父は、徴用先の会社にて私が四歳の時に亡くなった。東海大震災で亡くなったと聞いた。そして私に、ただ一枚の振り袖が残された。12月生まれの私の誕生石、トルコ石のような水色に、大小の蝶が群れている刺繍のとても豪華な振り袖だった。戦争に突入しようと言う頃、「もう、贅沢が許される時代ではなかったのに」と親戚の人は驚いたと言っていた。
私には、その振り袖を着て撮った写真はない。ただ、母が畑仕事に行っている間に、タンスから真っ赤に金箔を散らした長襦袢を出しては、お姫様ごっこをして遊んだ事を良く覚えている。着物の方は、子供心にもさすがにおもちゃにはできない雰囲気があった。
長襦袢も、いつもきちんとたとう紙に包まれていたけれど、それを引っ張り出しては毎日のように遊んだ。今、体の弱い母にとって、疲れ果ててそれを仕舞うのは大変だったのではないかと思う。なのに、なぜか母はそのことで私を叱ることは一度もなかった。
母も亡くなり、振り袖が何処に行ったのか私は知らない。記憶の中だけの物になってしまった。でも、父の愛の形として鮮明に心に残っている。父がどんなに私を愛していたか・・・父はどんなに私の振り袖姿を見たかったか・・・どんなに抱きしめていたかったか・・・私は知っている。
二人の子供はどちらも理系。父も飛行機の技術を学んでいたと聞いた。同じDNAが刻まれている。私さえも写真でしか知らない父が、私の子供達の中に刻まれている部分がある。神様の深い慰めを感じた。
私たちの主イエス・キリストの父なる神、慈愛の父、すべての慰めの神がほめたたえられますように。聖書
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