということです。
それが結局、大きな問題となり様々な事態を引き起こします。
次に注目したいのが、この団体(組織?)です。
ブルーコスモス
元は自然環境保護を訴える団体で、コーディネイター技術に対して反意を表明。「青き清浄なる世界のために」を活動スローガンとして、反コーディネイター、反プラント運動を行っている。
━━可愛く言えば活動家、激しく言えばテロリストです。とにかくコーディネイター嫌いで、排斥に積極的です。コーディネイターは別に宇宙産ではないので地球上にも暮らしていて、ブルーコスモスの排斥対象にそんな彼らも含まれます。武力も保有するのは、過去は “ ロゴス ” という秘密結社のような現代でいう(影の)フィクサーの存在があり、それと連動するように地球連合が保有する軍内部にも多くのメンバーが存在するからです。なお、ロゴス自体はDESTINY作中内で完全に殲滅されています。
ブルーコスモスに触れると密接に関係するこの組織(というか集団だよね?)。
地球連合
コーディネイターによるコロニー国家「プラント」に対抗するため、国連に代わる国際組織として設立された。この組織が保有する戦力が地球連合軍である。
━━文字通りなのですが、はなしがややこしくなるのが所属する単位が現代の国連のような国単位もある一方で、共同体や連邦単位もあり、一連邦のサイズ、力の大きさが半端ない。結果、◯◯連邦というのがかなり幅を効かせるかたちになっています。詳細は後に譲りますが、基本的にはほぼナチュラルで構成されているかと。
そして、この『地球連合』と対を成すように描かれるのが、『プラント』です。
プラント
「P.L.A.N.T.」は、コーディネイターが暮らす新世代型コロニー群(Productive Location Ally on Nexus Technology/プロダクティブ・ロケーション・アレイ・オン・ネクサス・テクノロジー)や、コーディネイターが建国した国家の名称(Peoples Liberation Acting Nation of Technology/ピープルズ・リベレーション・アクチング・ネイション・オブ・テクノロジー)を指す。プラント内の各市より選出された議員からなるプラント最高評議会が、最高意思決定権を持つ。
━━実は、“ P.L.A.N.T. ” というのはコーディネイターが建国した際に付けた名称で、当初はただの “ プラント ” で、文字通り、生産工場の役割を担い地球への各種供給が目的でした。象徴的な天秤型コロニーに姿を変える際の出資者が、大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国で3国とも『地球連合』の所属国家です。と同時に、プラントの理事国にもなっています。その時点でかなりの比率がコーディネイターで占められていて、それだけに独立や自治権などに動かないよう、食料生産のみは禁止され、100%地球からの輸入という状況で抑え込みを企図していました。と同時に非武装状態でもあったため、いろいろな問題が起き始め、紆余曲折を経て、独立国家へとなっていきます。
最新の勢力図では『過去対立』となっていますが、果たしてほんとうにそうなのでしょうか?
ヒトとヒトとの溝は、そうそう簡単には埋まらないと思いますが。しかも、問題はナチュラルとコーディネイターですからね。
なお、ここで注意したいのがしばしば勘違いされ、自身も本作を観たあとで再認識した「うっかり」が、“ ザフト ” は国家でもなんでもないことです。あくまでも軍事組織です。
作中で度々、「ザフトが」「ザフトめ」みたいに描かれるので、ついU.C.歴に慣れていると地球連邦 vs ジオンのような構図になりがちですが、地球連合 vs プラントであって、その根っこは、ナチュラルとコーディネイターです。
▲プラントのマーク
ただ、リマスターHD放送が地上波ローカルで始まったので久し振りに1話を見たのですが、やはり結構、豪快に『ザフト前面』なのですよね。
▲冒頭降下作戦時、全員「ザフトのために」って言ってる。
▲ラミアス大尉も、「ザフトの」って言ってる。
誰も、「プラントの」とか言わない……。先に紹介した、プラントの最高意思決定権を持つ『プラント最高評議会』メンバーに一定数のザフト関係者も居ることから、民主主義と軍閥がイーブンな力関係なんだと思います。
ヘリオポリス襲撃時も、艦長のアデスがプラント評議会の判断をかなり気にしていますが、クルーゼは強行します。結果を出せば抑え込みも効く、くらいのバランスなのでしょう。現実社会で、「海兵隊め」とか「シールズが来た!」とかは言いそうですが、「IDFが」とは言わないと思うので、まあ、ここはどうにも「う〜ん」ですが。
あと、ぷち知識として、ザフトには階級がないそうです。そういえば、そういうやりとり聞いた記憶ないような。みな、名前で呼び合ってるし、立場的に上のひとには、「隊長」とか「艦長」ですもんね。おもしろい。
そして、このどちらにも属さないまま劇中でも登場するのが、オーブです。
オーブ
正式名は「オーブ連合首長国」。太平洋に位置するいくつかの島々からなる中立国。小規模にもかかわらず強国の支配を免れてきたのは、高い技術を有するため。政治はアスハ家を中心に五大氏族が執り行う。
━━具体的には、南太平洋ソロモン諸島と設定されています。SEEDという作品に於いて、一貫してたいへん重要な位置に常にいます。中立を貫けるのは誕生から国家になるまでの過程で高い技術立国になったことと、火山列島であるため地熱発電による自立が可能であったことです。この時代も、別に地球勢力は地球に張り付いている訳ではなく、それぞれに宇宙進出しています。SEEDの第1話も、オーブの持つ資源衛星コロニー『ヘリオポリス』から始まり、そこには5機の “ G兵器 “(デュエル、バスター、ストライク、ブリッツ、イージス)が秘密裏に開発されていたことから戦火が広がって行きます。なお、中立らしくナチュラル、コーディネイターの垣根がなく、多くのコーディネイター受け入れもおこなっています。
とまあ、思ったより大ボリュウムになってしまったので、ここで一度筆を止めます。地上波放送時と様相が変わったターミナルと他、新興勢力(組織)については続きとして。
また、まずは勢力図、パワーバランス、それぞれの名称などを整理するのが一番なので、それ以外についても続きに譲ります。
つづく
■劇場作品『機動戦士 #ガンダムSEED FREEDOM』予習&復習、備忘録編 その②
※なお、本稿制作時に於いて公式HPが改定されましたが、多くのネタバレを含むようなので、当面はあくまで初期開示情報(であったと記憶する)範囲のみに絞ります。
やかん