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石ころ

息子のアルバイトのこと

 今年は何かと忙しく、ゆっくりいつものウオーキングコースを歩くことも出来なかった。久しぶりにいつものコースを歩いてみれば、なんと野山は花盛り。ウグイスはまだぎこちない鳴き方だけれど、それなりに鳴いている。「がんばれ!」

桜の花は一日違いで満開になっていた。ソメイヨシノは華やかだけれど、チラホラ咲き始めた山桜には楚々とした風情がある。真っ黄色いラッパ水仙に菜の花、レンギョウ、タンポポ、本当に春は黄色い花から始まる。ああ、ミモザも見事に咲いていた。

 コースの途中に、椎茸木を山と積み上げて作業をしている人がいる。これは、雑木に椎茸の菌を植える作業。長男には大学生時代、1年分の小遣いを稼ぐための重要な仕事だった。なにしろ我が家で出してやれたのは、学費と本代くらいだったから。

 主人が働き出した長男を心配して、そっと見に行ったことがあった。「あいつはすごいわ。見事に手早くやっていたよ。」誇らしげにその様子を話してくれた。
椎茸の原木は生木で大変重くて重労働でもあるし、木に穴を空けて、菌を詰めるには素早い動作が求められる。

でも、男は一度は力仕事をした方がよいと私は思っていた。彼は情報関係なので,たぶん一生デスクワークになると思えて、アルバイトは、体を使う仕事をすることに賛成だった。

 ある日、長男を連れて椎茸屋の奥さんが血相を変えて玄関に飛び込んで来られ「大事な息子さんに怪我させてしまって、本当に申し訳ないことをしました。」と、平謝りに謝られた。
側に立っている長男の腕には、痛々しく包帯がグルグルに巻かれていた。機械に服の袖が巻き込まれて、腕を傷つけてしまったとのこと。

病院でちゃんと治療を済ませて送ってくださったのだった。それからも手厚く面倒をみてくださった。幸い怪我は大したことはなく、腕には傷が残っているけれど、今では勲章のようにも見える。男だものね、傷のひとつくらいね・・。

今でも、そのお家の人たちに出会うと「息子さんはお元気ですか」と親しく話しかけてくださる。大事に使ってくださったし、長男も精一杯汗をかいて働いたお付き合い。

 この季節、椎茸木の山や機械の音を聞くとその頃のことを思い出す。その長男も今では2児の父。彼にはほとんど優しくできなかった・・。でも、孫を目に入れても痛くないほどに、優しく育てていることが嬉しい。

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