あらたまに 吾れ風と成り 旅ゆかん <殿>
君の聲 柔らかくなり 冬菫 <殿>
野仏の 微笑み嬉し 冬日向 <殿>
江戸締めや 喰へぬ鯛買ふ 酉の市 <殿>
人ひとり 鬼籍の増えて 松の内 <殿>
初詣 篝<かがり>の火の粉 闇に跳ね <殿>
雪猛り 社<やしろ>軋みし 駒ケ岳 <殿>
明けましておめでとうございます。
歳晩の 犇<ひし>めく聲に 夜の雨 <殿>
人気<ひとけ>なき 稲荷の闇に 狐見ゆ <殿>
厨房の 冬菜茹でて 睫毛濡れ <殿>
教会の 人なき聖夜 紙の星 <殿>
玻璃の星 駅の聖樹に きらめきて <殿>
しぐれ坂 のぼり尽くして 茶房の灯 <殿>
凍て玻璃に 妖精描く 葉紋かな <殿>
マスクして 目<もく>す瞳は 饒舌に <殿>
バニラ香に 欠伸止めたり 石蕗の花 <殿>
凍て風や 首筋かすめ 富士の嶺 <殿>