【社説②】:コロナ後の中国 懸念される社会の萎縮
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:コロナ後の中国 懸念される社会の萎縮
高い経済成長を続けてきた中国が「コロナ後」、明らかに元気がない。経済がふるわない背景には規制強化に端を発する不動産バブルの崩壊があるが、3年にわたった強権的な「ゼロコロナ政策」の下で、厳格な統制を続けたことが若者を中心に社会を萎縮させ、活力をそいでいるように映る。
中国国家統計局が、先月発表した2023年の国内総生産(GDP)成長率は実質で前年比5・2%増だった。中国政府が掲げた、低めというべき当初目標の「5%前後」をどうにか達成した。
厳格な行動制限を伴う「ゼロコロナ政策」の終了によって消費は一定程度、回復。統計局担当者は「中国経済は好転し、就職や物価も安定している」と、楽観的な見方を示したが、中国経済は高速鉄道建設などのインフラ投資に支えられているのが実情だ。
コロナ前から成長の柱だった不動産開発の投資額は前年比9・6%減で、2年連続でマイナス。デフレ懸念もくすぶり、先行きには悲観的な見方が広がっている。
中国社会に目を向けると「ゼロコロナ」の間の政府の強権的かつ画一的な統制が社会を萎縮させ、「事なかれ主義」がまん延したようにも見える。中国メディアは競争に背を向けた「寝そべり族」や、なるべく消費しない「不買族」と言われる若者の増加に警鐘を鳴らしている。特に「家を買わない、結婚しない、子供を持たない」という人生観を持つ「寝そべり族」の増加は少子高齢化を加速させ、将来の国力にも大きなダメージを与えかねない。
統計局は昨年7月分から取りやめていた若者の失業率の発表を再開し、同12月の16~24歳の失業率は14・9%だった。同6月は過去最悪の21・3%。大学生を含めない集計法に変更したため失業率は改善したかに見えるが、若者、特に大学生が中国という巨大なパイの縮小に苦しんでいる実態が逆に浮き彫りになったともいえる。
中国政府は22年末、若者らの抗議運動で「ゼロコロナ」撤廃に追い込まれたが、「人々の命と健康を守り、決定的な勝利を収めた」と自画自賛。その後も新たな反スパイ法や愛国主義教育法制定など共産党支配の徹底を図っている。
規制強化を嫌い海外に移住するIT企業経営者などの富裕層も増えている。締め付け一辺倒を見直す時期ではないか。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月15日 07:55:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。