セレクション柳人11 野沢省悟集より
第一章 今生
光年の雪降る 瞳から瞳
傘の中に雪をふらせる西行と
掌の茶碗ときどき海へ行くらしい
亀裂渦舌髪睫毛夜の夜
潮騒や頬紅き娘を捨てて来て
目で食べるもののひとつに妻の指
海を泳ぐピアノ一台掬おうと
鏡の裏の桜を見てはいけません
桃があり指から生えてくる画鋲
てふてふが一瞬かわく家裁前
しぶしぶと銀行へゆくしゃぼん玉
梅雨に濡れ無声映画にまぎれ込む
四十歳にきびつぶしている海月
じゃが芋ににじむ色気をどうしょう
コスモスは白から咲いて川ひとすじ
蕎麦の花ばあさんふたりじじひとり
笑窪なき牛乳瓶と時雨れるか
きりぎりす忘れた頃に手を洗う
以下省略
第一章 今生
光年の雪降る 瞳から瞳
傘の中に雪をふらせる西行と
掌の茶碗ときどき海へ行くらしい
亀裂渦舌髪睫毛夜の夜
潮騒や頬紅き娘を捨てて来て
目で食べるもののひとつに妻の指
海を泳ぐピアノ一台掬おうと
鏡の裏の桜を見てはいけません
桃があり指から生えてくる画鋲
てふてふが一瞬かわく家裁前
しぶしぶと銀行へゆくしゃぼん玉
梅雨に濡れ無声映画にまぎれ込む
四十歳にきびつぶしている海月
じゃが芋ににじむ色気をどうしょう
コスモスは白から咲いて川ひとすじ
蕎麦の花ばあさんふたりじじひとり
笑窪なき牛乳瓶と時雨れるか
きりぎりす忘れた頃に手を洗う
以下省略