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合言葉はヒュッゲ

台風に奪われた命

百均ショップで買ったレモンケーキ🍋
二つで100円。懐かしおやつです。カステラをコーティングしたレモンアイシングの風味と食感がたまらない。

台風の季節になると、ある女性の顔が思い浮かぶ。

平成21年10月に襲った大きな台風。雨も風も凄まじく、今まで体験した事のない不気味な音に夜半目が覚め、カーテンを開けるのもためらわれた。

当時アパートの1階に住んでいたが、ベランダは川のように増水し、小さな物入れ倉庫がぷかぷか漂流していた。

幸い部屋の中までの侵水は免れたが、あまりの恐怖に寝付かれず、その後停電となった。

翌日は嘘のような秋晴れとなり、しかし、街は土砂災害、河川氾濫による床下、床上浸水、停電によるライフラインの使用不可で大きな損傷を負った。

勤め先の入り口ドアは風で割れて、カーポートも飛んでいた。

街の大手スーパー、ガソリンスタンド等も浸水被害に見舞われ、休業を余儀なくされた。

自宅が浸水した事で、心が折れて翌日から作業所への通所が途絶えた女性が彼女。

彼女は、浸水を防ぐため必死で母を守り、家を守った。

台風ともに雨風も去り、水は引いた。
しかし、彼女の心の痛みは続き、次第に食事も摂れなくなり、外出を拒み出し何も手につかなくなりやつれた。

彼女は数ヶ月後、自宅のトイレで倒れ息を引き取った。

最後に母の顔を見つめ「お母さん、もういいよ。もう何もしなくていいから。逝かさせて」

弔問に訪れた時見た彼女は、とても安らかな表情で眠っていた。

先日、スキャンされた彼女の紙カルテを見る機会があった。
診察時の彼女は、作業所で私に話していた内容とほとんど同じ事を主治医に伝えていた。

わずか41歳でこの世を去った彼女の憂いを含んだ大きな瞳が忘れられない。


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