「荻生徂徠」は江戸時代の思想家で「赤穂事件」や「徂徠豆腐」で有名(だそう)です。
落語の「徂徠豆腐」の粗筋は・・・
徂徠は貧しい学者時代に空腹の為、豆腐屋さんを騙して3日連続で豆腐を無銭飲食しました。豆腐屋の七兵衛は、徂徠の「口車に乗せられて」無銭飲食をを許したうえに、翌日からオカラやオニギリを提供するようになりました。
・・・色々事情があって徂徠と七兵衛の行き来が無くなり、時が過ぎ、赤穂事件が起きて元禄十六年二月四日に四十七士は切腹し、この裁定を下したのが仕官した荻生徂徠でした。・・・
徂徠は、七兵衛が浪士討ち入りの翌日の大火で焼けだされたことを知り、過去の恩返しとして十両と新しい店を贈ろうとしますが、義士を切腹に導いた徂徠からの施しを、七兵衛は「江戸っ子として受けられない」と拒否しました。
それに対して徂徠は、「豆腐を只食いした自分の行為を”出世払い”にして、盗人となることから自分を救ってくれた。法を曲げずに情けをかけてくれたから、今の自分がある。自分も”学者”として法を曲げずに浪士に最大の情けをかけた、それは豆腐屋殿と同じ。」 と法の道理を説きました。
さらに、「武士たる者が美しく咲いた以上は、見事に散らせるのも情けのうち。武士の大刀は敵の為に、小刀は自らのためにある。」と武士の道徳について語り、これに七兵衛も納得して贈り物を受け取り、これを浪士の切腹にかけて「先生はあっしのために”自腹”をきって下さった。」のオチで終わります。
・・・目出度くも有り、目出度くも無し・・・
仕官とは、浪人中の武士が大名などに召し抱えられて仕えることを意味しますが、ここで疑問なのが、浪人中も武士の身分かどうかです。
若し、浪人は武士では無いのなら、人を騙しても「武士道に外れる事は無い」ので、問題は無いのですが、浪人も武士身分ならば、商人を騙したうえに、その商人に救われる武士は「小刀」ものです。
徂徠が武士ならば、そして七兵衛に恩を感じているのなら、四十七士に対する裁定は自分も含めて「自ら決せよ」だと思います。
落語は「オチ」が面白ければ作り話でも良いのですが、史実としては「徂徠」は赤穂事件を的確に裁定しているようです。
① 浅野内匠頭は幕府に処罰されたのであって、吉良上野介に殺されたわけではないので、吉良は赤穂浪士にとって「君の仇」ではなく、内匠頭の行為も先祖の事を忘れた不義の行為とし、赤穂浪士の行動は、同情の憐みを禁じえないものの、「君の邪志」を引き継いだものだから「義」とは認められないとしています。
② それでも、赤穂浪士の行為は、将軍が政務の第一に挙げている忠孝の道にかなったものだから、打ち首という盗賊同様の処分に処すべきではないとし「切腹を賜れば赤穂浪士の宿意も立ち、世上の示しにもなる。」と示した結果、綱吉は大いに喜び、一転して切腹に決まったとされています。
② それでも、赤穂浪士の行為は、将軍が政務の第一に挙げている忠孝の道にかなったものだから、打ち首という盗賊同様の処分に処すべきではないとし「切腹を賜れば赤穂浪士の宿意も立ち、世上の示しにもなる。」と示した結果、綱吉は大いに喜び、一転して切腹に決まったとされています。
①と②では、結論は矛盾していて、徂徠の「無銭飲食」と同じです。落語の「徂徠豆腐」では、徂徠の裁定は「大岡裁き」と判断している様ですが、腑に落ちません。
四十七士の仇敵は幕府だと思います。
綱吉公の裁定に対する不満がその根本にあります。
https://blog.goo.ne.jp/mobilis-in-mobili/e/8548d4f382aae01108eeb93ef2f44d20
そうだと思って、「四十七士の仇敵は幕府だと思います。」と書きました。
四十七士が本当の「義士」ならば、江戸に討ち入りすべきです。二・二六事件のように。