ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

一庫ダム 内部見学

2024-04-28 08:00:00 | ダム見学会
2024年3月19日 一庫ダム 内部見学
 
3月中旬より奈良の実家に帰省することになり、その機を利用して一般の立入りが制限されている西宮市上下水道局が管理する丸山ダム見学許可を頂きました。
一方、丸山ダムが給水する西宮市北部の水道水の大半は兵庫県営水道からの受水となっており、その水源となっている水資源機構の一庫ダムも併せて訪問することにしました。
その際、一庫ダムのHPを見てみると、事前予約で職員ガイドによる内部見学ができることを知りました。
結果的に3月19日午前に丸山ダム及び浄水場、午後に一庫ダムをそれぞれ職員様同行で見学するという贅沢な一日となりました。

ここでは一庫ダム内部見学の詳細についてご紹介してゆきたいと思います。
一庫ダムの概要については『一庫ダム』の項を、丸山ダム・丸山浄水場に見学につていは『丸山ダム・丸山浄水場見学』の項をご覧ください。

内部見学前日に時間の余裕があったので、あらかじめ一庫ダムを見て回りました。
右岸ダム下から
洪水吐としてクレストラジアルゲート2門とコンジット高圧ラジアルゲート2門を装備
コンジットのゲートハウスは昭和50年代のダムらしく前面に張り出しています。


右岸上流から
右岸ダムサイトに管理事務所があります。


ゲートをズームアップ
左から選択取水設備
クレストゲートを挟んでコンジットの予備ゲートが並びます。

 
艇庫とインクライン
艇庫屋上は展望台になっています。


アングルを変えて
右岸からの上流面。


ダム湖上流から。
秋以降の少雨で今期の一庫ダムは記録的な渇水となっており、やや回復したとはいえいまだ貯水率40%前後。


管理事務所の駐車場に車を止めます。


約束の午後2時から見学がスタート。
管理事務所裏手から。




管理事務所わきから監査廊に入ります。


完成当時の航空写真
ダム建設とは別に周辺では大規模な宅地開発が進められ、ダムの建設残土は宅地造成に利用されました。
つまり盛土ってこと?


288段の監査廊階段が現れます。
てっきりここを下りるのかと身構えたら、エレベータで降りるとのこと。
ほっとしつつも残念な気も。


エレベーターで下に下ります。


上層から中層の監査廊へ。


監査廊内には電気や通信ケーブルが並びます。


地震計。
震度ではなくガルを計測します。


コンジットゲートハウスから洪水吐に架かる管理橋へ。
もとはグレーだったそうですが、赤く塗り替えられ通称『赤橋』。
一庫ダムの名物の一つです。


赤橋からラジアルゲートを見上げます。


こちらは減勢工と副ダム。


ゲートハウスに入ります。
意外と広々
右手は高圧ラジアルゲートの油圧シリンダー。
左手斜めに横たわるのは主にフラッシュ放流を行う利水補助バルブ。
一庫ダム名物のクロス放流はこれを使います。


ゲートは鮮やかなグリーン。
2002年(平成14年)の塗装の際に、当時の担当者が独断でこの色に塗り替え上司に大目玉を食らったとか?


ゲート操作は管理棟で行いますが、万一に備えゲートハウスにも操作機器が置かれています。


正面の主管ゲートから放流中。 


赤橋の下の穴が利水補助バルブで主としてフラッシュ放流の際に利用します。
左右同時に放流するのが一庫名物クロス放流です。


放流管とコンジットゲートのプレート
ともに今はなき田原製作所製。


常用洪水吐の説明版。


階段を下りゲートを間近で見学。
こちらも鮮やかなグリーン。




壁には吊り金具(吊りピース)
ゲートを分解整備(修理)する際に、分解した重量物の部品等をこれを起点に吊り建物内を移動させるために使用します。
これは過去の整備で設置した吊り金具で今後の整備作業等でも使用する可能性があるので残されています。


塗装記録
グリーン犬られたのは2002年(平成14年)
この時の担当者が独断でこの色にしたんですね。


エレベーターで最下層の監査廊に向かいます。


288段の階段を下から見上げます。
階段途中に転落防止用の黄色い柵が何か所も設置されています。


漏水計
上層や中層に比べるとコンクリートもさすがに湿った感じ。


排水ピット
一定以上の漏水が溜まるとここから排出されます。


監査廊ではおなじみ、プラムライン。



 
こちらは主管の予備ゲート。


放流管。


放流管据え付け工事の写真。


分岐管バルブ。


主管・分岐管はすべて酒井鉄工所製。


穴の向こうで主管から放流中。
水量が多いときは主管、少ないときは分岐管を使います。


ドアを開けると左岸ダム下に飛び出しました。
ここは立入禁止エリア、内部見学ならではの眺め。


さらに引いて。


副ダムには2基のゲートがついています。
副ダム堤頂には空気管が設けられています。
減勢池内の水位が増した際に水中でのゲートの開閉をスムーズにするための空気管です。


副ダムゲートの操作機器。


これにて約1時間半の見学は終了。
貸し切り状態で中身の濃い内部見学を堪能しました。
水資源機構一庫ダム管理所および丁寧に案内していただいた若い職員さんには厚く御礼申し上げます。
なお、一庫ダムでは事前予約により個人一人からの内部見学が可能です。
詳細は管理所ホームページをご覧ください。

一庫ダム

2024-04-24 08:00:00 | 兵庫県
2024年3月18日 一庫ダム
     3月19日 
 
一庫(ひとくら)ダムは兵庫県川西市一庫の一級河川淀川水系猪名川左支流一庫大路次川にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
淀川主要右支流の猪名川は大阪・兵庫の住宅密集地や阪神工業地帯を貫流するため戦前よりその治水・利水は重要視され『河水統制事業』の対象にもなっていました。
戦後の水道需要増大に対処するため1962年(昭和37年)の「水資源開発促進法」により淀川水系では水資源開発公団(現水資源機構)により河川総合開発が進められることになりました。
淀川右支流の猪名川でも、流域での都市化の進展が著しく治水に加え急激に増大する利水需要に対応するため同公団により多目的ダム建設が進められ1983年(昭和58年)に竣工したのが一庫ダムです。
一庫ダムは一庫大路次川や猪名川の洪水調節(最大毎秒700立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定用水への補給、大阪広域水道企業団及び兵庫県営水道を通じ大阪府及び兵庫県下7市2町への上水道用水の供給を目的としています。
また河川維持放流を利用して一庫発電所で最大1900キロワットの小水力発電を行っています。

一庫ダムは平日・事前予約限定ですが職員様案内による内部見学が可能です。
今回は3月19日に内部見学の予約をしましたが、前日の18日に時間の余裕があったので事前にダム全体を見学、翌19日に内部見学と2日連続での訪問となりました。
3月19日の記載のない写真はすべて3月18日のものとなります。
また見学の詳細については『一庫ダム 内部見学』の項をご覧ください。

川西市街から国道173号線を北上すると一庫ダムの標識があり、これに従うとダムに到着します。
まずはダム下から
堤高75メートル、堤頂長285メートル
減勢工のすぐ下流で一庫大路次川は右手に大きく蛇行します。


下流からの展望ポイントは多く、正面のほか左右両岸からダムを望めます。
非常用洪水吐のクレストラジアルゲート2門、常用洪水吐のコンジットラジアルゲート2門のほか、主管ゲート1条、分岐菅バルブ1条、維持放流バルブ1条、フラッシュ放流用として利水補助バルブを2条と多彩な放流設備を備えています。
昭和50年代のダムらしくコンジットゲートハウスはダムから前面に張り出しています。


こちらはクレストゲート直下の『赤橋』と呼ばれる管理橋からの写真。
これは内部見学での写真となります。
(2024年3月19日)


右岸からラジアルゲートをズームアップ
天端には巻き上げ機はなく、ゲートハウスはゲート横に位置します。


減勢工の副ダム。
減勢池からの放流用ゲートが2門あります。
副ダム堤頂に伸びるパイプはゲート開閉の際の空気管。


天端に上がります。
右岸ダムサイトの管理所裏手にある建設の碑。


天端は県道604号線
亀岡方面への抜け道になっておりそこそこの交通量があります。
親柱には『一庫ダム』の銘板、その上にはダム湖百選のプレート。


右岸湖畔にある艇庫
屋上は展望台になっています。
さすが兵庫、すごい落書きだと思ったら安食慎太郎という洋画家による壁画でした。


展望台から見た上流面
クレストラジアルゲート両側にはグリーンのコンジット予備ゲート
奥は選択取水設備
注目すべきはラジアルゲート上流側の溝
予備ゲート嵌め込み用の溝ですが、嵌め込みやすくするためか傾斜がついています。


天端を徒歩で往復します。
減勢工左岸手前側の建屋は放流設備
その先の白い建屋は管理用発電所
最大出力1900キロワットと一般水力並みの発電能力があります。

ダム湖は知明湖で総貯水容量は3330万立米
知明は貯水池奥の知明山から命名されました。
湖畔各所にキャンプ場や親水公園が整備されダム湖百選に選ばれています。
一庫ダムはこの冬以来記録的な渇水となっており、訪問時も貯水率40%割れでした。


左岸天端から
右手は取水設備


左岸から
対岸のエンジの建物が管理所。


左岸から上流面
グリーンのコンジット予備ゲートが鮮やか。
(2024年3月19日)


管理事務所と艇庫とインクライン。
(2024年3月19日)


上流から遠望
(2024年3月19日)


さすが水資源機構のダム
環境整備も素晴らしく事前予約ながら個人での内部見学も可能。
ただ、今期の一庫ダムは記録的な渇水に見舞われ一時貯水率は20%台まで落ち込みました。
訪問時も40%前後と厳しい運用は続いており、発災しない程度のまとまった雨が欲しいところです。

(追記)
一庫ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1511 一庫ダム(2032)
兵庫県川西市一庫
淀川水系一庫大路次川
FNW
75メートル
285メートル
33300千㎥/30800千㎥
水資源機構
1983年
◎治水協定が締結されたダム

丸山ダム・丸山浄水場見学

2024-04-23 08:00:00 | ダム取材見学
2024年3月19日 丸山ダム・丸山浄水場見学

3月中旬よりプライベートな事情で奈良の実家に帰省することになり、そのついでに近隣のダムを見学できないか?いくつか候補を思案していました。
その中で心に引っかかったのが兵庫県西宮市にある丸山ダムです。
このダムには2017年(平成29年)3月に訪問していましたが、ダム下や天端は立入禁止となっており貯水池上流側から遠望するのみでした。
そこで、事前にダムを管理する西宮市上下水道局にダム及び隣接する丸山浄水場の取材を申し込んだところ特別のご配慮で見学させていただけることになりました。
また兵庫県営水道を通じて西宮市に上水道用水を供給している兵庫県川西市の水資源機構が管理する一庫ダムについても同日での内部見学が叶い、3月19日は午前に丸山ダム・丸山浄水場、午後に一庫ダムをそれぞれ職員様同行で見学するという贅沢な一日となりました。
本稿では丸山ダム及び丸山浄水場の見学について記載したいと思います。
丸山ダムの概要については『丸山ダム』の項をご覧ください。

西宮市北部地区では1974年(昭和49年)の中国自動車道完成を機に宅地開発が急展開し、これに対処するために西宮市水道局(現上下水道局)は1975年(昭和50年)に丸山浄水場を、1977年に(昭和52年)に丸山ダムを建設します。
しかし、その後も人口の増加がとどまらず1994年(平成6年)より水資源機構一庫ダムを水源とする兵庫県営水道多田浄水場からの受水が開始されました。
現在では西宮市北部への上水道用水の給水の9割は兵庫県営水道が担っており、丸山ダム及び丸山浄水場はサブ的存在となっています。
西宮市水道事業の概要図(西宮市水道ビジョンより)


これを踏まえたうえでダムと浄水場の見学をすることにします。
こちらは丸山浄水場入口。
当然のことながら関係者以外の立入りは禁止されています。


完成当時の西宮市水道局が改組され上下水道局になったため、門扉のプレートはまだピカピカ。


浄水場管理棟内に置かれたダム・浄水場の模型。


まずはダムへと向かいます。


丸山ダムの売りである紫のゲートが見えてきました。


減勢工の副ダム
切欠きの下流にさらに小さな導流堤があります。
右手の穴はダム湖に隣接するゴルフ場からの水路。
ゴルフ場では除草剤を多用するため、飲料水の水源であるダム湖をバイパスしてダム下流に流下させます。


副ダムをズームアップすると小さなゲートがあります。
これは減勢池内の土砂を排出するゲートです。


こちらの細いパイプはかつて貯水池に隣接していたプールの排水用。
プールは廃止になったため、こちらは今は使われていません。


ゲートを開けてダムの構内へ。


ダムと正対
堤高31メートル、堤頂長71メートル
手前の水路橋は取水設備から浄水場への水管。


ゲートをズームアップ。
これほど鮮やかな紫のゲートはほかには思い浮かびません。
想起できるのは山形の月山ダムのコンジットゲートくらいか?


ついつい同じような写真を何枚も撮ってしまいます。


水路橋から
右手の建屋は放流設備で、下流域の利水需要に合わせて3本の放流管があります。
さらに奥には水位低下用のホロージェットバルブを装備。


もう一度ゲートをズームアップ。


放流設備をズームアップ。 


導流部の下部には穴を塞いだような跡
建設時の堤体内仮排水路の跡になります。

3本の放流管
今後下流域での田起こしや田植えが始まるとさらに放流量を増やすそうです。


水路橋から見た減勢池。


水路橋を渡りダムの右岸へ移動
これは取水設備からの管路
この後水路橋を経て浄水場へと続きます。 


右岸のフーチングを登ります。
堤高31メートルは基礎岩盤からの高さで、実際に上るのは20メートルほどか?
斜めの管は上記プールからの排水管。
今は使われていません。


フーチングからの下流面。

天端に到着
完成当初は天端は開放されていたそうで、上下流面にフェンスが設けられています。
今も湖岸沿いに道路が通じていますが途中に門扉が設けられ一般の立入りは禁止。
奥の建屋はゲート操作室で止まっている車はメンテナンスの業者さん。


取水設備は3段の多段式。


ゲート巻き上げ機。 


天端から減勢工を見下ろす。


ゲート操作室
台風や豪雨の際には職員さんはここに籠ってゲート操作を行い『水道屋がダム屋にならなければいけない』。


下流面。


上流面
奥が上水用取水設備
手前は放流用の取水設備。


ちょっと見づらいが竣工記念碑。


諸元の銅板。


ダムから浄水場に戻ります。
こちらは高架水槽。
急速濾過池の逆洗用の水を貯めています。
横にあるのは分割式の予備ゲート
主ゲートに比べて随分色あせています。


着水井
ダムから送られた原水が流入します。


フロック形成池
薬品を投入した水をかくはん機でかき混ぜ不純物の固まり(フロック)を作ります。
水中の羽根のようなものが撹拌機。


沈殿池
原水からフロックを自重で沈めます。
沈殿したフロックはガントリーで定期的に排出されます。
正面の山上には丸山配水池があり、ここで浄水された水および兵庫県営水道から受水した水をブレンドして給水しています。


急速濾過池
水を砂と砂利の層に通し、細かい汚れをろ過して透明できれいな水にします。
 


濾過池の模型。


こちらは濃縮槽
排出したフロックをここで脱水して濃縮します。
丸山浄水場には天日乾燥床はなく、濃縮されたフロックは産業廃棄物として処理されます。

これにて丸山ダム及び浄水場の見学は終了
現在、丸山配水池から西宮市北部地区に給水する上水道用水の約9割は兵庫県営水道からの受水により、丸山ダム及び浄水場は事実上のサブ扱いです。
兵庫県営水道については従来は一庫ダムを水源とする多田浄水場からの受水に依っていましたが、青野ダムを水源とする三田浄水場からの送水管が新たに接続されより柔軟な水運用が可能となりました。
とはいえ、今年は一庫ダムが記録的な渇水に見舞われ取水制限が実施されました。
主役の座を兵庫県営水道に譲ったとはいえ、当面はセイフティーネットとして自己水源を維持する必要性は大きいように思われます。
一方で、人口減少時代となりいずれ水需要が大きく縮小するような事態に備え、中長期的には水道事業のさらなる合理化・広域化は不可避です。
その際、丸山ダム及び浄水場の立ち位置がどうなるのか?ダム愛好家としての立場から非常に気になるところです。


最後に、案内していただいた職員さんの見送りを受けて浄水場を後にしました。
この後午後2時からは水資源機構一庫ダムの内部見学となります。


西宮市上下水道局では一般個人の見学対応はされておりません。
今回はダムマイスターとしての取材要請に対し特別のご配慮で見学の許可を頂けました。
改めて西宮市上下水道局および丸山浄水場の職員の皆様には厚く御礼申し上げます。

丸山ダム

2024-04-22 08:00:00 | 兵庫県
2017年3月25日 丸山ダム
2024年3月19日
 
丸山ダムは兵庫県西宮市山口町下山口の二級河川武庫川水系船坂川にある西宮市上下水道局が管理する上水道目的の重力式コンクリートダムです。
阪神間に位置する西宮市は市域が南北に長く、南部の大阪湾沿岸部や六甲山麓は戦前より市街化が進み併せて水道事業の整備も進められてきました。
一方北部と呼ばれる旧有馬郡塩瀬村および山口村は実質的には飛び地状態で昭和40年代までは開発の手が届かない山村でした。
しかし、1974年(昭和49年)の中国自動車道完成を契機に状況は一転、北部地区でも宅地開発が進められ人口は急増します。
これに対処するために西宮市水道局(現上下水道局)は当地への上水用水源及び浄水場建設に着手、1975年(昭和50年)に丸山浄水場が、1977年に(昭和52年)に丸山ダムが完成しました。
しかしその後も開発の手は緩まず1991年(平成3年)には計画人口1万5000人の西宮名塩ニュータウンが着工され、1994年(平成6年)より水資源開発公団(現水資源機構)の一庫ダムを水源とする兵庫県営水道多田浄水場からの受水が開始されました。
さらに渇水が多い一庫ダムを補完するため青野ダムを水源とする三田浄水場からの送水管も完成し、現在では西宮市北部地区における給水の約9割は兵庫県営水道からの受水により、丸山ダム及び丸山浄水場の立ち位置はサブ的存在となっています。

丸山ダムは天端、ダム直下、ダムサイトが立入り禁止となっており2017年(平成29年)3月の初回訪問時は上流から遠望するのみでした。
2024年(令和6年)3月の再訪時は事前に管理する西宮市上下水道局に丸山ダム及び浄水場の取材見学を申請し、職員様同行での見学が叶いました。
見学の詳細については『丸山ダム・丸山浄水場見学』の項をご覧ください。
 
再訪時は関係者以外立入り禁止の丸山浄水場から丸山ダムに向かいました。
減勢工には副ダムがあり、副ダム直下にも導流堤があります。
副ダム右手の穴は貯水池に隣接するゴルフ場からの導水路。
ゴルフ場では除草剤を多用するため、飲用であるダム貯水池をバイパスしてダム下に流します。


ゲートを抜け立入禁止エリアへ。
堤高31メートル、堤頂長71メートル
やはり紫のゲートに目が向かいます。
手前の水路橋は取水設備から浄水場への水管。

 
ゲートをズームアップ。

 
水路橋から
向かって右手に放流設備があり、灌漑期等流域の利水需要に合わせて3本の放流管を装備
さらに、奥には水位低下目的のバルブがあります。

 
フーチングから天端へ上がります。
左岸上流から湖岸沿いに道路が通じていますが、途中に門扉があり一般の進入はできません。
向かいの建屋はゲート操作室で止まっている車はメンテナンス業者のもの。
完成当初は開放されていたこともあり、上下流面ともにフェンスが設置してあります。


取水設備は3段の多段式でハンドルが3本。


ゲート巻き上げ機。

 
天端から減勢工を見下ろす。

 
左岸から下流面。

 
上流面
奥は浄水場への取水設備
手前は放流用の取水設備。


ちょっと見づらいですがダムサイトの竣工記念碑。


諸元プレート。

 
ここからは初回訪問時、上流からの写真となります。
ダム湖は所在地の地名から『金仙寺湖』
総貯水容量は244万2000立米。
左岸に浮桟橋があり巡視艇が係留されています。
(2017年3月25日) 

 
ゲートをズームアップ
ゲート右手が上水用取水設備、左手が放流用取水設備。
(2017年3月25日) 

 
左岸はロックフィルの第2ダムになっています。
西宮市のパンフでは堤高は21.5メートルとダムの要件を満たしていますが、便覧には未掲載。
今後ダム協会にダムとして情報提供しようと思います。
(2017年3月25日) 


金仙寺湖の石碑。
(2017年3月25日) 

 
今回はダムマイスターとして取材を申請し、当別のご配慮で見学が叶いました。
対応していただいた西宮市上下水道局および職員の皆様には厚く御礼申し上げます。
またダム及び浄水場は一般個人の見学には対応されておりませんのでご了承ください。
 
1502 丸山ダム(0883)
兵庫県西宮市山口町下山口
武庫川水系船坂川
31メートル
71メートル
2442千㎥/2050千㎥
西宮市上下水道局
1977年

山内ダム

2024-04-12 08:00:00 | 千葉県
2017年2月 4日 山内ダム
2024年2月26日
 
山内ダムは千葉県長生郡長南町山内の二級河川一宮川水系埴生川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
埴生川上流の山内地区は気候は温暖、地味も肥沃ながら水源となる埴生川の水量が不安定なうえに圃場整備も未着で非効率な稲作経営を余儀なくされていました。
そこで1997年(平成9年)に千葉県営かんがい排水事業山内地区が着手されその灌漑用水源として2004年(平成16年)に竣工したのが山内ダムです。
併せて圃場整備も進められ計約110ヘクタールの農地整備が実現し、効率的な稲作経営が可能となりました。
ダムの管理は長南町産業振興課が受託しています。
 
山内ダムには2017年(平成29年)2月に初訪、2024年(令和6年)2月に再訪しました。
ダムに通じる管理道路入口にはゲートが設けられ関係者以外立入禁止となっており、ダムは右岸下流側から垣間見えるのみです。
再訪時はダムを管理する長南町に見学を申請し、ダム便覧への記事掲載及び写真撮影を目的として立入許可を頂きました。
今回の見学はダムマイスターとしての取材の一環であり特例によるものです。
今後も部外者の立ち入りについては認められることがありませんので、その点はご留意いただきたいと思います。
また掲載写真はすべて再訪時のものとなります。
 
山内ダムに通じる管理道路入口
ゲートが設けられ関係者以外立入禁止。
 
ダムと正対
堤高21.6メートル、堤頂長99.8メートル
堤体は犬走を挟んで2段構成
右岸に残る地山を洪水吐斜水路が流下する特徴的な造形。
ダム下の寒緋桜がほぼ満開で、ちょっと立入禁止がもったいない気が?


左岸ダム下の放流設備
温暖な房総半島は田植えが早くこの辺りも3月初旬から灌漑期に
ダムの管理は長南町が受託していますが、灌漑期のバルブの操作は受益地区である山内地区が行います。

 
堤体と洪水吐斜水路の間に地山が残る独特の造形。
まるでスフィンクスの足のよう。

 
天端入口にも門扉があり職員さんに開けていただきました。


左岸から下流面
堤体の草刈も山内地区が行います。

 
左岸ダムサイトには記念碑と事業説明板が並びます
こちらは竣工記念碑。
農業ダムではおなじみの4文字熟語は『水潤豊実』。


事業説明版
WEBを検索しても山内ダムの情報はなかなか出てきません。
実はこれが一番見たかった?笑。


ダム下の眺め。


関係者以外立入できない天端ですが、2車線幅がありきれいに舗装されています。

 
総貯水容量は36万立米
約110ヘクタールの水田を潤します。
右手は管理事務所。

 
右岸の洪水吐。
斜水路手前に副ダムがあります。

 
上流面はコンクリートブロックで護岸。
房総の田植えは早く長南町でも3月には灌漑期が始まります。
田起こしに備えてほぼ満水。

 
右岸の横越流式洪水吐。

 
管理事務所と斜樋
職員の常駐はなく、日々の巡回のみ。


初回訪問時より構内の様子が気になっていた山内ダム。
今回は特別のご配慮で中を見学することができました。
堤体も含めてダム全体がきれいに整備され、受益農家にとって貴重な言灌漑用水源であること見て取れます。
対応していただいた長南町産業振興課には厚く御礼申し上げます。
 
3293 山内ダム(0825)
千葉県長生郡長南町山内
一宮川水系埴生川
21.6メートル
99.8メートル
360千㎥/340千㎥
長南町産業振興課
2004年