MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ビニールハウス』

2024-05-18 00:59:49 | goo映画レビュー

原題:『비닐하우스』 英題:『Greenhouse』
監督:イ・ソルヒ
脚本:イ・ソルヒ
撮影:ヒョン・バウ
出演:キム・ソヒョン/ヤン・ジェソン/シン・ヨンスク/ウォン・ミウォン/アン・ソヨ
2022年/韓国

「中途半端さ」の絶妙な描き方について

 『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督 2019年)は地上でも地下でもない「半地下」が描かれたように、本作は住居でもホームレスでもない「ビニールハウス」が描かれているのだが、少年院に入所している息子と一緒に暮らすことを夢見て、なんとか綱渡りのように誤魔化しながらその夢を目前にしているにも関わらず、最後になって自ら全てを台無しにしてしまう主人公のムンジョンを演じたキム・ソヒョンの演技が圧巻としかいいようがない。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1187162


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『月』

2024-05-17 22:30:58 | goo映画レビュー

原題:『月』
監督:石井裕也
脚本:石井裕也
撮影:鎌苅洋一
出演:宮沢りえ/磯村勇斗/長井恵理/大塚ヒロタ/笠原秀幸/板谷由夏/モロ師岡/鶴見辰吾/原日出子/高畑淳子/二階堂ふみ/オダギリジョー
2023年/日本 

ただ生きて行くことの困難について

 時代設定は2016年5月頃で、主人公の堂島洋子は有名な小説家だったのだが、スランプに陥り重度障害者施設で職員として働き始める。洋子の夫の昌平は趣味として映像を制作しているのであるが、プロとして認められることがないままマンションの管理人として働き始める。
 洋子は1974年7月26日生まれなのだが、同じ年月日に生まれた女性を担当することになるものの、彼女は誰ともコミュニケーションを取ることができず、暗い一人部屋に閉じ込められているような状態だった。
 そのように人とコミュニケーションができない人を「粛清」しようと企んでいるのが「さとくん」と呼ばれている職員である。さとくんの彼女は聾唖者なので、障害者を一掃しようと目論んでいるわけではなく、あくまでも意志の疎通が取れない重度障害者がターゲットである。
 昌平の作品がフランスの小さな映画祭で賞を獲ったと洋子と喜んでいるシーンと、さとくんが次々と施設の障害者を殺していくシーンがクロスカッティング(並行モンタージュ)で描かれているのが印象的である。結局、生きている限り誰でも何らかの役割を果たすことが求められており、ただ生きているだけでは認められないのが世間なのだから、さとくんの主張は否定しにくいのである。
 洋子でさえ新しい小説を完成させられたから自己嫌悪から逃れられたのであり、さとくんのようにいつまでも自己嫌悪から逃れられないのであるならば、自分と「似た」ような重度障害者を殺したくなる心理は理解せざるを得ない。さとくんに重度障害者を殺す権利や義務など無いはずなのだが、施設職員という肩書きが彼の言動を正当化させてしまっている嫌いはある。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/otocoto/entertainment/otocoto-otocoto_113759


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『四月になれば彼女は』

2024-05-16 19:41:56 | goo映画レビュー

原題:『四月になれば彼女は』
監督:山田智和
脚本:山田智和/木戸雄一郎/川村元気
撮影:今村圭佑
出演:佐藤健/長澤まさみ/森七菜/仲野大賀/中島歩/河合優実/ともさかりえ/竹野内豊/橋本じゅん/水澤紳吾/高田聖子
2024年/日本

何故病状がはっきりしないのか?

 主人公で精神科医の藤代俊は獣医の坂本弥生と婚約していたのだが、ある日突然藤代の目の前から姿を消してしまう。同じ頃藤代はかつての恋人だった伊予田春から手紙を受け取っていた。写真という共通の趣味を介して10年ほど前に大学生の頃に交際していた際に一緒に訪れようと言っていたボリビアのウユニ塩湖を一人で旅をしていることを知らせてきたのだ。ところが藤代と春は春の父親の伊予田衛に交際を反対されて別れてしまったのである。
 春は旅先で倒れてしまい帰国するのであるが、ホスピスに滞在することになり、何故かそこに動物園を辞めた弥生が働いており、藤代と弥生はそこで再会することになる。
 『青春18×2 君へと続く道』(藤井道人監督 2024年)と同じ感想を持った。つまり春の病状が具体的に描かれないために、藤代と春を別れさせた父親の衛は春が10年前から病気を患っていたから別れさせたのか、あるいはただ単に妻がいない独り身で寂しかったから娘と離れたくなかったのかよく分からないのである。ラブストーリーを盛り上げるために病気を「弄ぶ」ことは趣味が良いとは思えない。
 ボリビア、アイスランド、チェコなどの美しい景色だけでも大画面で観る価値はあった。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/oricon/entertainment/oricon-2323124


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『青春18×2 君へと続く道』

2024-05-15 00:59:21 | goo映画レビュー

原題:『青春18×2 君へと続く道』
監督:藤井道人
脚本:藤井道人
撮影:今村圭祐
出演:シュー・グァンハン/清原果耶/ジョセフ・チャン/道枝駿佑/黒木華/松重豊/黒木瞳
2024年/日本・台湾

続・恋人に本音を明かさないヒロインについて

 藤井道人監督の前作『余命10年』と同じような感想を持った。ヒロインのアミはどうやら病気を患っていて、気分を紛らわせようと旅を始めた最初の場所が台湾だった。直後に財布を無くして「神戸」と日本語の名前がついていたカラオケ店で店長に頼んでアルバイトを始め、そこで主人公のジミーと出会ったのである。
 しばらく働いている内にジミーとアミは愛を深め、良い感じになるのだが、アミは突然帰国してしまう。どうもアミの気持ちがよく分からないのだが、アミは自分の病気が治ると思って、完治したらジミーと再会するつもりだったのか、あるいは不治の病を患っているからこそ何も言わず帰国したまま亡くなってしまったのか? もしも治らないと分かっていたのならば交際している人もいなかったのだから(原作は違うらしい)もう一度ジミーと会うという選択肢があってもよかったと思うのである。もっとも藤井監督がそのような悲恋が好みだというのならば仕方がないのだが。


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『バジーノイズ』

2024-05-14 00:59:18 | goo映画レビュー

原題:『バジーノイズ』
監督:風間太樹
脚本:風間太樹/谷口恒平/沖野浩考
撮影:片村文人
出演:川西拓実/桜田ひより/井之脇海/柳俊太郎/円井わん/奥野瑛太/天野はな/駒井蓮/櫻井海音/馬場園梓/佐津川愛美/テイ龍進
2024年/日本

孤独と過重労働

 映画としての出来は正直評価の難しい作品だと感じるものの、例えば、主人公の海野清澄を「孤独」から救い出そうとヒロインの岸本潮が清澄の部屋のベランダのガラスを壊して侵入してくる場面を経て、やがて売れっ子のミュージシャンとしてレコード会社の社長に「缶詰」にされオーバーワークさせられる清澄を再び潮が救い出すシーンで描かれる現在の日本社会の若者が抱える二つの問題提起には納得させられる。
 しかし岸本潮を演じる桜田ひよりの熱演に残りの3人が追いつけていなためにバランスが悪いと思う。


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『変な家』

2024-05-13 00:59:15 | goo映画レビュー

原題:『変な家』
監督:石川淳一
脚本:丑尾健太郎
撮影:柳田裕男
出演:間宮祥太朗/佐藤二朗/川栄李奈/長田成哉/DJ松永/瀧本美織/根岸季衣/高嶋政伸/斉藤由貴/石坂浩二
2024年/日本

「間取り」以前の問題について

 途中から「変な家」が存在する意味が分からなくなってしまった。子供部屋の間取りのおかしさは子供を実家から避難させるためだったはずなのだが、実際は片淵慶太と綾乃の夫婦は子供を実家に連れて行ってしまっているのだから、何の意味もなさないのである。子供を避難させている理由は、子供の左手を先祖が殺めた女中に捧げなければならないためだったはずなのだが、綾乃の母親の松岡善江が密かにホームレスの左手を切り取って実家に送っていたりするので、子孫の左手である必要なないわけで、ますます意味が分からなくなってしまった。何を見せられていたのか?


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『ペナルティループ』

2024-05-12 00:58:15 | goo映画レビュー

原題:『ペナルティループ』
監督:荒木伸二
脚本:荒木伸二
撮影:渡邉寿岳
出演:若葉竜也/伊勢谷友介/山下リオ/ジン・デヨン/松浦祐也/うらじぬの/澁谷麻美/川村紗也/夙川アトム
2024年/日本

「軸」が定まらないSF作品について

 荒木伸二監督の前作『人数の町』同様に、本作も『マトリックス』(ウォシャウスキー兄弟監督 1999年)ばりの壮大なプロジェクトの割には関わっているスタッフの人数の少なさが気になる。
 主人公の岩森淳が自分の恋人の砂原唯を殺した溝口登の復讐を試みるのだが、岩本が溝口を殺しても何度もループを繰り返すためにループする目的が分からなくなるのだが、岩本が溝口を「赦す」までが目的なのであるならば、ループに意味はあるとは思う。しかし通行人に声をかけられた際のラストの岩森の一言を聞いた時に、本作はシリアスではなくてコメディなのかもしれないと思うものの、それまでの描写がエグイために笑えはしない。
 冒頭で岩森がベッドで眠っているシーンから始まるのだが、カットが変わると岩森の顔の角度が変化している。ラストで岩森が運転する車が停まっているバイクを避けるためにハンドルを左に切るのだが、しばらくして映し出された車は何故か右側の溝に突っ込んでいる。演出に違和感を持った理由である。
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『親のお金は誰のもの 法定相続人』

2024-05-11 00:59:02 | goo映画レビュー

原題:『親のお金は誰のもの 法定相続人』
監督:田中光敏
脚本:小松江里子
撮影:朝倉義人
出演:比嘉愛未/三浦翔平/浅利陽介/小手伸也/山崎静代/松岡依都美/田中要次/石野真子/三浦友和
2023年/日本

「似せる」と「偽」の違いについて

 妻の満代が亡くなったことから大亀仙太郎は言動がおかしくなってしまい、ついには「成年後見制度」を利用することになり財産管理の弁護士で成年後見人である城島龍之介が担うことになるのだが、この城島が曲者で三重県伊勢志摩で真珠の養殖を営んでいる仙太郎が所有している6憶円の真珠を狙っているのだが、仙太郎が絶えず抱えている金平糖が入っている壺を怪しむものの、そこに入っていた真珠は偽物ばかりだった。
 ここはコメディタッチで描こうとしたのであろうが、金平糖が一般の真珠と類似していることは納得するとしても、6憶円もする真珠の大きさとは合っていないのだから、この設定に無理があると思う。龍之介が認知症を「疑似」していた理由も不明で、結局何を描きたかったのかよく分からない作品になってしまっていると思う。
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https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1149053


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『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

2024-05-10 00:58:59 | goo映画レビュー

原題:『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
監督:渡辺一貴
脚本:小林靖子
撮影:山本周平/田島茂
出演:高橋一生/飯豊まりえ/長尾謙杜/安藤政信/美波/池田良/前原滉/中村まこと/増田朋弥/白石加代子/木村文乃
2023年/日本

実写化によるリアリティのハードルの上昇について

 岸辺露伴がオークションで購入したモリス・ルグランの「黒い絵」を彼の家から盗み出した男が正気を失うシーンがあるのだが、よくよく考えればおかしな話で、山村仁左右衛門の「黒い絵」で正気を失くすのならばともかく「贋作」で正気を失うというシーンは理解できなかった。
 その山村仁左右衛門の「黒い絵」にしてみたところで、その本物の絵を見た岸辺露伴が彼の「後悔」ではない甲冑を着た武士(山村仁左右衛門?)に何故襲われなければならないのか意味不明で、武士を押しとどめた奈々瀬に「何もかも、すべて忘れて」と言われたとて簡単に忘れられるはずもなく、原作は良いのに脚本が上手く行っていないのではないだろうか? どうしても漫画であれば気にならない点でも、実写化するとリアリティのハードルは高くなってしまう。
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https://news.goo.ne.jp/article/buzzfeed/entertainment/buzzfeed-7666591


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「Situation Vacant」 The Kinks 和訳

2024-05-09 12:12:59 | 洋楽歌詞和訳

The Kinks - Situation Vacant (Official Audio)

 ザ・キンクスが1967年にリリースしたアルバム『サムシング・エルス

(Something Else By The Kinks)』に収録されている「シチュエイション・

ヴェイカント」を和訳してみる。

「Situation Vacant」 The Kinks 日本語訳

スージーとジョニーは
家賃も払えるほど十分に稼いでいたので幸せだったけれど
ジョニーの母親が野心に満ち溢れていたので
それがジョニーをイライラさせて
彼の母親を満足させてあげようと
ただ平穏を得るためだけに
ジョニーは出かけては毎週求人・求職広告を買った

ジョニーは彼の母親を喜ばせるために
今の地位を諦めたから
彼は人生を捧げた仕事を辞めて
彼は去ろうと背後のドアへ振り向いた

今彼は空虚な状況を見つめている
彼の母親を満足させてあげるためだけの空虚な状況
ただ平穏を得るためだけに
ジョニーは出かけては毎週求人・求職広告を買った

それから彼はアパートを立ち退かなければならなかったし
多少地味な住居を探し出した
可哀そうなスージーとジョニーは
毎週の家賃の補填のためにケチって節約しなければならなかった

彼の母親を満足させてあげようと
ただ平穏を得るためだけに
ジョニーは出かけては毎週求人・求職広告を買った

ジョニーにはお金がなかったし
行く場所もなかった
ジョニーは全く動きが取れない苦境に落ち込み
スージーは離婚して彼女の母親と暮し出した
今彼の母親は満足している


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