僕が子供の頃は家の周囲には松林があった。道路は未舗装で馬糞が落ちていた。
家の前には用水路があり、季節になると蛍が飛んで綺麗だった。
夜空を見上げると天の川が見えた。
人家はまばらで、霧島が大きく見えた。
僕の家には畑があり、親父が趣味でいろんな作物を育てていた。
畑で遊ぶのは楽しかった。
家の東側の窓からはティラノサウルスのような形をした木々が見えた。
僕はそれを怪獣の森と名付けていた。それは遠い思い出だ。
怪獣の森/ヨシヒサ
窓の外に怪獣の森が見えた 向こう側には行けなかった
外に出ると土埃が舞った 着ている服は泥だらけになった
縁側で気持ちよさそうに 白猫のシロが眠っていた
土の上では小さな蟻たちが 列をなして行進していた
遠い記憶 遠い人たち 遠い思い出 何もかもが
はるか向こうに 消えていく
僕の顔に強い日差しが照り付け じりじりと皮膚を焦がして
外の水道の下の洗い桶には 大きなスイカが冷えていた
畑を耕す鍬の音が聞こえる 庭を駆け回る子供たち
僕は汗にまみれて ただすべてを眺めていた
遠い記憶 遠い人たち 遠い思い出 ありがとうの
言葉を言う 間もなく
何もかもが 過ぎ去り 消えていく
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