石ころ

辛い嘘 


主人の父は体が弱くて絶えず病院に通っていた。入院も度々だったので、病院を変わったから、検査の結果を聞きに行くようにと頼まれても、それが大変な結果を聞くことになるとは思っても見なかった。

病院に行くと、父は心配そうにしていたが、いつも神経質で病気を恐れていたので、私はあまり気にも留めなかった。なにしろ絶えず病院で診てもらっていたから、酷いことになるはずがないという思いがあった。

医師の前に立った時も、私はまだ事の深刻さが分かっていなかった。医師は切り口上で、父の肺ガンという病名と、このままなら余命6ヶ月、手術ををするなら直ぐにがんセンターに行くようにと言った。

私は激しいめまいを感じて、まともに立っていることが出来ず、頭は真っ白になった状態で質問することも出来なかった。ぼんやりとした状態で医師の説明を聞き終え、部屋を出てわけもなく階段を上り廊下を歩き回った。とにかく父に会わなければならないことが本当に恐怖だった。「イエス様助けてください!」と叫んだ。

病室に向かって歩いた。出来ることならこのまま逃げて帰りたかった。父は恐がりなのに、今、怖がらせることだけはしたくないと思った。廊下の向こうに父の姿を見た時、とても不思議なことが起こった。なぜ笑うことが出来たのか分からないけれど、自然に笑うことが出来た。父と目があった瞬間私は笑っていた。その後どんなことを話したのかは覚えていない。本当に必死に「様子を見るようです」というようなことを言ったのだと思う。

父は、末期には母の介護によって、診療所から来て下さる医師の診察を受けつつ、自宅で静かに過ごして最期を迎えた。

父に最期までガンを告知しなかったために、がんセンターにも行かず手術をしなかったことで、今も主人と共に心を痛めることが時々ある。「本当に最善だったのだろうか」と考える。結局父をだましていたのだから・・・。

私は先日、尊厳死協会の書類を取り寄せ、自分のために備えておこうと思った。子供達に重荷を負わせたくないから。まだ、手続きが進まないのは、主人を誘いたいからなので、それはちょっと微妙なので手間取っている。

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