北海道新聞 2019年12月1日付社説
「与党の税制論議 企業優遇より格差是正」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/370110?rct=c_editorial
自民、公明両党は2020年度の税制改正に向けた論議を本格化させている。
企業に投資を促すための減税が焦点になる。
第2次安倍政権ではこれまで法人税を減税し、企業活動を後押ししてきた。
減税した分が賃金や投資に回ればよいが、現預金などが「内部留保」として積み上がってきた。
その額は約460兆円に上り、7年連続で過去最高である。
10月には消費税率が引き上げられた。
消費税は所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性という問題を抱える。
それなのに企業、中でも大企業に有利な税制改正を進めるのであれば、不公平感は広がるばかりだ。
大企業優遇を改め、国民の所得格差是正に努めるべきである。
自民党の甘利明税制調査会長は「貯蓄から投資への流れ」を確かなものにすると強調している。
企業向けの減税策として挙がっているのは、大企業によるベンチャー企業への投資や
第5世代(5G)移動通信システムの整備に税制上の優遇措置を設けることだ。
しかし既に企業向けの投資減税はあるため、新たな制度が経済活性化につながるかは不透明と言わざるを得ない。
5G減税も携帯大手優遇に終わるのではないかと効果を疑問視する声が出ている。
企業向けの減税を繰り返しても、これまで同様に企業の内部留保が膨らむだけで、
十分な賃金の引き上げや、国民の暮らしの向上をもたらすとは思えない。
非正規雇用が増えたこともあり国民の所得格差は広がっている。
所得税は所得が多くなるに従い、最大45%まで税率が上がる累進制だが、
株式の配当や売却益にかかる金融所得課税は一律20%だ。
世界的にも最低水準で、富裕層優遇との批判が強い。
安倍政権は消極的だが、所得の再分配を図るために課税強化を検討すべきである。
自民、公明両党の税制調査会は、「未婚のひとり親世帯」の税負担を軽くする方向でおおむね一致した。
具体的な議論を進めてほしい。
配偶者と離婚・死別したひとり親は所得税や住民税が軽減されるのに、未婚者は対象外だった。
自民党内には「未婚の出産を助長する」との消極論が根強かったが、
これでは困っている人の実情を見ているとは言い難い。
これ以上、不公平を放置するわけにはいかない。
「与党の税制論議 企業優遇より格差是正」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/370110?rct=c_editorial
自民、公明両党は2020年度の税制改正に向けた論議を本格化させている。
企業に投資を促すための減税が焦点になる。
第2次安倍政権ではこれまで法人税を減税し、企業活動を後押ししてきた。
減税した分が賃金や投資に回ればよいが、現預金などが「内部留保」として積み上がってきた。
その額は約460兆円に上り、7年連続で過去最高である。
10月には消費税率が引き上げられた。
消費税は所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性という問題を抱える。
それなのに企業、中でも大企業に有利な税制改正を進めるのであれば、不公平感は広がるばかりだ。
大企業優遇を改め、国民の所得格差是正に努めるべきである。
自民党の甘利明税制調査会長は「貯蓄から投資への流れ」を確かなものにすると強調している。
企業向けの減税策として挙がっているのは、大企業によるベンチャー企業への投資や
第5世代(5G)移動通信システムの整備に税制上の優遇措置を設けることだ。
しかし既に企業向けの投資減税はあるため、新たな制度が経済活性化につながるかは不透明と言わざるを得ない。
5G減税も携帯大手優遇に終わるのではないかと効果を疑問視する声が出ている。
企業向けの減税を繰り返しても、これまで同様に企業の内部留保が膨らむだけで、
十分な賃金の引き上げや、国民の暮らしの向上をもたらすとは思えない。
非正規雇用が増えたこともあり国民の所得格差は広がっている。
所得税は所得が多くなるに従い、最大45%まで税率が上がる累進制だが、
株式の配当や売却益にかかる金融所得課税は一律20%だ。
世界的にも最低水準で、富裕層優遇との批判が強い。
安倍政権は消極的だが、所得の再分配を図るために課税強化を検討すべきである。
自民、公明両党の税制調査会は、「未婚のひとり親世帯」の税負担を軽くする方向でおおむね一致した。
具体的な議論を進めてほしい。
配偶者と離婚・死別したひとり親は所得税や住民税が軽減されるのに、未婚者は対象外だった。
自民党内には「未婚の出産を助長する」との消極論が根強かったが、
これでは困っている人の実情を見ているとは言い難い。
これ以上、不公平を放置するわけにはいかない。