その女性、マダムは一人暮らしでお手伝いさんが欲しいとの事で私を家に招き入れてくれた。
家の中は広いはずが、物が多くあり狭く見える。壁紙や絨毯は高そうだが汚れている。暖炉もある。奥にはまだ部屋がありそうだ。
「どうせお手伝いさんを雇うのなら若い男がいいなぁって思ったの。そしたらあなたをみつけたってわけよ。しかも、あなたアソコが大きいじゃない。フフッ…先に、お風呂に入ってくれない?あなた汚れてるから。」
「すみません、汚くて。」
「出来れば髭も剃ってくれない?あなたの顔に髭は似合わないわ。」
「はい。」
風呂場に案内された。脱衣所の鏡で初めて自分の顔を見た。ボサボサの髪に顔が分からなくなる程伸びた髭。毛の色はブロンズのようだ。
「カミソリはそれよ。鏡はお風呂場のシャワーの前にもあるわ。あと、ボディーソープとかは好きなの使ってね。フフッ。」
「…あの、服はどうすれば?」
「?…あぁ、あなたがお風呂に入っている間に用意しておくわ。」
そう言うと奥の部屋に消えた。
風呂場も広く、奥の大きなバスタブが窓からの光に照らされていた。シャワーはバスタブの手前にあった。シャワーの前には鏡、その下の棚にはボディーソープやシャンプーなど数本のボトルが置いてあった。どうしてこんなにボトルがあるのかは分からない。ボディーソープは三つ、気分によって使い分けるのだろうか?
私には違いがボトルの色と香りしか分からなかった。ピンクのボトルはローズの香り、紫のボトルはラベンダーの香り、水色のボトルはソープの香り。ローズ、薔薇に惹かれた。
シャワーで全身を濡らしボディーソープを泡立てた。すると、全身ローズの香りに包まれた。何となく、懐かしさを感じた。…なぜか薔薇の花束が思い浮かんだ。
…失った記憶の一部かもしれないが今は何とも言えない。汚れていた体のせいで泡が黒ずんだ。
体を流し髪を濡らした。シャンプーボトルは二つ?いや、一つだ。もう一つはトリートメントらしい。シャンプーで髪を洗うと体と同じように泡が黒ずんだ。しかし、おかげで綺麗になった。鏡を見て髭を剃っていない事を思い出した。ボディーソープを泡立て、髭に塗る。借りたカミソリでは剃りにくかったが、何とか剃る事が出来た。しっかりと自分の顔を確認できた。まだ整える必要があるが今日はもういいだろう。使わなかったバスタブに寂しさがあった。
浴室から出るとマダムが…。”モノ”を隠そうとしたが、隠しきれない。
「フフッ、大きすぎるもんねアハハ。」
と言って凝視している。
「もう、すごく面白い!アハハハ!何で動かないのよ?フフッ、恥ずかしいの?アハハ!」
……
「フフッ、ごめんねハハッ。…はいこれ。」
差し出されたタオルを奪うように取り”モノ”を隠した。
「あぁ、それバスローブなのよ。」
”モノ”が見えないようタオルを確認する。…確かにバスローブだ。
マダムに背を向けバスローブを着た。これで安心できる。
「あなた、髭を剃るといい男ね。」
「いや、そうですか?ありがとうございます…。」
「フフッ、照れてるの?可愛いところもあるのね。」
可愛いと言われたってどうしようもない。
「あなたの部屋なんだけど、使ってない部屋があったから掃除しておいたわ。あなたの好きに使ってね。」
案内された部屋はベッドと小さな机、小さなタンス、窓が一つずつある。これで安心して眠れる。