新古今和歌集の部屋

読癖入清濁付伊勢物語 二十五段〜三十三段 蔵書

西洞院時直筆 花にあかぬ歎はいつもせしかどもけふのこよひににる時はなし

二十九段

 

 

 

 

 

 

 

 

廿五昔男有けり。あわじともいはざりける、女のさすが成けるがもとに、いひやりける
古今         あさ そで
  秋の野にさゝわけし朝の袖よりもあはでぬる夜ぞひぢまさりける

いろごのみなる女かへし

古今
  みるめなきわが身をうらとしらねばやかれなであまのあしたゆくくる
                         わひ     へんじ
廿六昔,男,五条わたり成ける女を,えずと成にける事と,侘たりける人の返事に
新古今    そで
  おもほへど袖にみなとのさはぐかなもろこしぶねのよりしばかりに
            ひとよ
廿七むかし,男,女のもとに,一夜いきそ,又もいかず成にければ,女の手あらふ所

に、ぬきすをうちやりて、たらいのかげに見しけるを、みつから

  わればかり物おもふ人は又もあらじとおもへば水の下にも有けり

と、よむをこさりける。をとこたちきゝて
       われ
  みなくちに我やみゆらんかはづさへ水のしたにてもろこゑになく

廿八むかし、色ごのみ成ける女、出ていにければ

 などてかくあふごかたみに成にけん水もらさじとむすびし物を
   とうくう             めし
廿九昔春宮の女御の、御かたの花の賀に召あづけられたりけるに
                            とき
  花にあかぬなげきはいつもせしかどもけふのこよひによる時はなし

三十むかし、おとこ、はつかなりける、女のもとに


新古今和歌集 卷第十五 戀歌五
 題しらず       よみ人知らず
おもほえず袖に湊の騒ぐかなもろこし舟の寄りしばかりに

読み:おもおえずそでにみなとのさわぐかなもろこしふねのよりしばかりに 有定隆雅 隠

意味:貴方からの優しい言葉に、思わず袖に涙があふれてきて、まるで湊に大きな唐舟が来たことからとても騒がしくなった様に動揺しています。※多数異訳あり

備考:伊勢物語 二十六段 八代集抄 新古今集注

 

新古今和歌集 卷第二 春歌下
 題しらず      在原業平朝臣
花にあかぬ歎はいつもせしかども今日の今宵に似る時は無し

よみ:はなにあかぬなげきはいつもせしかどもきょうのこよいににるときはなし 定隆雅 隠

意味:花を見て、名残惜しいと思う歎きは何時もするのですが、今日の今宵ほど名残惜しいと思う時はありません。

備考:伊勢物語廿九段。時代不同歌合 八代抄 俊成三十六人歌合

  あふ事は玉のをばかりおもほえでつらきこゝろのながくみゆらん
      みや
卅一むかし、宮の内にてある、ごたちのつぼねのまへをわたりけるに、何の
            くさば
あたにか思ひけん、よしや草葉よならん。さがみんといふ男

  つみもなき人をうけへばわすれぐさをのがうへにぞおふといふなる

と、いふをねたむ女もありけり

卅二むかし、物いひける女に、としごろありて

  いにしへのしづのをだまきくりかへしむかしを今になすよしもかな

と、いへりけれど、なにともおもわずやありけん

卅三むかし、をとこ、つの国、むばらのこほりにかよひける女、此たびい

きては、又はこじとおもへるけしきなればをとこ
万葉
  あしべよりみちくるしほのいやましき君にこゝろをおもひますかな
かへし
  こもりゑに思ふ心をいかでかはふねさすさほのさしてしるべき

ゐ中人のことにては、よしや、あしや


新古今和歌集 卷第十五 戀歌五

 中納言家持に遣はしける 山口女王
あしべより滿ち來る汐のいやましに思ふか君が忘れかねつる

よみ:あしべよりみちくるしおのいやましにおもふかきみがわすれかねつる 定雅 隠

意味:葦辺から汐が満ち、徐々に増えて来るように、貴方の事が忘れられなくなっています。

備考:万葉集巻第四 相聞 617。伊勢物語三十三段に類歌がある。

山口女王贈大伴宿祢家持歌五首
従蘆辺 満来塩乃 弥益荷 念歟君之 忘金鶴

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