はじめに
高齢化が進む
日本では、
相続対策の
重要性が
増している。
特に、
子どもがいない
高齢者にとって、
養子縁組は
有効な選択肢の
1つとなり得る。
しかし、
養子縁組は
法的な手続き
だけでなく、
家族間の
感情的な問題も
絡んでくるため、
慎重に進める
必要がある。
養子縁組とは?
養子縁組とは、
血縁関係のない
人間同士が法的に
親子関係になる
制度である。
養子縁組には、
主に
「普通養子縁組」
と
「特別養子縁組」
の、2種類がある。
➀普通養子縁組
戸籍上の表記は
養子・養女となり、
縁組の成立は
養親と養子の
合意があれば
可能で、
実親との
親子関係も
継続する。
また、
子どもの年齢は
養親よりも
年長でない事が
条件となり、
離縁の場合は
養親と養子の
協議で可能で
ある。
➁特別養子縁組
家庭環境に
恵まれない
子どものための
制度で、
実親との
親子関係が
解消される。
戸籍上の表記は
長男・長女で
子どもの年齢は
原則15歳未満で
ある。
縁組の成立は
家庭裁判所が
決定し、
離縁は、
原則として
認められない。
一般的に
高齢者の
相続対策
として、
利用されるのは
主に、
普通養子縁組
である。
高齢者の養子縁組の目的
高齢者が
養子縁組を
する目的は
主に、
以下の2つで
ある。
➀相続対策
子どものいない
高齢者が、
養子縁組に
よって
法定相続人を
増やし
相続税負担を
軽減する。
➁老後の支え
養子に財産を
譲ることで
老後の生活を
支えてもらう
ことを期待する。
高齢者の養子縁組の事例
今回紹介する
事例は、
80代男性が
50代の甥と
普通養子縁組を
したケースで
ある。
この男性は、
1人息子を
亡くし、
妻と
2人暮らしで
あったが、
自分が
亡くなった後の
遺産や
事業の承継を
考えて、
養子縁組を
決意した。
このように
高齢者の
養子縁組は
相続対策だけで
なく、
老後の生活を
安定させる
ための
手段としても
活用されて
いる。
普通養子縁組の手続き
普通養子縁組の
手続きは、
比較的簡単で
ある。
養親と養子の
合意があれば
原則として
家庭裁判所の
許可は不要で
ある。
ただし、
養子が未成年の
場合は、
家庭裁判所の
審判が必要と
なる。
養子縁組の注意点
養子縁組は、
相続対策として
有効な手段で
あるが、
いくつかの
注意点がある。
➀トラブル
金銭が
絡むだけに
親族間で
トラブルが
起きやすい。
事前に
家族や関係者と
よく話し合って
おくことが
重要である。
➁離縁
離縁には
養親と養子の
合意が必要で
合意できない
場合は
家庭裁判所の
調停や裁判が
必要になる。
③相続税
養子縁組に
よって
法定相続人が
増えると、
相続税の
基礎控除額が
増えるが、
実子がいる
場合は
養子の数は
1人まで、
実子がいない
場合は
2人までに
制限されて
いる。
また、
養子となった
孫は
相続税が
2割加算される。
以下に例を示す。
相続遺産が
5000万円で
法定相続人が
子ども1人の
場合。
相続税の
基礎控除は
3000万円
+
600万円×
法定相続人の数
となるので
計算すると、
3000万円
+
600万円×1人
=3600万円
となる。
この場合は、
5000万円
-
3600万円
=1400万円
が、
課税対象となる。
また、
この方が、
1人と
養子縁組した
なら、
法定相続人が
2人となるため
基礎控除額が
3000万円
+
600万円×2人
=4200万円
となる。
この場合は、
5000万円
ー
4200万円
=800万円
が、
課税対象額
となる。
養子縁組を
する事で
1400万円
ー
800万円
=600万円
600万円分が
課税対象額から
減る事になり、
節税対策と
しては
有効な手段
と、考える
高齢者の方が
多いのである。
専門家からのアドバイス
弁護士は、
「養子縁組は
慎重に考える
べきだ」
と、アドバイス
している。
養子縁組を
した後で
自分が考えて
いた親子像と
実際の親子の
対応に
ギャップを
感じる
高齢者は
少なくない。
不安が
生じないよう
十分に考えて
おくべきである。
また、
税理士は
「養子縁組を
する場合は
もともとの
法定相続人
にも
しっかりと
説明し、
関係者全員が
納得した上で
行えば
相続トラブルを
回避できる」
と指摘している。
生前贈与の活用
相続対策と
しては
生前贈与も
有効な手段
である。
しかし、
生前贈与加算の
期間が、7年前に
延長された事で
その効果は
薄れた
と言われている。
総合
高齢者の
養子縁組は
相続対策や
老後の支え
として
有効な手段で
あるが
慎重に進める
必要がある。
事前に
家族や関係者と
よく話し合い、
専門家にも
相談して
貰いたい。
<確認知識>
➀養子縁組は、
戸籍に記載
される。
➁養子は、養親の
扶養義務を負う。
③養子は、
養親の財産を
相続する権利が
ある。
重複するが、
養子縁組は、
高齢者にとって
重要な決断で
ある。
後悔のない
選択を
するために、
十分に
情報収集し、
専門家には
必ず相談して
貰いたい。