聖なる黒夜～柴田よしき

　山内の命の恩人である大物ヤクザの殺人事件を縦糸に、若き山内が陥った冤罪の罠、麻生の失われた愛の記憶や山内の壮絶な刑務所生活などがカットバックの技法で交互に描かれます。
　謎解きとしてもそれなりに面白く、「石橋の龍」こと麻生刑事の徹底的な積み上げ方式の捜査過程などもしっかり描かれ読ませます。
　しかし濃い！　なにがって、本編に登場する男たちの「愛情関係」が、である！
麻生は後日、「ＲＩＫＯ」シリーズ第２弾「聖母の深き淵」で山内を助けるために罪を犯すほどの人ですので（そういう関係になることは）わかっていたのですが、山内をとりまく多くの男たちとも（そういう関係に）なっているのです。また麻生は大学の先輩ともかつて・・・
　その手の話が少し多すぎ？　一方麻生の人生観・諦観と人となりは魅力十分。
緑子以上の人気があるという話はよくわかります。
　いずれにしても「ＲＩＫＯ」シリーズのサイドストーリーと考えると大きな間違えです。本作こそむしろ大河の主流と言ってもいい堂々たる本格長編でした。