AORな日々をあなたに

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ノルウェイの森~村上春樹

2010-09-18 23:53:01 | 

 久しぶりに本の感想を書きたくなりました。20年以上ぶりに読んだ村上春樹さんの代表作です。

 まもなく映画も公開されるそうで、再びブームになりそうですね。20代!のころ、何冊か彼の本を読みましたが、なぜかこれは読んでなかったのです。

 読み終わったときの衝撃、というか深い孤独の悲しさのようなものに打ちのめされた感じがしばらく尾を引きました。それは、ホントに最後の部分、ワタナベ君が公衆電話から緑に電話する13行程度に凝縮されたカオスと孤独に圧倒されたからです。

 それまでのストーリーの流れから、何となくワタナベ君の「再生」を期待していたのが見事に裏切られたからだと思います。やや図式的に描くと、主人公のワタナベ君を中心に、「死の世界」を表出する直子とキズキ、「生の世界」を代表する緑がいて、主人公が色々な経験をしながら、船先案内人のようなレイコさんの力を借りて、何とか「生の世界」に踏みとどまる、という流れをなんとなく想像していたのです。

 なぜなら、後半のレイコさんとの再会、直子へのレクイエムとなる二人きりのお葬式(50曲の演奏!)と直子の服を着たレイコさんとの交情などの過程が、ワタナベ君が死の誘惑から脱却する儀式(通過儀礼)のように描かれていたからです。

 ところが・・・・勢い込んで緑に電話したワタナベ君に緑は言うのです。「あなた、今どこにいるの?」・・・その言葉を契機に再び彼は混乱と孤独の渦に逆戻りしていく、いやもっとひどい状況に堕ちこんでいく場面で、小説は終ります。

 この、終り方、ずーっと昔に読んだ夏目漱石(「それから」だったかな?)を思い出させました。確かその作品でも最後に主人公が、町の中で頭の中に赤い色がぐるぐる回るようなコンフュージョンを感じて話が終ります。夏目漱石と村上春樹の比較論などとても述べることはできませんが、いずれも世紀末の混乱と新世紀への漠然とした不安を描いた作家であることでは共通点があるのでしょうか?

 とはいうものの、小説全体の雰囲気というか色彩は、とても気に入りました。とにかく静謐なんです。そして落ち着いた淡々とした表現は好きです。

 そして、はるか遠くに過ぎ去った青春の思い出、というより脆さ・危うさの感覚が何となく懐かしかった!「僕は強くならなくてはならないのです」という主人公の台詞は、よく自分も口走っていたような気がします。

 それししても、ビートルズの数々の名曲のうちこの「ノルウェイの森」を題名に選んだセンスは、すごいと思います。先日カラオケで歌って!みましたが、この曲ほどメリハリを付けにくい平板・静かな曲はあまりないと思います。最近、この曲を含む傑作「ラバーソウル」の聴取回数が増えているのは言うまでもありません。それから、30年ぶりにギターがひきたくなったのも・・・・

  



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