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音楽大好き男の徒然なる日記

東京新聞2020年1月29日付記事「AI美空ひばり 死者に語らせる危うさ」

2020-02-12 | 音楽
東京新聞 2020年1月29日付記事
「AI美空ひばり 死者に語らせる危うさ」 written by 中島岳志

昨年末に放送された「NHK紅白歌合戦」で、1989年に死去した美空ひばりの「新曲」が披露された。
これはヤマハの専門スタッフがAI(人工知能)の技術によって美空ひばりの歌声を復活させ、
秋元康が作詞を担当することで実現した。


曲名は「あれから」。
歌の間には
「お久しぶりです。あなたのことをずっと見ていましたよ。頑張りましたね。さあ 私の分まで、まだまだ頑張って」
という語りが挿入されている。

この曲が完成するまでの過程は、2019年9月29日のNHKスペシャル「AIでよみがえる美空ひばり」で紹介された。
放送後、感動したという声とともに、死者を冒とくしているとの批判も湧き上がった。

武田砂鉄は「AI美空ひばりへの違和感」(cakes、2020年1月8日)の中で、
「感動させる目的で死者に新しい言葉を与えてはいけない」と批判する。
「カリスマ的な故人に、誰かにとって好都合な言葉を新たに獲得させ、その言葉によって感情を揺さぶらせ、
『神々しさ』まで感じさせるというのは極めて危うい」

秋元は、NHKスペシャルの中で、曲の間のせりふ部分こそ「いちばん伝えたかった所」と言い、
「ひばりさんから『よく頑張ったわね』と言われたら、日本中がまだ頑張ろうと思える」と述べている。
武田曰(いわ)く「これは『美空の願い』ではなく、『秋元の願い』」である。

故人の言葉を創作し、自己の願いを仮託して語らせることは危険だ。
同様のことが、カリスマ的独裁者やカルト的宗教家を使って行われた場合、その危うさは計り知れない。

生前の美空ひばりと親交が深かった中村メイコは、2019年12月17日のニッポン放送
「垣花正 あなたとハッピー!」に生出演し、「AI美空ひばり」について語っている。
その時の発言が、ニッポン放送のウェブページで紹介されているが
(「“AI美空ひばり”は『嫌だ』 親友の中村メイコ語る」2019年12月23日)、
記事によると、中村はまず「怖い」と言い、美空ひばりが「離れる気がする」と語ったという。

ここで中村は、AI制作者や秋元に敬意を表しながらも、
「一番単純な言い方をすると『嫌だ』。やっぱり本人がここにいて本人が歌ってほしい」と述べている。
そして、「心の中にもう一部屋、あの人が作ってくれたの。死んだら隣のふすまを開けるとあの人がいるって思うんです」
と語っている。

中村にとって、美空ひばりは心のふすまの向こうに隣在している。
故人となった美空ひばりは、いなくなったのではない。
死者として傍らに存在している。
時に言葉にならない会話を交わしながら生活をともにしている。
中村は、常に死者の気配を感じ、死者とともに生きているのだ。

だから、「AI美空ひばり」が何かを語り、何かを歌うことに対して、率直な違和感を表明する。
「嫌だ」という言葉を絞り出す。
「AI美空ひばり」は、美空ひばりを遠ざける。
それは、どこまでも「美空ひばりのようなもの」にすぎない。
紛(まが)い物によって美空ひばりが「離れる気がする」。
中村は、それが「怖い」のだ。

中村にとって、「AI美空ひばり」は死者を生き返らせる行為ではなく、死者を排除する行為なのだろう。
大切な存在が奪われたという感覚を持ったのだろう。

死者はままならない存在だ。
不意に厳しい眼差(まなざ)しを投げかけ、私たちに反省を促す。
時に意図しない形で私たちを包み込み、安堵(あんど)感をもたらす。
死者をコントロールすることはできない。
死者は生者の意思によって所有することのできない存在なのだ。

AIによる死者の再現は、死者を所有しようとする行為にほかならない。
死者の言葉を創作し、都合のいいように利用することは危うい。

死者を利用の対象とするとき、私たちは過去を軽視し、現在を特権化する。
今生きている人間が、死者を操作し、改変できると過信する。
死者への畏れを喪失した時、死者が積み重ねてきた英知までも、やすやすと破壊しようとする。

私も「AI美空ひばり」が怖い。
 (なかじま・たけし=東京工業大教授)
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自分も聴いてみた。

正直、彼女はもし健在だったとしても、
こういう“字余りで慌ただしいメロディーの歌”は歌わないだろう、と自分は思う。




この企画は秋元康氏なのだろうか。
だとしたら、キツイ言葉で申し訳ないけど、彼は「思い上がっている」のではないでしょうか。
美空ひばりは決して「〇〇〇48」や「おニャン子クラブ」と同じ地平ではないのです。

確かに「川の流れのように」は世代を超えて歌い継がれる、良い歌だと思います。
でも、それとこの歌は普遍性が天と地くらいに異なると思います。


彼女の楽曲などすべての版権を管理する加藤和也さんも、もっと冷静に判断していただけたらと思います。

昭和を生きた人間として、あえてひと言述べさせていただきました。
失礼いたしました。

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ちなみに、秋元氏作詞の歌では、中島美嘉嬢の「STARS」の孤高の姿がたまらなく好きだ。
繰り返すが、「響け!ユーフォニアム」の高坂麗奈(Trumpet)を思い出してしまう。
(2019年6月23日付ブログを参照してください)

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