新古今和歌集の部屋

湖月抄 藤袴 源氏の考え2

さまにぞしたがふべき。女は三にしたがふもの
              抄細両説也
にこそあるれど、つゐでをたがへて、をのが心に
まかせんことは、あるまじきことなりとの給。
又夕霧の詞也。内大臣の内々にて女御のの給ふとの心也
うち/\にやむごとなき是かれとしごろ
へてものし給へば、えそのすぢの人かずに
                          内大臣に玉かづらを也
は物し給はですてがてらにかくゆづりつけ、
                         ろうせん イ
大ぞうの宮づかへのすぢにらうろうぜん
  源の
とおぼしをきつる。いとかしこくかどあるこ
            或本よろこびの字なし。可然歟
となりとなん、よろこび申されけると、たし
                         夕霧の躰也
かに人のかたり申侍しなりと、いとうるはし
                     源の心也。さやうぞをし
きさまにかたり申給へば、げにさは思ひ給
はかるらんと源もおぼす也              源の詞也。曲之
らんかしとおぼすに、いとおしくて、いとまが
                              正直になき也
頭注
女は三にしたがふ
礼記に婦人は從人者
也。幼即從父兄嫁則
從夫夫死從子。註云
從謂順其教令云々。
此殿いさゝか心得がた
き所なり。三從の儀な
らば、源氏も養父なれ
ば玉かづらのしたがひ給
べけれど、又實父あり、養
の心に任せ侍らば次第
たがひぬべしとの給ふ也。
あなれどゝいふ詞にて此
心見ゆ。
ついでをたがへて 抄是は源
の玉かづらと実事なき
事を心にこめての給ふ也。
すでに内大臣の推量の
ごとくならば、我まゝにこそ
すべけれれども、さはなけれ
ば今は實父次第にて
よかるべしと也。細今は
内大臣の義にこそ従ふ
べけれ。其次第をたがへて
頭注
をのが心のまゝにはいかゞと也。をのが心とは源のみつらの給ふ也。
うち/\ににも 細花孟本如此。本ははうちにもとあり、師ちゞのおとゞの心を夕
霧の源氏にかたり給詞也。哢内とは六条院のうちに、御思人たちのおほき事也。
うち/\にもといふ本もあり同心也。
そのすぢの 紫上などの御かた/"\の数にはなずらへがたきと也。
おほそうの宮仕 細かく宮仕に出し給ふ事は玉鬘の下心をばをしこめてし給
ふ事と内大臣方にはの給ふ也。
らうろう 牢篭也。鳥ハ篭に入、獣を牢に入たるがごとくと也。花哢同義。こゝの心もを
しこめたる義也云々。おほぞうの宮仕へとは、尚侍は不断禁中に伺候せね共なる
職也。玉鬘君にても見えたり。又女御更衣などのやうに、必ず寵を蒙るべきにても
なし。をもてむきをば尚侍になしと里亭に置て源の物にせんとし給ふと内大臣かたの
推量也。籠の心もよく相叶歟。
よろこび申されけると 真実の悦㐂にはあらざる也。内府のうはべばかり也。義同。
 
まがしきすぢにも思ひより給ひけるかな。い
内大臣の心習ひと也。世間に心をまはす也
たりふかき御心ならひならんかし。今をのづ
                      證據の見ゆる事あるべしと也
からいづかたにつけても、あらはならんこと
                                夕霧の心也
ありなん。思ひぐまなしやとわらひ給。御氣色
                   野分の朝見給ひし事あれば也。
はけざやかなれえど、猶うたがひはおほかる。おとゞ
頭注
思ひぐまなしや かくるゝ
所もなきと也。至ぬかた
なきまで人のおもふといふ
心也。

樣にぞ従ふべき。女は三つに従ふものにこそあるれど、次ゐでを違
へて、己が心に任せん事は、あるまじきことなり」と宣ふ。
「内々に、止む事無きこれかれ、年頃経てものし給へば、えその筋
の人数には物し給はで、捨てがてらにかく譲りつけ、大ぞうの宮仕
への筋に牢籠(らうろう)ぜんとおぼし置きつる。いと賢くかどあ
る事なりとなん、喜び申されけると、確かに人の語り申し侍しなり」
と、いと麗しき樣に語り申し給へば、
「げに、さは思ひ給ふらんかし」とおぼすに、いとおしくて、
「いとまがまがしき筋にも思ひ寄り給ひけるかな。いたり深き御心
ならひならんかし。今、自づから、いづ方につけても、あらはなら
ん事有りなん。思ひ隈(ぐま)無しや」と笑ひ給ふ。御気色は、け
ざやかなれえど、猶疑ひは多かる。大臣
 
 
おほぞうの宮仕へとは~ 「らうらう」の注ではなく、前段の「おほぞうの宮仕」の注であろう。
 
※思ひ隈無しや 河海抄は
後撰集恋三
 あひ知りて侍りける女の、心ならぬやうに
 見え侍りけれはつかはしける
                 藤原後蔭朝臣
いづかたに立ち隠れつつ見よとてか思ひぐまなく人のなりゆく
を引歌とする。
 
略語
※奥入 源氏奥入 藤原伊行
※孟 孟律抄  九条禅閣植通
※河 河海抄  四辻左大臣善成
※細 細流抄  西三条右大臣公条
※花 花鳥余情 一条禅閣兼良
※哢 哢花抄  牡丹花肖柏
※和 和秘抄  一条禅閣兼良
※明 明星抄  西三条右大臣公条
※珉 珉江入楚の一説 西三条実澄の説
※師 師(簑形如庵)の説
※拾 源注拾遺
 
 
 
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