Marco blog

Que Sera, Sera / marco library / 北の旅人

語り残す友もいない

2010年02月09日 | marco library
2/9.tue|先勝|札幌時々|最高/

午後のサッポロ、
中心街は風が強く小雪模様ですね。
   *
 *
      *
ここ最近は、休みの日に以前読んだ本を引っ張り出して再読
することが度々、本書もその内の一冊です。
永山則夫著「無知の涙」河出文庫
http://blog.goo.ne.jp/yelloween_2008/e/1dadfeab1c36eecb49ebd1cbc1f1e223

今回読み返して、
この一文の深い意味をつらつら考えておりました。

本文から引用します―

八月二十三日
  独りで誕まれて来たのであり
  独りで育って来たのであり
  独りでこの事件をやったのであり
  とある日 独りで死んで逝くのだ
  そこには 他との関係は一切れも存在しない
  まるで 路傍の小石のように

  雪降れば 冬を知り
  若草見つければ 春を知り
  蝉鳴くを聴けば 夏を知り
  赤とんぼと蒼穹であそべば 秋を知る
  がここには 肉体の歴史はない
  隠すのが 運命(さだめ)で逝く者の精一杯の憩いだ

  知ったとき 確実な運命(さだめ)が眼前にあり
  それを 語り残す友もいない
  無知が現在の自己にかえた

  無知である時期(とき)の涙が
  が これは無知の涙ではない
  この涙は普遍の涙だ
  潤んでいる でも 頬にはおとさない
  ここでは おとしてはならん
  求めるのは こんなに安ぽくない筈だ もっと華麗のなかに……

  涙が頬にかかるとき
  それは 無知の涙ではない
  涙せる日を憧憬し 存在を置く
  無知の涙とは 悠久の果てにも無いかも知れない
  でも それが 頬にかかるとき
  私のその涙は無知ではなくなる
                                   「無知の涙」
※しょうけい【憧憬】あこがれること

裏表紙から―

四人を射殺した少年は獄中で、本を貪り読み、
字を学びながら、生まれて初めてノートを綴った。
―自らを徹底的に問いつめつつ、世界と自己へ
目を開いていく、かつてない魂の痕跡として。

〔1997年8月1日死刑執行 享年48歳〕





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