Toshiが行く

日々の出来事や思いをそのままに

オーディオブック

2024-04-16 15:00:00 | エッセイ

 

『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず……』

この名文で始まる方丈記に、友人は改めて胸を震わせた。

「800年ほど前の天変地異、時代の転換、大変動を驚くべき描写力で

余すところなく語り、滔々と流れる悠久への思いにかられる」とまで語る。

実を言うと、彼は「方丈記」を手にして読んだのではない。

NHKの古典朗読を聞き、たっぷりとその世界に浸ったのだった。

 

もう一人の友人、こちらは女性だが、

彼女はスマホでYouTubeの「小説朗読」にすっかりはまってしまったという。

もともと不眠症とは無縁の質。布団を被り「さあ、寝るぞ」と言い聞かせれば、

ものの30秒で寝入ってしまうそうだが、

就寝時の「朗読」にはまってしまったことで、

「眠いけれど寝たくない、寝なきゃいけないのに眠れない」

と途方にくれると嘆いている。彼女いわく。

 

「何せ、静まり返った夜にしんみり聞く山本周五郎は最高。

周五郎だけではなく、藤沢周平も外せない。

作品を聞いていると胸が熱くなったり、ほろりとしたりで、

話の途中で寝るなんてとんでもないことだ」

 

「朗読を聞く」のにはまるのは夜に限ったことではないらしい。

昼間、BGM代わりに家事をしながら流し聞きをしてみても同じことだった。

洗濯も掃除もさっぱり手につかず、とうとう、座り込んで聞き入ってしまい、

夕飯の支度が遅くなってしまうこともあったという。

「夢中になって読んだ本も、人の声で耳から聞くと、

また違った臨場感に惹きつけられる」のだそうだ。

 

             

 

本は「読む」時代から「聞く」時代に変わってきたのか。

どうもそうなりつつあるらしい。

つい、この間まで「電子書籍化」ということで、

本を読むのも紙のページをめくるのではなく、画面を指先でめくる時代になった、

そう思っていたのだが、もう次は「聞く」時代なのだという。

「オーディオブック」=「聞く読書」ということもよく聞くようになったし、

実際スマホをはじめ、さまざまなデバイスを通じて

「耳で聞く読書」が広まっているのは確かだ。

 

また、友人がはまってしまったYOU TUBEでも小説朗読がたくさんアップされている。

さらに俳優や声優の朗読によるCDセットの広告もよく見かける。ちなみに友人は、

「『眠る朗読』というものもあり、一晩中絵本や物語を読み聞かせてくれる。

こちらは耳に優しいゆっくりとした声で、遠慮なく眠くなる。

質の良い睡眠を貰ったようで、翌朝の目覚めもいい」と教えてくれた。

 

「字間、行間に込めた作者の思いを読み解きながらページをめくる」

と教えられてきた僕なぞはどこか馴染みにくいのだが、

いずれにせよ、何事につけても世は変わっていくものだ。

方丈記はこう続いている。

 

「……よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまるためしなし」

 

 

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2 コメント

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朗読を聴く (飛行機好きのおじいさん)
2024-04-16 19:38:20
この投稿されて
方丈記 知識がふえました。
 普通にしゃべればいいものを
言葉の 余韻がいいです。
このようにそらんじれる
憧れです。
よどみに浮かぶうたかたは
久しく、、、。
 仏教で無常と言うらしいと
聞きましたが味がないですね。
 私は、NHK 日曜名作劇場で
西田さんと竹下さんの名演に
這っています。
 おじゃましました。
Unknown (Toshiが行く)
2024-04-16 19:46:00
飛行機好きのおじいさん ありがとうございます。
古典は実に味わい深いですね。
読み解く難しさはありますが、じわっと感慨が沁み込んできます。

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