ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

後沢溜池

2023-10-11 17:00:00 | 山梨県
2016年2月27日 後沢溜池
2023年7月29日
 
後沢溜池は山梨県甲斐市牛句の富士川水系荒川右支流亀沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
もともと荒川沿岸には30余カ所の灌漑用取水堰が設けられていましたが、1930年(昭和5年)に甲府市が上水道事業拡張のため荒川からの取水量拡大を決めたことで、既得取水権としての灌漑用取水に棄損が生じることとなりました。
県はこの補償として県営事業により2基の灌漑用貯水池の建設に着手、1937年(昭和12年)の丸山溜池に次いで1939年(昭和16年)に竣工したのが後沢溜池です。
両溜池はともに受益者で組織された荒川沿岸用水利用組合が管理し、現在は約1600ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
その後池に隣接して敷島総合公園が建設され、池も矢木羽湖公園として湖畔をめぐる遊歩道や親水護岸が整備され地域住民の憩いの場となっています。
後沢溜池には2016年(平成28年)2月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
右岸から下流面
堤高29メートル(ため池データベース)の下流面はきれいに草が刈られています。
手前は洪水吐。
(2023年7月29日)


天端は車道。
周辺には果樹園が広がります。
(2023年7月29日)


上流面
黒い水路パイプは後付けの河川維持放流用。
(2023年7月29日)

 
右岸の横越流式洪水吐
(2023年7月29日)

 
洪水吐導流部
この先に斜水路があります。
(2023年7月29日)

 
下流側から
交差する水路橋は北にある敷島公園からのドレーン水路と思われます。
(2023年7月29日)

矢木羽湖と命名された貯水池は総貯水容量11万2000立米(ため池データベース)
右岸湖岸にはデッキが設置されているほか、湖岸を一周できる遊歩道が整備されています。
(2023年7月29日)

 
上流から。
(2023年7月29日)


湖岸にある案内板
(2023年7月29日)


こちらは初訪時、2月の写真です
対岸の建屋は斜樋
奥には昇仙峡、さらには日本百名山の金峰山をはじめ奥秩父の2500メートル級の山が遠望できます。
(2016年2月27日)


ズームアップ
凝った造りの斜樋建屋。
(2016年2月27日)

 
天端から
下の谷を荒川が流れ、その下流域の甲府盆地に受益農地があります。
(2023年7月29日)


上流面に沿って河川維持放流用のパイプが伸びます。
(2023年7月29日)


蛍の小径と命名された左岸湖畔の遊歩道。
遊歩道沿いに亀沢川が流れ、ここから維持放流用のパイプが伸びます。
(2023年7月29日)


蛍の小径沿いの斜樋建屋。
(2023年7月29日)


0964 後沢溜池(0243)
ため池データベース
山梨県甲斐市牛句
富士川水系亀沢川
22.7メートル(ため池データベース 29メートル)
115メートル
213千㎥(ため池データベース 112千㎥)/213千㎥
荒川沿岸用水組合
1939年

広瀬ダム

2020-06-27 15:00:00 | 山梨県
2015年10月24日 広瀬ダム
2020年 6月23日
 
広瀬ダムは山梨県山梨市三富川浦の富士川水系笛吹川上流部にある山梨県県土整備部が管理する多目的ロックフィルダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、笛吹川の洪水調節、笛吹川流域果樹園地への灌漑用水の供給、甲府市・山梨市・笛吹市・中央市・市川三郷町への上水道用水の供給、山梨県企業局広瀬・天科・柚ノ木各発電所での発電を目的として1975年(昭和50年)に竣工しました。
発電所については広瀬ダムの建設にともない従来当流域で発電を行っていた東京電カ笛吹川第1、第2、第3各発電所(合計最大発電力8800キロワット)を買収廃止する一方、新たに山梨県企業局広瀬発電所(最大3200キロワット)、天科発電所(最大1万3300キロワット)、柚ノ木発電所(最大1万7900キロワット)を新設し発電能力の大幅な増強が行われました。
さらに2007年(平成19年)には支流の琴川に琴川ダムが竣工、同ダムと連携した洪水調整が行われるようになり笛吹川流域の防災能力は大きく強化されています。
 
山梨市中心部から国道140号線(通称雁坂みち)を北上、川浦温泉を過ぎると正面に広瀬ダムが見えてきます。
まずはダム下へ向かいます。
広瀬ダム手前の国道140号線の洞門左手の側道に入ると正面に洪水吐斜水路が現れます。
ダムの堤体は地山を挟んだ左岸側(向かって右手)にあり、フィルダムで散見される堤体と洪水吐導流部が地山を挟んで離れているタイプのダムです。
(2020年6月23日)
 
さらに進むとロックフィル堤体直下に到着します。
堤体は左岸(向かって右手)が不規則に湾曲しています。
(2020年6月23日)。
 
国道140号に戻り雁坂トンネル方向に向かうとすぐにダムサイトの広瀬湖駐車場に到着します。
駐車場の目の前に山梨県企業局広瀬発電所への取水塔。
 
左手を向くと堤体の先に常用洪水吐となる2門のローラーゲート。
(2020年6月23日)
 
洪水吐とインクラインの並び
昭和40年代の着工と言うことで、洪水吐は横越流式洪水吐とゲート式の併用です。
(2020年6月23日)
 
インクラインをズームアップ。
 
天端から見た下流面
白い建屋は山梨県企業局広瀬発電所、2枚目の写真は発電所右手から撮ったものです。
 
右岸から見た下流面
リップラップは不規則に湾曲しているので、なんとなく不安定に見えてしまいます。
(2020年6月23日)
 
ダム湖と取水塔
広瀬湖と命名されたダム湖は総貯水容量1430万立米で山梨県内最大の人工貯水池です。
ダムの奥に聳えるのは埼玉県との境界をなす破風山でその右手が日本三大峠の一つ雁坂峠。
 
洪水吐導流部
2門のスライドゲートからの導流部に右手から横越流式洪水吐の導流部が合流、この先が1枚目の写真の斜水路となります。
(2020年6月23日)
 
非常用の横越流式洪水吐。
(2020年6月23日)
 
ダム右岸は公園として整備されています。
ローラーゲートは高さ15.6メートル、幅6.525メートルの巨大ゲート
ピアには切妻家形の建屋が乗り、プチカントリーエレベーターと言った風。
 
(追記)
広瀬ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0971  広瀬ダム(0022) 
山梨県北杜市三富川浦
富士川水系笛吹川
FAWP
75ートル
255メートル
14300千㎥/11350千㎥
山梨県県土整備部
1974年
◎治水協定が締結されたダム 

琴川ダム

2020-06-27 13:00:00 | 山梨県
2015年10月24日 琴川ダム
2020年 6月23日
 
琴川ダムは山梨県山梨市牧丘町柳平の富士川水系笛吹川右支流琴川上流部にある山梨県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、笛吹川本流の広瀬ダムと連携した琴川および笛吹川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への灌漑用水補給、峡東地域広域水道事業団を通じた山梨市・甲州市・笛吹市への上水道用水の供給、山梨県企業局琴川第三発電所での最大1100キロワットのダム水路式発電を目的として、2007年(平成19年)に竣工しました。
 
琴川ダムは天端標高1464メートルとなっており、多目的ダムとしては日本で最も高所にあるダムとなっています。
また完成当初より『開かれたダム』を標榜し、ダム湖畔に遊歩道を設置したほか、山梨県営ダムとしては初めて湖面利用が可能なダムとなっています。
 
琴川ダムには2015年(平成27年)11月に初めて訪問し、2020年(令和2年)6月23日に再訪しました。、
山梨市中心部から国道140号通称『雁坂みち』を北上し、同市牧丘町で『琴川ダム』の標識に従って県道219号を左折し10キロほど進むと琴川ダムに到着します。
ダム下への管理道路は部外者立ち禁のため、ダム下からの展望ポイントはありません。
左岸から
(2020年6月23日)
 
減勢工と放流設備
河川維持放流が行われています。
(2020年6月23日)
 
ダム湖は総貯水容量515万立米
近くの乙女高原から『乙女湖』と命名されています。
 
天端からの眺め
折から周辺の山々ではカラマツの紅葉がピーク
彼方に日本百名山金峰山の五丈岩が遠望できます。
 
天端は徒歩のみ通行可能
(2020年6月23日)
 
右岸から下流面
直線状の堤体導流壁。
(2020年6月23日)
 
右岸高台に展望台があり遊歩道が整備されています。
洪水吐は非常用として自由越流式クレストゲート4門、常用として自然調節式オリフィスゲート1門
ゲート左手に取水設備があります。
 
オリフィスの取水口に流木除けのゲージが取り付けられています。これは2015年に撮影した上の写真にはありませんでした。
(2020年6月23日)
 
展望台までは標高差100メートル近い登りで結構汗をかかされます。
ダム建屋はすべてクリーム色の壁、水色の屋根で統一されています。
これは山梨県営の塩川ダムと同じカラーリング。
(2020年6月23日)
 
左岸の艇庫とインクライン。
 
上流からゲート付近をズームアップ。
 
インレットから遠望
ダムの彼方には大菩薩連嶺が遠望できます。
 
琴川の南側を流れるのが鼓川、それぞれ注ぐのが笛吹川。
皆歌舞音曲に由来する名前です。瀬音が楽器の音に似たとか地元の伝統舞踊に由来するとか言われていますが果たして?
いずれにしても雅な名前の川が集まっています。
 
(追記)
琴川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2914 琴川ダム(0021) 
山梨県山梨市牧岡町柳平
富士川水系琴川
FNWP
64メートル
262メートル
5150千㎥/4750千㎥
山梨県県土整備部
2007年
◎治水協定を締結したダム

荒川ダム

2020-06-27 11:00:00 | 山梨県
2015年10月24日 荒川ダム
2020年 6月23日
 
荒川ダムは山梨県甲府市川窪町の富士川水系荒川上流部にある山梨県県土整備部が管理する多目的ロックフィルダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、荒川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、甲府市への1日最大10万立米の上水道用水の供給を目的として1986年(昭和61年)に竣工しました。
また利水放流を利用して山梨県荒川ダム管理用発電所で最大490キロワットの小水力発電を行っています。
 
荒川ダムには2015年(平成27年)11月に初めて訪問、2020年6月に再訪しました。 
ダムは山梨県を代表する景勝地『昇仙峡』直上に位置し、ダム湖の『能泉湖』は昇仙峡観光の一端を担うスポットです。
 
ダム下流面
ところどころに植物が茂っていますが、直線的で美しいリップラップ。
 
天端は車道ですが関係車両以外通行禁止、ただし歩行者の立ち入りはOKです。
(2020年6月23日)
 
上流面
(2020年6月23日)
 
天端からダム下の眺め
S字状に管理道路が続きますが、この道も関係者以外立ち入り禁止。
(2020年6月23日)
 
旧村名から『能泉湖』と名付けられたダム湖は、総貯水容量1080万立米。
左岸の赤い屋根の取水塔が目立ちます。
 
左岸の取水塔と艇庫・インクライン。
 
洪水吐導流部
高く襟を立てたような導流壁が特徴的。
(2020年6月23日)
 
減勢工をズームアップ
ダム下には非常用、常用低水放流管としてそれぞれジェットフローゲート1条ずつ、計2条を装備しています。
今回は直前にまとまった雨が降ったことで2条のゲートそれぞれ放流されていました。
ゲートからの放流水は副ダムに当てて減勢しています。
(2020年6月23日)
 
非常用の横越流式洪水吐。
(2020年6月23日)
 
上流から遠望
(2020年6月23日)
 
洪水吐と取水塔をズームアップ
1985年(昭和60年)竣工と言うことで洪水吐は横越流式とゲート式の併用
非常用洪水吐として横越流式洪水吐、その右手に常用洪水吐として洪水期用ラジアルゲートと非洪水期用スライドゲートが2門並びます。
(2020年6月23日)
 
洪水吐をズームアップ
 
(追記)
荒川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0973  荒川ダム(0020) 
山梨県甲府市川窪町
富士川水系荒川
FNW
88メートル
320メートル
10800千㎥/8600千㎥
山梨県県土整備部
1985年
◎治水協定が締結されたダム

塩川ダム

2020-06-27 09:00:00 | 山梨県
2015年10月24日 塩川ダム
2020年 6月23日
 
塩川ダムは山梨県北杜市須玉町比志の富士川水系塩川上流部にある山梨県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、塩川の洪水調節、既得取水権としての灌漑用水への補給と安定した河川流量の保持、茅ヶ岳山麓地区520ヘクタールの農地への灌漑用水の供給、峡北地域広域水道事業団を通じた北杜市(旧須玉町・明野町)・韮崎市・甲斐市(旧双葉町)への上水道用水の供給・山梨県企業局塩川発電所で最大1100キロワットのダム式水力発電を目的として1997年(平成9年)に竣工しました。
 
塩川ダムには2015年(平成27年)11月に初めて訪問、2020年6月に再訪しました。 
ダムは増冨温泉や日本百名山の瑞牆山など人気スポットに近く、観光シーズンには塩川ダムが観光のターミナル的な存在になります。
 
ダム下への管理道路は手前で関係者以外立ち入り禁止のためダム下からの展望スポットはありません。
右岸から下流面
左右両岸には堤趾導流壁とフーチングが設けられています。
(2020年6月23日)
 
導流部と減勢工
前日の雨で水位が上昇しオリフィスから越流しています。
減勢工は大きく屈曲。
右手奥の建屋は山梨県企業局塩川発電所、手前は利水放流設備。
(2020年6月23日)
ダム湖は総貯水容量1150万立米
ダム東方にある日本百名山の瑞牆山から『みずがき湖』と命名されています。
(2020年6月23日)
 
左岸から下流面
ガッツリして波返しのついた堤趾導流壁
(2020年6月23日)
 
奥のアーチ橋は『鹿鳴峡大橋』
ダム湖のいいアクセントになっています。
 
上流面と建屋群
ダムの建屋はクリーム色の壁と水色の屋根で統一されています。
円形の建物は県営ダムとしては珍しいダム資料館。
(2020年6月23日)
鹿鳴峡大橋から
円形の建物がダム資料館、奥が大門・塩川ダム管理事務所
ここで大門ダムと塩川ダムを統括管理しています。
(2020年6月23日)
ダム左岸にロックフィルの遮水工があります
一見副ダムのようですが、あくまでも遮水工です。
(2020年6月23日)
 
左岸の遮水工
こうやってみると副ダムのように見えますが、盛り立てをしなくても越水することはないのでダムではありません。
透水性の高い地質を遮水処理するためのものです。
(2020年6月23日)。
湖岸上流側に休憩舎がありちょうどダム上流面を見ることができます。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲートが13門
常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲートが3門あります。
ゲートと取水設備をズームアップ
オリフィスゲートが3門あるのがよくわかります
オリフィス右手はエレベーター棟、さらに右手に取水設備があります。
(2020年6月23日)
 
(追記)
塩川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0974  塩川ダム(0019) 
山梨県北杜市須玉町比志
FNAWP
79ートル
225メートル
11500千㎥/8900千㎥
山梨県県土整備部
1997年
◎治水協定を締結したダム

丸山溜池(千代田湖)

2020-06-26 16:00:00 | 山梨県
2016年2月27日 丸山溜池(千代田湖)
2020年6月23日
 
丸山溜池は山梨県甲府市下帯那町の富士川水系荒川左支流帯那川上流部にある農地防災および灌漑目的のアースフィルダムです。
現地記念碑によればもともと荒川沿岸には30余カ所の灌漑用取水堰が設けられていましたが、1930年(昭和5年)に甲府市が上水道事業拡張目的のため荒川からの取水量増大を決めた際、既得取水権としての灌漑用取水に棄損が生じることへの補償として国の補助を受けた県営農業水利改良事業が採択され丸山溜池及び後沢溜池の建設が決定しました。
丸山溜池は1937年(昭和12年)に竣工し、総貯水容量145万立米は県営ダム事業が開始される昭和40年代まで人工貯水池としては山梨県内最大を誇っていました。
運用開始後は受益者で組織された荒川沿岸用水利用組合が管理を行い、現在は約1600ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
その後1988年(昭和63年)の改修でダムの目的に洪水調節(農地防災)機能が付加され新たに37万立米の洪水調節容量が設定されました。
丸山溜池は本堤のほか針原副堤及び丸山副堤の2基の副堤がありますが、いずれも堤高が15メートル未満のためダムの要件を満たしていません。
 
丸山溜池はボートや釣りなどのレジャー施設が整備され、とりわけ県内有数のヘラブナ釣りスポットとして多くの釣り客の人気を集めています。
ただ正式名称の丸山溜池よりも通称の『千代田湖』の方が認知度が高く、道路マップや観光ガイドでも千代田湖と表記されており、地元でも『丸山溜池』と聞いても首をかしげる方が大半です。
 
丸山溜池には2016年(平成28年)2月に初めて訪問、2020年(令和2年)6月に再訪しました。
甲府市街から県道104号を北上、和田峠を越えると丸山溜池に到着します。
下流から遠望
145万立米の貯水池を支えるには意外に小ぶりな堤体。
基部はコンクリートブロックの擁壁です。
 
2度目の訪問で
前回訪問時は綺麗に耕されていた下流の水田は休耕になったのか、草が繁茂しています。
(2020年6月23日)
 
洪水吐からのトンネル式導流部
写真では分かりづらいですが『丸山隧道』と書かれています。
(2020年6月23日)
 
下流面
秋に草刈りが行われたようで、非常にすっきりした下流面となっています。
 
天端は貯水池を周回する道路が通っており、車両も通行可能。
(2020年6月23日)
 
上流面
草が生えているのでわかりづらいですが、石張りのようです。
 
天端から
初回訪問時はダム下の水田も綺麗に耕されていました。
遠方の山は昇仙峡です。
 
総貯水容量145万立米と灌漑用溜池としては大規模で、事実昭和40年代までは山梨県内では最大の人工貯水池でした。
県内有数のヘラブナ釣りスポットとして釣り客の人気を集めており、この日も多くの釣り師が糸を垂れていました。
 
右岸の横越流式洪水吐
導水路はトンネル式で、流下した水は3枚目の写真のトンネル出口へと向かいます。
(2020年6月23日)
 
対岸から斜樋と洪水吐を遠望
(2020年6月23日)
 
上流から堤体と斜樋、洪水吐を遠望
(2020年6月23日)
 
(追記)
丸山溜池には農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0963 丸山溜池(千代田湖)(0242) 
ため池コード
山梨県甲府市下帯那町
富士川水系帯那川
FA
19メートル
89メートル
1450千㎥/1398千㎥
荒川沿岸用水利用組合        
1937年竣工
1988年改修
◎治水協定が締結されたダム

大門ダム

2020-06-26 10:00:00 | 山梨県
2015年10月24日 大門ダム
2020年 6月22日
 
大門ダムは左岸が山梨県北杜市須玉町上津金、右岸が北杜市高根町清里の富士川水系須玉川左支流大門川にある山梨県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、大門川および須玉川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、峡北地域広域水道事業団を通じた北杜市への上水道用水の供給を目的として1987年(昭和62年)に竣工しました。
また利水放流を利用して山梨県大門ダム管理用発電所で最大230キロワットの小水力発電を行っています。
ダム建設地は八ヶ岳の火山噴出物が堆積した地質で透水性が高いため、漏水防止のため貯水池右岸側が幅広くアスファルトフェイシングされています。
また運用開始当初より貯水池水質悪化の問題を抱えており、曝気装置のほか様々な対策が取られています。
 
大門ダムには2015年(平成27年)10月に初めて訪問、2020年6月に再訪しました。 
国道141号線の『大門ダム』の標識に従って右折するとダムに到着します。
左岸下流から
独特なゲート配置で非常用洪水吐として自由越流式クレストゲートが9門並びます
さらに常用洪水吐として高さ11.8メートル、幅2.1メートルの超縦長のローラーゲート1門とコンジットの高圧ラジアルゲート1門を装備しています。
両側にフーチングを備えた堤趾導流壁もこのダムならではです。
 
ゲートをズームアップ
超縦長ローラーゲートの右手もゲートっぽく見えますが、これはダミー。
一段下手に高圧ラジアルゲートのコンジットゲートと操作室があります。
(2020年6月22日)
 
天端は車両通行可
左手がローラーゲートのピア。右手は取水設備機械室
対岸高台に管理事務所があります
(2020年6月22日)
 
減勢工は右手に大きくカーブを切っています。
放流が2条見えますが、手前の勢いよく飛んでいるのが常用低水放流管であるジェットフローゲート
奥は河川維持放流用のコーンスリーブバルブで利水放流を利用した小水力発電を行っています。
(2020年6月22日)
貯水池は『きよさと湖』で総貯水容量360万立米。
対岸に艇庫とインクラインがあり、ダム湖中央で水質浄化のための曝気装置の渦が見えます。
(2020年6月22日)
 
湖畔の『大門ダム きよさと湖』の植栽
(2020年6月22日)
右岸から下流面
波返しのついた堤趾導流壁が重厚感を与えています。
(2020年6月22日)
 
漏水対策としてダム湖右岸側はアスファルトで遮水処理されています。
管理事務所のある高台から俯瞰
縦長ローラーゲートのピアがひときわ目立ちます。
上流面にはコンジットの高圧ラジアルゲートの予備ゲートが見えます。
上流から
左手から取水設備、コンジット予備ゲート、ローラーゲートピアと並びます。
ダム湖右岸を上流に向かうと棚田のような不思議な施設が現れます。
植生(クレソンやミントなど)を活用した水質浄化施設です。
(2020年6月22日)
 
(追記)
大門ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0972 大門ダム(0018) 
山梨県北杜市須玉町上津金
富士川水系大門川
FNWP
65.5ートル
180メートル
3600千㎥/2350千㎥
山梨県県土整備部
1987年
◎治水協定を締結したダム

葛野川ダム

2018-12-31 00:54:11 | 山梨県
2018年12月24日 葛野川ダム
 
葛野川ダムは山梨県大月市の相模川水系土室川源流部にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
オイルショックを契機に電力各社は火力偏重の発電体制を見直し、火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。
首都圏への人口集中や東京湾臨海部への工場集積を受け電力需要のピークが急上昇を続けていた東京電力も1980年代より積極的に純揚水発電所建設を進め、同電力4番目の純揚水発電所として1999年(平成11年)に葛野川発電所が建設されました。
葛野川ダムは同発電所の下部調整池として同年竣工し、上部調整池である上日川ダムとの有効落差714メートルを利用して最大120万キロワットの揚水式発電を行っています。
この有効落差は国内水力発電としては最大です、また上日川ダムは富士川水系、葛野川ダムは相模川水系となっており、水系を超えた河川同士での揚水式発電となっています。 
 
かつては国道139号線から葛野川ダム左岸へと通じる管理道路を使い天端の見学が可能でしたが、2014年(平成26年)の松姫トンネル開通により天端へ続く道路は通行禁止となり、葛野川ダムは『到達できないダム』という認識でした。
しかし、その後ダム便覧フォトアーカイブにダム下からの写真が投稿され、調べてみるとダム下へと通じる山梨県営林道葛野川線は徒歩での通行が可能であるとわかり今回訪問することにしました。
 
国道139号線の深城トンネル北出口の先に林道葛野川線のゲートがあります。
路肩に車を止めてゲートから歩くこと約15分で正面に葛野川ダムが現れます。
 
冬枯れのおかげでダムの全景が拝めますが、夏場は視界が遮られるかもしれません。
一方で堤体下半分が影となり、ちょっと露出が難しい写真となりました。 
非常用洪水吐としてクレストに2門のローラーゲート、常用洪水吐としてオリフィスゲートが1門
さらにダム下右岸には河川維持放流を利用した東京電力土室川発電所があり最大350キロワットの小水力発電を行っています。
 
クレストゲートをズームアップ
導流壁が途中から外側にずれる珍しい形です。
 
(追記)
葛野川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
3107 葛野川ダム(1428)
山梨県大月市七保町
相模川水系土室川
105.2メートル
263.5メートル
11500千㎥/8300千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1999年
◎治水協定が締結されたダム

頭佐沢ダム

2018-12-30 10:33:00 | 山梨県
2015年10月24日 頭佐沢ダム
2018年12月24日
 
頭佐沢(ずささわ)ダムは山梨県北杜市白州町にある東京電力リニューアブルパワーが管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
富士川上流部の釜無川流域では大正末期から昭和初期にかけて電源開発が進められ、これらの発電施設は日本発送電による接収を経て1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により東京電力が事業を継承しました。
頭佐沢ダムもそんな発電施設の一つで釜無川第一発電所の調整池として1926年(大正15年)に完成(事業者不明)し、釜無川、中津川、甲六川などで取水された水が一旦ここに貯留されたのち釜無川第一発電所に送られ最大5800キロワットの水路式水力発電を行っています。
 
中央道長坂インターから県道32号を西進、北の杜カントリークラブの標識に従って同クラブへと向かいます。ゴルフ場正面入口をやり過ごしゴルフ場西側を反時計回りに進むと右手に頭佐沢ダムへの分岐が現れ、管理道路を歩くとすぐにダムが見えてきます。
(2018年12月24日)
 
ダム便覧では堤高21.5メートルとなっていますが、堤体直下に盛土が施されているため見えるコンクリートはせいぜい数メートルです。建設残土をダム下に盛り立てたことでこのような形になっていると思われます。
(2018年12月24日)
 
左岸(写真手前側)に小さな洪水吐が見えます。
(2018年12月24日)
 
ダム下の盛土を斜めに横切るように頭佐沢川の水路が流れています。
手前からの水路が頭佐沢川、右手は洪水吐からの水路。
(2018年12月24日)
 
ダム下から
ここから見上げるとまるでアースダムのようです。
(2018年12月24日)
 
再び左岸に戻ります。
左手に釜無川第一発電所への取水口があります。
調整池は4万5000立米と小さなため池程度の大きさ。
(2018年12月24日)
 
取水口のスクリーン(2018年12月24日)
 
釜無川等からの導水路吐口(2018年12月24日)
 
彼方に甲斐駒が見えます。(2018年12月24日)
 
こちらは頭佐沢川からの水路
右上で河川維持放流分が隧道で下流へ流され上から4枚目手前側の水路へと続きます。
残りはダム湖に貯留されます。
(2018年12月24日)
 
2015年(平成27年)10月に訪問しましたが、感度設定を誤りまともな写真が撮れませんでした。
2度目の訪問でようやくちゃんとした写真が揃いました。
 
(追記)
頭佐沢ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0959 頭佐沢ダム(0017)
山梨県北杜市白州町花水
富士川水系頭佐沢川
21.5メートル
75.8メートル
45㎥/39㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1926年
◎治水協定が締結されたダム

西山ダム

2018-02-22 12:21:56 | 山梨県
2018年2月18日 西山ダム
 
西山ダムは山梨県南巨摩郡早川町奈良田の富士川水系早川上流部にある山梨県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により新たに電力9社が誕生し山梨県は東京電力の営業エリアとなりました。
東京電力は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、送電網末端部にあたる山梨県では東京電力だけでは電力需要を賄いきれず公営発電である県企業局による電源開発が併せて進められました。
新たに早川上流域での取水権を獲得した県企業局は、昭和30年代から電源開発を進め、奈良田第1~第3、および西山発電所を建設しました。
西山ダムは西山発電所の取水ダムとして1957年(昭和32年)に竣工し、ここで取水された水は西山発電所に送られ最大1万8800キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
早川沿いの県道37号線の奈良田トンネルを抜けると西山ダムに到着します。
県道沿いのダムサイトに大きな駐車場があります。
訪問時はダムの改修工事中で、ダム湖の水が抜かれていました。
 
クレストには3門のローラーゲート
右岸のゲートが補修中でべニア張りです。
 
右岸に西山発電所への取水口があります。
 
取水口をズームアップ。
 
改修工事のためダム湖の水は抜かれています。
かなり堆砂が進んでいますが発電用ダムということ排砂は行われていません。
 
天端は工事のため立ち入り禁止。
 
発電ダムらしいゲートピア。
 
排砂ゲート?も工事中。
 
ダム下から。
 
べニア張りのゲートはこれはこれででレアな眺め。
改修工事のため発電所は止められ、流入量はそのまま流下させています。
 
追記
西山ダムは洪水調節容量のない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに55万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0966 西山ダム(1250)
山梨県南巨摩郡早川町奈良田
富士川水系早川
40.6メートル
112.3メートル
2382千㎥/313千㎥
山梨県企業局
1957年
◎治水協定が締結されたダム

雨畑ダム

2018-02-22 10:59:09 | 山梨県
2018年2月18日 雨畑ダム
 
雨畑ダムは山梨県南巨摩郡早川町雨畑の富士川水系早川右支流雨畑川にある日本軽金属(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
1939年(昭和14年)に設立された日本軽金属は、静岡県清水と蒲原に世界最大規模のアルミ精錬工場の建設を進め、精錬用の電力を賄うために富士川に波木井・富士川第一・第二の各発電所を建設し合計11万キロワットの発電能力を有しました。
しかし富士川の流量は季節変動が大きく、渇水期には十分な発電を行うことができませんでした。
そこで水利権を持つ佐野川および早川に河川流量を平準化させる上部調整池として2基のダム建設を進め、柿元ダムに次いで1967年(昭和42年)に竣工したのが雨畑ダムです。
柿元ダム、雨畑ダムから富士川の渇水期に放流を行うことで下流の自社発電所の安定した運用が可能となりました。
また雨畑ダム建設に合わせて新たに角瀬発電所が建設され最大1万3000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
早川は糸魚川ー静岡構造線と中央構造線が重なる大崩落地帯のため、雨畑ダムでは堆砂が著しく総貯水容量に対する堆砂率は90%を越えています。このため貯水池上流で浸水被害が発生するとともに富士川河口沖の駿河湾の環境への悪影響も見られることから2020年(令和2年)に日本軽金属は雨畑ダムの堆砂について国交省の指導を受ける事態となりました。
この件により、従来発電用ダムでは取水に影響がない限り堆砂対策を積極的に講じてこなかった発電業者の姿勢に一石を投じることになっています。
 
県道37号線から雨畑川沿いの県道310号に入ると雨畑ダムに到着します。
ダム手前から左に下る枝道に入るとダム直下に飛び出します。
アーチダムをこのアングルで見上げるのはなかなか珍しいのではないでしょうか?
 
ダム下流が完全に凍結しスケートリンクのようです。
 
右岸の岸壁に空いた穴、仮排水路の跡でしょうか?
 
県道からダムへ向かう管理道路は立ち入り禁止。
県道をさらに進むとダムの上流面を遠望できます。
貯水池は堆砂の影響で濁っています。
 
左岸にローラーゲートが2門。
 
自家発電を持つことで、日本で唯一アルミ精錬を続けてきた日本軽金属ですが、施設の老朽化を理由に2014年(平成26年)にアルミ精錬から撤退しました。
富士川水系で発電した電力は引き続き静岡県内の自社・グループ工場で使用されています。
 
(追記)
雨畑ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0969 雨畑ダム(1249)
山梨県南巨摩郡早川町雨畑
富士川水系雨畑川
80.5メートル
147.6メートル
11000千㎥/11000千㎥
日本軽金属(株)
1967年
◎治水協定が締結されたダム

柿元ダム

2018-02-21 12:33:21 | 山梨県
2018年2月17日 柿元ダム
 
柿元ダムは山梨県南巨摩郡南部町の富士川水系佐野川上流部にある日本軽金属(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1939年(昭和14年)に設立された日本軽金属は、静岡県清水と蒲原に世界最大規模のアルミ精錬工場の建設を進め、精錬用の電力を賄うために富士川第一・第二発電所を建設しました。
しかし富士川の水位は季節間変動が大きく渇水期には十分な発電を行うことができないため、富士川の流量平準化を目的として1943年(昭和18年)に柿元ダムが着工されます。
しかし戦況悪化により工事は中断、戦後1949年(昭和24年)に事業が再開され1952年(昭和27年)に柿元ダムが完成しました。
さらに1967年(昭和42年)には雨畑ダムが完成し、両ダムから富士川の渇水期に放流を行うことで下流の自社発電所の安定した運用が可能となりました。
また柿元ダム建設に合わせて新たに佐野川発電所が建設され最大5800キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
JR身延線内船駅南で国道52号線から町道に入り八木沢集落を抜け佐野川沿いの隘路をひたすら進むと右手に柿元ダムが見えてきます。
クレストに5門のローラーゲートが並びます。
 
町道の柿元バス停から俯瞰。
ゲート巻き上げ機が並ぶ姿はいかにも発電ダムと言った風。
 
ダムへ通じる管理道路は車両進入禁止のため歩いて下ります。
 
下流面。
 
ダム竣工年の1952年(昭和27年)から使用されているローラーゲート
 
貯水池の天子湖は総貯水容量759万2000立米。
 
減勢工は簡単な作り。
 
左岸は波返しがついた美しい導流壁。
 
ゲートピアは完成から60年以上経過した時代感を醸し出しています。
 
左岸にある謎の構造物
プラント跡なのか?
 
堤体上流部に取水設備があります
富士川の渇水期ということでダム湖の水位は低くなっています。
 
各ダム訪問記などからてっきり堤体へは立ち入り禁止かと思いましたが、登山者やハイカーなどの利用もあり徒歩での立ち入りが可能です。
日本軽金属の発電設備はアルミニウムという軍事物資向け発電だったため、日本発送電による接収はなく現在に至っています。
 
追記
柿元ダムは洪水調節容量のない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに最大107万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。 
 
0965 柿元ダム(1248)
山梨県南巨摩郡南部町下佐野
富士川水系佐野川
46.1メートル
215メートル
7591千㎥/7185千㎥
日本軽金属(株)
1952年
◎治水協定が締結されたダム

上日川ダム

2017-11-13 14:40:40 | 山梨県
2017年11月12日 上日川ダム
 
上日川ダムは山梨県甲州市塩山上萩原の富士川水系日川源流部にある東京電力リニューアルパワーが管理する発電目的のロックフィルダムです。
ダムの堤頂標高は1486メートルで南相木ダム、野反ダムに次いで日本で3番目に高所にあるダムとなっています。
オイルショックを契機に電力各社は火力偏重の発電体制を見直し、火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。
首都圏への人口集中や東京湾臨海部への工場集積を受け電力需要のピークが急上昇を続けていた東京電力も1980年代より積極的に純揚水発電所建設を進め、同電力4番目の純揚水発電所として1999年(平成11年)に葛野川発電所が完成します。
上日川ダムは同発電所の上部調整池として同年竣工し、下部調整池である葛野川ダムとの有効落差714メートルを利用して最大120万キロワットの揚水式発電を行っています。
この有効落差は国内水力発電としては最大です、また上日川ダムは富士川水系、葛野川ダムは相模川水系となっており、水系を超えた河川同士での揚水式発電となっています。
なお2020年(令和2年)の東京電力ホールディングスの組織改編により上日川ダム及び関連発電施設はすべて同社の100%子会社である東京電力リニューアブルパワー(株)に移管されました。 
 
国道20号線景徳院入口交差点から県道218号線を北に進むと上日川ダムに到着します。 
ダムに至る日川沿いには武田氏終焉の地である景徳院や竜神峡などの行楽施設があるほか、ダム直上の上日川峠は大菩薩嶺の登山口となっており、ダム周辺は山梨有数のアウトドアエリアとなっています。
天端のみ開放されており、左岸に管理事務所、駐車場があります。
管理事務所前の竣工記念碑。
 
左岸から下流面。
 
天端からは正面に富士山が見えます。
周辺のカラマツの紅葉も真っ盛り。
 
 
総貯水容量1147万立米のダム湖は大菩薩湖と命名され、その名の通りダム湖越しに大菩薩嶺を望めます。
ダム左岸に揚水発電用の取水ゲートがあります。
 
取水ゲートをズームアップ、実際の取水口は水中にあります。
 
 
右岸から下流面。
 
右岸の洪水吐斜水路。
 
横越流式洪水吐。
 
ダム湖北岸から洪水吐を遠望。
 
大菩薩嶺雷岩からの富士山と上日川ダム(2013年6月)。
 
同じポイントから(2014年1月)。
 
2017年(平成29年)11月から上日川ダムのカード配布が始まり、訪問者が増えているようです。
全国で数基しかない天端から富士山が見えるダム、今回は素晴らしい眺望を堪能することができました。
 
追記
上日川ダムは洪水調節機能を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに673万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
3106 上日川ダム(1166)
山梨県甲州市塩山上萩原
富士川水系日川
87メートル
494メートル
11470千㎥/8300千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1999年
◎治水協定を締結したダム

小篠溜池

2017-11-13 12:04:17 | 山梨県
2017年11月12日 小篠溜池
 
小篠(おしの)溜池は山梨県大月市猿橋町小篠の相模川水系小篠川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
現地記念碑によれば1933年(昭和8年)に小篠耕地整理組合の事業によって建設され、1986年(昭和61年)から1990年(平成2年)にかけて農水省の補助を受けた県の事業で大規模な改修工事が行われました。
管理は小篠土地改良区が行っています。
 
国道20号線鳥沢駅手前で南に折れ、桂川(相模川)を渡り小篠集落に入ります。
登山者やハイカーに開放されている小篠公民館駐車場に車を置き歩いて小篠溜池に向かいます。
 
高畑山登山道の標識に従って集落を抜けると車両進入禁止のゲートがあります。
この先は登山道のためゲートを開けて先へ進みます。
 
堤体下に底樋ゲートがあり、農業用水路が流下します。
 
堤体下流面には『おしの』の植栽があり、アジサイや桜が植えられています。
ダム下には簡易上水道施設がありますが、これは溜池の水と関係はありません。
 
右岸の洪水吐導流部。
 
上流面は黒いゴムシートで遮水処理されています。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
天端には東屋があります
高畑山登山道に隣接しており、早朝にもかかわらず登山者が休憩していました。
 
天端からの眺め
正面には扇山。
 
総貯水容量は14万1000立米。
 
左岸の斜樋。
 
洪水吐の上流側は石積みになっています。
もしや1933年(昭和8年)竣工当時のものか?
 
左岸にある竣工記念碑と改修記念碑。
改修記念碑は円球のユニークな形状。
 
登山ではこの池のそばを何度も歩いていましたが、ダムマニアとしては初めての訪問です。
人気の高畑山登山道に隣接していることもあり、下流面の植栽や天端の東屋などよく整備されています。
 
3431 小篠溜池(1165)
山梨県大月市猿橋町
相模川水系小篠川
27.4メートル
111メートル
141千㎥/134千㎥
小篠土地改良区
1933年

深城ダム

2016-03-02 12:00:00 | 山梨県
2015年10月24日 深城ダム
2016年  2月28日
 
深城ダムは山梨県大月市七保町瀬戸の相模川水系葛野川上流部にある山梨県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1974年(昭和49年)に山梨県は『葛野川総合開発事業』を採択し葛野川上流部への多目的ダム建設を決定しますが、補償交渉が長期化し着工には至りませんでした。
しかしバブル期に入り都市部の地価高騰の影響で上野原や大月の中央線沿線での宅地開発が一気に進展したことで、利水用水源確保に迫られたことで事態は急変、1996年(平成8年)に本体着工にこぎつけ2004年(平成16年)に深城ダムが竣工しました。
深城ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、葛野川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給、大月市・上野原市への上水道用水の供給を目的としています。
さらに2011年(平成23年)には放流水を利用した山梨県企業局深城発電所が新設され最大340キロワットの小水力発電が開始されました。
深城ダム直上、支流土室川には東京電力葛野川ダムがあり約2キロの距離を置いて事業主体の異なる2基の重力式コンクリートダムが近接する珍しい状況となっています。
 
大月市街から国道139号線を北上すると深城ダムに到着しますが、途中国道とは名ばかりの隘路もあり運転には注意が必要です。
国道からダムと正対できます。(2016年2月28日)
 
直前にまとまった雨があり水位が上昇したおかげで2種類の常用洪水吐からの美しい放流を見ることができました。
(2016年2月28日)
 
非常用洪水吐としてクレスト自由越流頂6門
洪水期・非洪水期常用洪水吐として自然調節式オリフィス上下1門ずつ計2門を装備。
今回は2種類の常用洪水吐それぞれから越流しています。(2016年2月28日)
 
ダム下右手の建屋は利水放流設備でジェットフローゲート2条を装備。
左手は2011年(平成13年)に新設された山梨県企業局深城発電所。
カスケード式の減勢工も深城ダムの特徴です。(2016年2月28日)
 
左岸から。
 
上流から
左手に管理事務所、右岸には艇庫とインクライン。
初回訪問時はずいぶん水位が低くなっていました。
 
ズームアップ
左手は常用洪水吐ゲートとゲート操作室、右手は選択取水設備と操作室
2つの常用洪水吐をゲートの昇降により開閉することで洪水期および非洪水期の水位調節が可能となっています。
 
天端は徒歩のみ開放。
 
天端から導流部及び減勢工。(2016年2月28日)
 
上下2段の常用洪水吐からの越流をズームアップ。(2016年2月28日)
 
上流面
2度目の訪問時は直前の雨の影響で水位が上がっています。
6枚目、7枚目の写真と比較すれば水位の違いがわかります。(2016年2月28日)
 
初回訪問は日も暮れかけた薄暮の中での見学でしたが、2度目はじっくり時間を掛けて見ることができた上に美しい放流のおまけまでついてきました。
 
追記
深城ダムには439万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに最大75万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0975 深城ダム(0023)
山梨県大月市七保町瀬戸
相模川水系葛野川
FNAP
87ートル
164メートル
6440㎥/5140㎥
山梨県県土整備部
2004年
◎治水協定が締結されたダム