道しるべ うち震わして 春の雪 <殿>
未来見えぬ カオスの夜に 春時雨 <殿>
鳥居棲む 狐ばかされ 稲荷町 <殿>
春暁に 風の便りを ひとり聴く <殿>
チベットの 月の光は 凍りをり <殿>
大寒の 沁みゆく小指 バッハ弾く <殿>
スカートの 膝に生まれし 冬日向 <殿>
花言葉 一輪つたえ 冬薔薇<ふゆそうび> <殿>
あどけなき 千恵子の話 空冴ゆる <殿>
冬深く 少女戯れ 嘘に酔ふ <殿>
石段の ともしび数え 雪の宮 <殿>
鉄紺の 軌条磨きし 横時雨 <殿>
寒暁に 亡き人来たり 饒舌に <殿>
今生に 諍<あらが>い啼きぬ 冬雀 <殿>
冬陽<ふゆび>満ち 少女の頬に 紅をさす <殿>
まどろめば 蒼き車窓に 夕時雨 <殿>
冬鴉 首振り啼きて 朝を呼ぶ <殿>
父と子の 柏手<かしわで>揃う 初詣 <殿>