(神代植物公園のアジサイ 5月30日撮影)
初仕事(その1)からの続きです。
もちろん、すべての手順は上司から教えてもらいながら、となりますが、見積入手後がいよいよ本格的な発注先・価格決定の業務となります。
個人の物を購入する場合なら、見積を比べて、安い方に発注する。あるいは、高い方に、他社の方が安いので、それより下がらないか交渉するといったこともすると思います。
会社の業務でも、基本的には同じです。これをネゴ(ネゴシエーション)と呼びます。基本的にはこれまで発注実績のある業者を中心にネゴによる価格決定をします。特に今回の事例のように金額的にも少額の場合は業務効率という点でもネゴ中心の価格決定になります。
しかし、初仕事、つまりは勉強でもあるわけで、この場合は、価格決定の基本的な手順をしっかり教育されました。
見積比較、ネゴもその手順の一つです。次にコストの妥当性の分析という業務があります。ネゴによって安く買えたと思っても、その価格で本当に妥当なのかの分析をするわけです。
価格の妥当性分析の一つは「コストテーブル分析」です。それは、新規の部品と同類の部品の購入価格と比較するという方法です。今回の部品は特にリング上で単純な形状の部品ですから、同じ材料で作られた同類の部品が多くありました。それらの中で、より近い(例えば重さやサイズ)物と比較して、見積価格の妥当性を分析するという方法です。
もう一つは、原価分析手法です。まさに、この部品はいくらで出来るかを評価することです。
原価分析ですから、大きくは材料費と加工費それと管理販売費と利益を、図面をもとに評価するということです。当然どう造られているかを調べないとコスト分析は出来ません。
ということで、メーカーの工場に早速見学に行きました。作業はいたって単純でした。板状の材料に金属で出来たリング状の型を当てて、木槌で打ち抜いていました。これで、一応原価分析は出来そうです。
まず材料費です。一枚の板から何個部品が取れるか、つまり1枚の材料費÷取れる個数=1個当たりの材料費となります。1枚当たりの材料費は市販の価格を調べました。
次に加工費ですが、1個当たりの作業時間×加工費率(いわゆる分単価)で算出できます。作業時間は実際に見ているのでほぼ分かります。加工費率は企業規模などから想定します。
これで材料費と加工費は分かりましたので、これに管理販売費と利益を掛け合わせれば、妥当な価格が分析できます。
さて、以上で、価格の妥当性が評価できましたので、これを武器にして最後の価格交渉に臨みました。
結果としては、交渉は難航しました。勉強の意味で行った「コストテーブル」や「原価分析」の手法ですが、単純な部品で、少額なため、これまでネゴで価格は決まっていたので、交渉相手も戸惑ったようです。なかなか納得してくれませんでした。こちらが新人ということもあったかもしれません。
最後は、上司が同席してくれて、交渉は成立しましたが、どう落とし込んだかは覚えていません。
もっとも、この新人の時の最初の経験は、その後の購買部門での業務の基本として続けられこととなります。
(「初仕事」終わり)