これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

美容院とパン屋はつながっている(2)

2019年02月17日 21時20分49秒 | エッセイ
 久しぶりの美容院で、料理やファッションの記事の載った雑誌を開くと、「美味しいパン屋」特集だった。
 麻布や代官山、横浜といったオシャレの代名詞となる場所にまぎれて、見覚えのある地名が目に入る。
「へ? 西尾久? 何で」
 東京都荒川区西尾久は下町になるのだろうか。目立った店もなく、奇抜な格好をしている若者もおらず、路線バスや都電荒川線が活躍する街だ。仕事で何度も訪問したから親しみもあるけれど、ちょっと浮いているのでは……。
「なになに。食パン専門店とな」
 ピンとこなかった。失礼ながら、あの地味な街に女性誌をにぎわすようなパン屋があるとは。イケメンでも何でもない普通のサラリーマンが、テレビで引っ張りだこのタレント美女と「交際発覚!」なーんて報道されるようなものか。とりあえず、時間のある日に寄ってみた。
 店の名前は「点心」。中華料理でもないのに「点心」。近くには「びっくり餃子」なる店もあり、本当に食パンが買えるのかを疑った。
 店の入口には「営業中」の札がかかっている。少々安心して中に入ったが、それもつかの間、またまた「本当に買えるのか」と心配になってきた。なにしろ、引っ越しを控えた事務所があらかた荷造りを終えたほどに殺風景で、肝心のパンが見当たらなかったからだ。
「あのう、ここ、パン屋さんなんですか?」
 キョロキョロしながら店員に尋ねると、歯切れのよい答えが返ってきた。
「はい、食パンを売っています。1つ650円で、配送もしています」
「ああよかった。じゃあ、1つください」
 よく見ると、レジ脇の棚には袋詰めされた食パンが並んでいた。タマゴサンドやラスクも売っている。ただ、ショーケースがないだけだ。



 袋を開けると、こーんなパンが、ドーンと飛び出してくる。



「切らずにちぎって食べるのがおススメ」とあったので、素直に継ぎ目から裂いてみた。



 触っただけでも軟らかさがわかる。白いところがふわふわなのは当然として、耳までしっとりしているのがうれしかった。何もつけずに食べてみると、口の中でうっすらと甘味が広がってくる。
 じわじわ、じわじわ。
 耳の方が香ばしくていい味なのが面白い。バターをつけてもよし、オリーブオイルでもよし、スープにひたしてもよし。ふわふわな食感に加えて、控えめな弾力性もあり、もちもちした舌触りが楽しめる。トーストにしてはもったいないだろう。なんだかんだで、あっという間に1/3食べてしまった。
「うまそうだ。俺ももらうよ」
 あとから夫がやってきて、さらに1/3をペロッと平らげる。
「あっ、こんなに小さくなってる」
 最後は娘が、残りの1/3をパクリ。結構大きかったのに、たった1時間でなくなってしまった。



 点心、おそるべし。
 実は、昨日も点心に行ってしまった。今度はちぎらず、薄切りにしてタマゴサンドを作ってみたら、これがベラボーに美味い。どう食べても、何をつけてもつけなくても、イケるのだ。
 ほんの60分、美容院で情報収集しただけなのに、いいパン屋を2軒も見つけてしまうとは。
 私の嗅覚、今日も冴えてま~す!


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コメント (8)
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